鳥取県の三朝温泉では、昭和レトロな雰囲気が漂う温泉街を自転車でゆったりと巡るポタリングが楽しめます。三徳川のせせらぎに沿って広がるこの温泉地は、開湯からおよそ850年の歴史を持ち、世界でも屈指のラドン含有量を誇る泉質で知られています。旅館の建ち並ぶ温泉本通りには、店主のコレクションを無料で公開する「湯の街ギャラリー」が18か所ほど点在し、レンタサイクルで一軒ずつのぞきながら回るだけで半日はあっという間に過ぎてしまいます。この記事では、三朝温泉の歴史や泉質といった基礎知識から、レンタサイクルを使ったポタリングの具体的な楽しみ方、そして温泉街に点在する湯の街ギャラリーの見どころまで、旅の計画に役立つ情報をまとめました。

三朝温泉は開湯850年で世界屈指のラドン含有量を誇る湯治場
鳥取県東伯郡三朝町にある三朝温泉は、三徳川の両岸に旅館やホテル、共同浴場、土産物店が軒を連ねる温泉地です。地名でもある「三朝」の由来には、この湯に浸かれば三度目の朝を迎える頃には病が癒えるという言い伝えがあり、そこから「三朝」という名前がついたとされています。温泉街の規模はそれほど大きくないため、歩いても自転車でも回りやすいコンパクトさが魅力で、三徳川にかかる三朝橋を中心に上流側にも下流側にも見どころが点在し、半日から一日でひと通りの雰囲気を味わえます。
白狼伝説が「三朝」の地名を生んだ
三朝温泉の開湯は、平安時代末期の長寛2年(1164年)にさかのぼると伝えられています。源義朝の家来だった大久保左馬之祐という武士が三徳山への参拝の途中でこの地を訪れた際、山中で年老いた白い狼に出会い、弓で射ようとしたものの、これが仏の化身であることに気づいて命を助けました。するとその夜、左馬之祐の夢に妙見菩薩が現れ、恩返しとして温泉の在り処を教えたといいます。お告げの場所へ向かうと、大きな楠の根元から湯が湧き出していたことから、この地に温泉が開かれたと伝わっています。この白狼伝説は温泉街の随所で紹介されており、地元の酒蔵が造る銘柄「白狼」の名前の由来にもなっています。
1916年に世界最高のラジウム含有量と発表された
三朝温泉最大の特徴は泉質にあります。湯にはラジウムやラドンといった放射性物質が世界でも有数の濃度で含まれており、1916年(大正5年)には世界最高のラジウム含有量を持つ温泉として発表された記録が残っています。泉温34度以上のラドン泉は世界的にも珍しく、三朝温泉はその代表格として古くから湯治場として親しまれてきました。微量の放射線が体に刺激を与え、免疫機能を活性化させるとされる「ホルミシス効果」も、三朝温泉が現代の湯治の地として選ばれる理由のひとつです。入浴だけでなく、飲泉や温泉の蒸気を吸入する吸入療法も古くから行われており、共同浴場や旅館の中にはこの吸入療法を体験できる施設も残っています。
三朝温泉へはJR倉吉駅から路線バスで約20分
三朝温泉へは、まずJR倉吉駅を目指すのが一般的なルートです。倉吉駅のバスターミナル3番乗り場から路線バスに乗車すると、およそ20分ほどで三朝温泉に到着します。バスは日本交通と日ノ丸バスの2社が運行しており、本数も確保されているため鉄道利用者にとってもアクセスしやすい温泉地です。
飛行機を利用する場合は、鳥取空港からリムジンバスでJR倉吉駅まで約45分、そこから路線バスに乗り換えてさらに約20分というルートになります。空港からの直通ではなく倉吉駅での乗り継ぎが必要になる点は、事前に把握しておくと当日慌てずに済みます。三朝温泉・倉吉・はわい温泉・東郷温泉といった鳥取中部のエリアを2日間乗り放題で周遊できる「湯~遊2デーパス」(1,300円)も用意されており、複数の温泉地や観光スポットを合わせて訪れたい旅行者には使い勝手のよい選択肢です。
レンタサイクルは町内3拠点で借りられ電動タイプは半日1,000円
温泉街全体はこぢんまりとまとまっているため徒歩でも十分に楽しめますが、三徳川沿いの風を感じながら三徳山方面や倉吉、東郷湖方面まで足を延ばせるポタリングは、この土地ならではの旅の楽しみ方です。三朝温泉では、観光案内所を兼ねる「ほっとプラ座」のほか、三朝町スポーツセンター、ふるさと健康むらといった複数の拠点でレンタサイクルの貸し出しを行っています。利用できる時間帯はおおむね8時30分から17時30分までで、日帰りでも十分にサイクリングを楽しめる時間設定です。
自転車の種類も豊富で、スポーツタイプの電動アシスト自転車、ママチャリタイプの電動アシスト自転車、20インチの小径タイヤを備えた電動シティサイクル、そして内装3段変速の自転車まで、用途に応じて選べます。料金の目安は次の表のとおりです。
| 自転車の種類 | 半日(4時間まで) | 一日(4時間以上) |
|---|---|---|
| 電動アシスト自転車(スポーツ・ママチャリ・小径タイプ) | 1,000円 | 2,000円 |
| 内装3段変速自転車 | 300円 | 300円 |
公式サイクリングコースは6コースが用意されている
三朝温泉発のサイクリングコースは6コースが公式に用意されており、体力やその日の気分に合わせて、三徳山方面へ向かう歴史散策コースや、倉吉の白壁土蔵群を目指すコース、東郷湖の湖畔をのんびり走るコースなど、レベルに応じた行き先を選べます。電動アシスト付きのスポーツタイプ自転車を使えば、多少のアップダウンがあるコースでも無理なく走破できます。
温泉街そのものをゆっくり流すポタリングであれば、三朝橋を渡って対岸に出たり、河原沿いの小道を進んで露天風呂の周辺を眺めたり、恋谷橋やかじか橋まで足を延ばしたりと、徒歩よりも行動範囲を広げつつ車よりもゆっくりと町の空気を感じられます。三徳川のせせらぎを聞きながらペダルを漕ぐひとときは、日常を忘れさせてくれる時間になるでしょう。
温泉本通りには昭和レトロな湯の街ギャラリーが18か所点在
三朝温泉のもうひとつの魅力が、温泉本通りを中心に広がる「湯の街ギャラリー」です。オレンジ色の看板が目印になっており、旅館や商店の軒先やウィンドウ、空きスペースを利用して、町全体でおよそ18か所もの小さな展示スペースが点在しています。いずれも無料で見学でき、店主のコレクションや思い入れのある品々がそれぞれの個性豊かな形で公開されています。
梶川理容館やカエルの人形の館など個性的な展示が並ぶ
「梶川理容館」は現役の理容店でありながら理容道具の博物館としての顔も持ち、ヴィクトリア朝やアール・ヌーヴォー期の理容椅子、シェービングマグといった世界の珍しい理容用具を展示しています。「カエルの人形の館」ではさまざまなカエルの置物や人形が所狭しと並べられ、文人・河本緑石にゆかりのある喫茶店「カンパネルラの館」では文学者たちの絵画や手紙が展示されています。「彫刻ホール」では高野豆腐を素材に料理人が彫り上げたユニークな彫刻作品が並ぶなど、ひとつひとつのギャラリーが驚くほど個性的です。
このほかにも藤井酒造の酒蔵を活用した展示など、温泉街を歩くだけで思いがけない発見に出会えるのが湯の街ギャラリーの魅力です。狭い通りに昭和レトロなゲームセンターやパチンコ店、飲食店が並ぶ光景は、まるで時間が巻き戻ったような感覚を味わわせてくれます。戦後の温泉町文化がそのままの形で残る、全国的にも珍しい景観といえるでしょう。自転車を押しながら、あるいは要所要所で自転車を停めながら一軒一軒をのぞき込むように巡るのが、この町を味わう歩き方(走り方)です。
河原露天風呂は清掃時間を除き24時間無料で入浴できる
三朝温泉には、宿泊客でなくても気軽に立ち寄れる共同浴場がいくつかあります。まず外せないのが、三徳川の河原に設けられた「河原露天風呂」です。この露天風呂は無料で入浴でき、清掃時間を除いて24時間利用が可能な混浴の野天風呂として知られています。せせらぎを間近に聞きながら湯に浸かる開放感は、他の温泉地ではなかなか味わえない体験です。奇数日の午前中は清掃のため入浴できない時間帯があるため、訪れる際は事前に確認しておくと安心です。
利用にあたっては公式には水着の着用は禁止とされていますが、簡易的な脱衣所と囲いはあるものの通行人からも見える位置に湯船があるため、バスタオルを持参して入浴する人も少なくありません。実際に入浴する際は周囲への気配りを忘れず、落ち着いた行動を心がけましょう。
株湯は三朝温泉発祥の元湯で入浴料は大人400円
温泉街の中心部には、三朝温泉発祥の湯とされる共同浴場「株湯」があります。株湯は三朝温泉の「元湯」とも呼ばれ、営業時間は8時から21時45分まで(最終受付21時15分)、月曜日のみ10時から21時45分となっています。入浴料金は大人400円、子供(3歳以上)250円と、日帰り入浴として気軽に立ち寄れる価格設定です。隣接する足湯や飲泉場は無料で利用でき、湯めぐりの合間にひと息つくのにちょうどよいスポットです。
かじか橋の足湯は2005年完成で桜の時期は花見も楽しめる
三朝橋から少し下流にかかる「かじか橋」の中央には、2005年に完成した足湯「かじかの湯」があります。橋の上から三徳川を見下ろしながら足を浸せる開放感のある足湯です。3月下旬から4月上旬にかけては橋のすぐ下にある桜並木が見頃を迎え、足湯に浸かりながら花見も楽しめる、春先ならではの特等席になります。
三朝橋と旅館大橋は昭和初期の建築技術を今に伝える
温泉街の中心を貫くように三徳川に架かる「三朝橋」も、三朝温泉のシンボルのひとつです。橋長69メートルのRC造7連桁橋で、設計者は武田伍一とされ、木橋の風合いを意識してデザインされた昭和初期のコンクリート橋という珍しい成り立ちを持っています。橋のたもとから見下ろす河原露天風呂とセットで、三朝温泉を象徴する景観として日本遺産の構成文化財にも数えられています。
三朝橋のほとりに佇む「旅館大橋」もレトロ建築として見逃せません。三徳川に沿って本館や離れが軒を連ねるこの老舗旅館は、本館が木造3階建てという大規模な和風建築で、国の登録有形文化財にも指定されています。客室はすべて三徳川沿いに配置され、床の間や天井、欄間の意匠が部屋ごとに異なる数寄屋風の造りとなっており、昭和初期の高い建築技術を伝えています。ポタリングで三朝橋を渡る際には、川面に映る旅館大橋の木造建築と橋そのものの佇まいを眺めてみましょう。
恋谷橋のカエル像は恋愛成就の願いを込めた縁結びスポット
三徳川に架かる橋のひとつ「恋谷橋」も、三朝温泉散策では見逃せないスポットです。ロマンチックな名前が付けられたこの橋には、優しく撫でると恋が叶うと言われるカエルの像が置かれており、恋愛成就を願う絵馬も設置されています。カエルは「無事に帰る」「若返る」といった語呂合わせから縁起物とされることが多く、湯治場である三朝温泉らしい、健康長寿と縁結びの両方の願いが込められたスポットになっています。橋の上から眺める三徳川の流れと、対岸に並ぶ旅館の灯りは、夕暮れ時に自転車で通りかかると特に趣があります。
日本遺産・投入堂は年輪年代測定で平安時代後期の建立と判明
三朝温泉から車や自転車で少し足を延ばした先にあるのが、修験道の聖地として知られる三徳山です。三徳山三佛寺の開山は慶雲3年(706年)にさかのぼるとされ、役行者が3枚の蓮の花びらを散らしたところ、その1枚が伯耆国のこの地に舞い落ちたことが始まりと伝えられています。嘉祥2年(849年)には慈覚大師によって阿弥陀如来・大日如来・釈迦如来の三尊が安置され、修験道の行場として栄えていきました。
境内奥にある奥院「投入堂」は、断崖絶壁の窪みに建てられた懸造の仏堂で、平安時代の密教建築として現存する数少ない遺構のひとつです。役行者が法力によって建物を投げ入れて建立したという伝説が名前の由来になっており、2001年に奈良文化財研究所が行った年輪年代測定によって、投入堂が平安時代後期(1086年から1184年ごろ)に建てられたことが科学的にも裏付けられました。その独特な建築と成り立ちから国宝に指定されているほか、三徳山と三朝温泉は2015年度の第一回認定で「日本遺産」にも選ばれ、六根清浄と六感治癒の地として紹介されています。三徳山自体も昭和9年(1934年)に国の名勝及び史跡に指定されており、開発の手が入らないまま自然が保全されている点も大きな価値のひとつです。
参拝登山は2人以上のグループと専用の靴装備が条件
投入堂への参拝登山は、参拝登山事務所から片道約600メートル、標高差にしておよそ200メートルの行程で、往復の所要時間はおよそ1時間30分から2時間とされています。修験道の行場だけあって鎖場やロープを使う難所もあり、しっかりとした装備と参拝時間の確認が必要です。ポタリングの延長として三徳山の入口まで自転車で向かい、そこから徒歩で参拝するという組み合わせのプランも人気があります。
投入堂への参拝登山にはいくつかの決まりごとがあります。服装についてはスカートやスラックスでの参拝は認められておらず、靴も凹凸のある運動靴やトレッキングシューズが必須で、金具の付いた登山靴やかかとの高い靴、革靴、サンダルなどでは参拝受付そのものができません。適した靴を持っていない場合は、有料のわらじに履き替えることで入山が許可されるケースもあります。持ち物としては両手が自由に使えるナップザックが便利で、鎖場をつかむための軍手もほぼ必須の装備です。投入堂への参拝登山は単独では行えず、必ず2人以上のグループで登る決まりになっており、受付時間も8時から15時までと定められています。雨や雪など悪天候の際には入山そのものが禁止されるため、訪問前には天候と最新の受付情報を確認しておく必要があります。参拝登山の受付時には輪袈裟が貸し出され、参拝者はこれを着用して山に入ります。
三朝温泉はラジウムの発見者キュリー夫人ゆかりの祭りを重ねてきた
三朝温泉のラジウム泉としての価値を語るうえで欠かせないのが、ラジウムの発見者であるマリー・キュリー夫人との縁です。ラジウムは1898年にキュリー夫妻によって発見された放射性元素で、1916年(大正5年)に三朝温泉が世界屈指のラジウム含有量を有する温泉として認定されたことから、その功績への感謝を込めて温泉地全体でキュリー夫人を顕彰する機運が生まれました。
こうした背景から始まったのが「キュリー祭」です。第一回は昭和26年(1951年)に開催され、以降毎年欠かさず続けられており、2024年には第67回目を迎えました。温泉の恵みに感謝するとともに、ラジウムという結びつきを通じて日本とフランスの科学と文化をつなぐ祭りとして地域に根付いています。
さらに三朝町は、南フランスの温泉地であるラマルー・レ・バン町と姉妹都市提携を結んでおり、これはキュリー祭をきっかけに始まった日仏の友好関係が発展した結果です。町内にはキュリー夫人の功績を記念した「キュリー公園」も整備されており、温泉街の散策やポタリングの途中に立ち寄れば、三朝温泉が世界の科学史とも結びついた土地であることを実感できるはずです。パリのラジウム研究所に残るキュリー夫人ゆかりの研究室が博物館として保存されていることと合わせて知っておくと、三朝温泉の湯に浸かる体験がより深みを増すでしょう。
老舗旅館「依山楼岩崎」と「木屋旅館」に明治・大正・昭和の面影が残る
三朝温泉の温泉街には、昭和レトロな町並みと呼応するように、大正時代・明治時代から続く老舗旅館も残されています。大正9年創業の「依山楼岩崎」は、100年以上の歴史を持つ老舗旅館でありながら、趣向を凝らした大小12か所の大浴場や露天風呂、ラジウム蒸気風呂(ミストサウナ)を備えています。野趣あふれる「左の湯」には歩行湯や寝湯を備えた回遊式大庭園露天風呂、国宝「投入堂」をモチーフにした洞窟風呂などがあり、昭和レトロな趣を残す「右の湯」には数寄屋造りの大浴場や湯治場の雰囲気を色濃く残す内湯があるなど、ひとつの旅館の中で異なる時代の空気を味わえる構成になっています。
一方、明治元年創業という三朝温泉でも屈指の歴史を誇るのが「木屋旅館」です。三朝温泉が湯治場としての温泉地から観光客を迎える温泉旅館街へと姿を変えていく過程を体現するような、先駆け的な旅館建築として知られています。磨き抜かれた艶やかな木造の造りには、明治・大正・昭和という三つの時代の空気が幾重にも重なっており、宿泊するだけで非日常的な時間旅行の感覚を味わえる貴重な存在です。ポタリングで温泉街を巡る途中、こうした老舗旅館の外観を眺めながら建築の違いを見比べてみるのも、昭和レトロな三朝温泉ならではの楽しみ方です。
花湯まつりは藤づるの綱を東西で引き合う勇壮な伝統行事
三朝温泉は季節ごとにさまざまな表情を見せる温泉地でもあります。春には、温泉街近くの「やなせ公園」でソメイヨシノが例年4月上旬から下旬にかけて見頃を迎え、桜の名所として親しまれています。桜の時期に合わせて地元の芸能を楽しめるイベントも開催され、餅つきや屋台も並ぶなど、地域ぐるみで春の訪れを祝う雰囲気が漂います。春と秋には、温泉街の3か所で和傘や和紙玉を使った「和紙灯り」が飾られ、夜の温泉街をやわらかな光で彩ります。昭和レトロな町並みに和紙のあたたかな灯りが灯る光景は、日中のポタリングとはまた違う、しっとりとした夜の散策の魅力を引き出してくれます。夏には7月末から8月上旬にかけて三朝温泉の夏を盛り上げるお祭りが開催され、ステージイベントやいわいパレード、打ち上げ花火などで温泉街全体が賑わいます。
なかでも、ゴールデンウィークの時期に開催される「花湯まつり」は、三朝温泉の年間行事の中でも特に勇壮な祭りです。藤づるを編んで作った巨大な綱「陣所」を、温泉本通りで東西二手に分かれて引き合うという伝統行事で、2026年は5月3日から4日にかけて開催されました。この時期に旅程を合わせれば、ポタリングで温泉街を巡りながら、地域に根付いた伝統行事の熱気も肌で感じられます。来年以降に三朝温泉を訪れる場合も、ゴールデンウィーク前後の日程を調べておくと花湯まつりに立ち会える可能性が高くなるでしょう。
三朝ヨーグルトは地元産牛乳を使った日本初の二層式ヨーグルト
温泉街を巡ったあとの楽しみといえば、地元のグルメとお土産です。三朝温泉の新しい名物として人気を集めているのが「三朝ヨーグルト」です。地元産の白バラ牛乳を使用した日本初の二層式ヨーグルトで、地元では午前中のうちに完売してしまうこともあるほどの人気ぶりです。温泉街の売店やカフェで見かけたら味わっておきたい一品です。
観光案内所の隣にあるカフェでは、米麹から作る生甘酒や、自家製の完熟梅で仕込んだシロップを三朝の水で割った梅ジュース、丁寧に淹れたコーヒーなどが楽しめます。藍染めと木のぬくもりが感じられる民芸調の空間が魅力の「茶房木木」も、散策の合間にひと休みするのにぴったりの喫茶店です。
お土産選びでは、三朝温泉に唯一残る歴史ある酒蔵「藤井酒造」の存在も外せません。「白狼」「三朝政宗」「三徳桜」といった銘柄を展開しており、なかでも長期熟成させた「白狼古酒原酒」は国内外の品評会で数々の賞を受賞している一本です。温泉街を歩きながら酒蔵の展示スペースをのぞき、気に入った一本を持ち帰るのも旅の楽しみのひとつになります。このほか、三朝温泉の源泉を使用した化粧水「三朝みすと」や、濃縮温泉水、入浴剤といった温泉由来のコスメ・雑貨も人気の土産物です。自宅に帰ってからも三朝の湯を思い出せるアイテムとして、多くの旅行者に選ばれています。
体験型のお土産を求めるなら、陶芸体験工房で作られる「白狼焼」もおすすめです。開湯伝説に登場する白い狼にちなんで名付けられたこの焼き物は、素朴で土の質感を大切にした作風が特徴で、湯呑みや茶碗、器などを職人の指導のもとで初心者でも制作できます。旅の思い出として自分だけの一品を作り、後日焼き上がりを送ってもらうという楽しみ方も人気です。三朝温泉の近くには大正元年(1912年)創業という歴史ある竹細工の老舗もあり、かつては歴代天皇に竹細工作品を献上した実績を持ちながら、伝統技術を守りつつ現代的なデザインの竹製品も手がけています。温泉水を用いて漉かれる「三朝温泉和紙」も地域の伝統工芸品のひとつで、柔らかさと強度を兼ね備えた独特の風合いが評価されています。温泉街の和紙灯りのイベントで使われる和紙玉や和傘にも、こうした地元の技術が活かされています。
ポタリングは半日から一日で温泉街と三徳山方面を巡れる
実際に三朝温泉でポタリングを楽しむ際の大まかな流れとしては、まず観光案内所「ほっとプラ座」でレンタサイクルを借り、温泉本通りをゆっくり流しながら湯の街ギャラリーを一つずつのぞいていくところから始めるとよいでしょう。株湯で日帰り入浴を楽しんだ後、河原露天風呂の様子を眺めながら三朝橋を渡り、恋谷橋のカエル像に立ち寄って願掛けをし、かじか橋の足湯でひと休みするというコースが、無理なく町の魅力を味わえる定番の流れです。
体力と時間に余裕があれば、そこからさらに三徳山方面へ自転車を走らせ、参拝登山事務所付近まで足を延ばして投入堂を仰ぎ見る、あるいは倉吉の白壁土蔵群や東郷湖方面まで走るコースに挑戦するのもよいでしょう。電動アシスト付きの自転車を選べば、多少の坂道があっても体力の消耗を抑えながら周遊できるため、家族連れやサイクリング初心者でも安心して楽しめます。半日で温泉街の主要スポットを回るコースと、一日かけて三徳山や倉吉まで足を延ばすコース、旅程や体力に合わせて選んでみましょう。
鳥取県三朝温泉は、世界屈指のラドン泉という泉質の魅力に加え、開湯850年の歴史と白狼伝説、昭和レトロな町並みと18か所にも及ぶ個性的な湯の街ギャラリー、そして三徳川沿いの景観と自転車での周遊環境が揃った温泉地です。徒歩では見落としてしまいそうな路地の奥にある小さなギャラリーも、ポタリングでゆっくり移動すれば自然と目に留まり、思いがけない発見につながります。
日帰りでも一泊二日でも、レンタサイクルを活用して三朝温泉の温泉街を巡り、河原露天風呂や株湯で湯に浸かり、湯の街ギャラリーで昭和の空気を感じ、余裕があれば日本遺産・三徳山の投入堂まで足を延ばす。そんな自由度の高い旅程を組めるのが、三朝温泉でのポタリングの醍醐味です。大正・明治期から続く木造の老舗旅館、キュリー夫人ゆかりのラジウム泉、白狼伝説にちなむ焼き物や酒、そして狭い路地に残る昭和レトロな展示スペースの数々。三朝温泉には他の温泉地にはない物語が積み重なっています。自転車のペダルを漕ぐ速さだからこそ気づける小さな看板や、ふと目に留まるギャラリーの窓辺の展示品が、旅の記憶に彩りを添えてくれるはずです。次の旅先として、自転車を相棒に鳥取・三朝温泉の湯の街を走ってみてはどうでしょうか。









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