利島は椿の島|東京諸島をポタリングでのんびり一周する旅ガイド

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利島(としま)とは、東京都に属する伊豆諸島の小さな火山島で、島全体が約20万本のヤブツバキに覆われた「椿の島」です。外周わずか約8キロメートルというサイズ感から、ポタリングでのんびり一周する旅が東京諸島の定番として親しまれています。竹芝客船ターミナルから高速ジェット船で約2時間25分という、東京都内とは思えない近さで秘境感あふれる島時間に飛び込めるのが、利島最大の魅力です。本記事では、椿の島・利島をポタリングで一周する旅の全貌を、アクセス方法、見どころ、ドルフィンスイム、宿泊、モデルプラン、歴史背景まで体系的に解説します。都心の喧騒を離れ、椿の香りと黒潮の風に包まれる東京諸島の宝石、利島の魅力をたっぷりとお伝えします。これから利島を訪れたい方にとって、出発前に知っておきたい情報のすべてが詰まった保存版の記事です。

目次

利島とは──椿の島と呼ばれる東京諸島の小島

利島とは、東京都利島村に属する伊豆諸島の有人島で、面積約4.12平方キロメートル、人口約300人ほどの小さな火山島です。伊豆大島の南方約25キロメートルに浮かぶこの島は、伊豆七島の中でもっとも小さな有人島として知られ、円錐形の地形と椿に覆われた緑の景観が特徴となっています。

島の最高峰は宮塚山で、標高は507.5メートル。外周は約8キロメートルしかなく、徒歩でも自転車でも十分に一周できるサイズ感です。日本国内の椿油生産量の約60パーセントを利島が支えているという事実は、この小さな島が持つ独自の存在感をよく物語っています。

利島が「椿の島」と呼ばれる理由は、島の面積の約80パーセントをヤブツバキの森が占め、その本数が約20万本にも及ぶからです。椿の見頃は1月から3月にかけてで、この時期には島全体がピンクや赤の花に染まる幻想的な光景が広がります。

東京諸島における利島の位置づけ

東京諸島とは、東京都に属する伊豆諸島と小笠原諸島を合わせた島々の総称です。伊豆諸島には大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島などが含まれており、それぞれが独自の文化や自然環境を育んできました。

亜熱帯性気候の影響を受けた豊かな自然と、独自の生活文化を持つこれらの島々は、近年「東京宝島」としても注目されています。都市生活に疲れた人々が癒しを求めて訪れるだけでなく、離島移住を志す若者や独自の文化に惹かれた旅人が訪れる場所としても認知が広がっています。

利島はその中でも、独自の椿文化、野生のイルカが定住する海、人の手があまり入っていない原生的な自然が高く評価されています。「知る人ぞ知る」島から「行きたい島」へと、注目度が高まり続けているのが現在の利島の立ち位置です。

利島へのアクセス方法──船とヘリで向かう東京の離島

利島への主なアクセス手段は船と、補助的にヘリコプターになります。もっとも一般的なのは、東京・竹芝旅客ターミナルから東海汽船の高速ジェット船「セブンアイランド」シリーズに乗船するルートです。

高速ジェット船は全没翼型水中翼船と呼ばれる方式の船で、水中翼で船体を海面から浮かせて航行するため、波の影響を受けにくい特徴があります。最高時速約80キロメートルで快適に進み、竹芝から利島までは大島を経由しておよそ2時間25分という短時間で到着します。

時間に余裕がある方には、大型客船(夜行便)という選択肢もあります。夜に竹芝を出発して翌朝に利島に到着するスタイルで、所要時間は約9時間。船内で星空を楽しめるなど、移動そのものを旅の一部として味わえる利点があります。

もう一つのルートが、調布飛行場から大島までヘリコプターで約30分、大島から利島へさらにヘリコプターで約10分という空路です。緊急時の連絡手段にもなっているこのルートは、天候によって利用可否が変わります。

注意したいのは、利島港が天候に左右されやすい点です。島の周囲が高い断崖絶壁に囲まれており、波が高い日には船が接岸できないことも珍しくありません。出発前に必ず東海汽船の運航情報を確認し、余裕のある旅程を組むことが大切です。

椿の島の象徴──ヤブツバキと椿油

利島を語るうえで欠かせないのが、島の象徴ともいえる椿です。島の面積の約80パーセントをヤブツバキの森が占めており、本数は約20万本にのぼります。江戸時代から椿の植栽が盛んに行われてきた利島では、椿の実から搾った椿油が主要産業として根づき、その生産量は日本国内の椿油生産量の約60パーセントを占めるという驚くべき規模です。

利島産の椿油は、肌や髪への浸透力が高く、酸化しにくいオレイン酸を豊富に含む点で品質の高さが知られています。島の売店では椿油を使ったコスメ製品や食品が販売されており、旅のお土産として人気を集めています。

椿の見頃は1月から3月。この時期に利島を訪れると、島全体がピンクや赤のヤブツバキの花で染まり、まるで花の絨毯の上を歩いているような幻想的な光景が広がります。山の斜面に段々状に整然と並ぶ椿林は、まるで日本庭園のような美しさで、富士山や伊豆大島を背景にした絶景写真が撮れるのも魅力です。

椿が楽しめるのは冬だけではありません。夏には深い緑の葉が生い茂り、島全体が濃い緑のじゅうたんで覆われます。秋には実が熟す様子が見られ、農家の方々が椿の実を収穫する風景も島の風物詩です。どの季節に訪れても、利島の椿は旅人を飽きさせない存在感を放っています。

ポタリングで利島を一周──のんびり自転車旅の醍醐味

ポタリングとは、競技や運動目的ではなく、ゆっくりと景色を楽しみながら走る気軽な自転車旅のことです。外周約8キロメートルの利島は、まさにポタリングに最適なサイズ感の島として、東京諸島の中でも独自の人気を集めています。

利島でポタリングが旅の定番になっているのには、明確な理由があります。島内にはレンタカーもバスもなく、移動手段は基本的に徒歩か自転車のみだからです。だからこそ自転車でのんびり島を一周することが、利島旅の自然な過ごし方になっています。

島一周の道路はおおむね整備されていますが、火山島の地形をそのまま活かしているため坂が多い点には注意が必要です。宮塚山を中心とした円錐形の地形ゆえに、島周囲を走る道路にも高低差があり、特に海食崖に面した区間では急勾配の上り下りがあります。電動アシスト付き自転車があれば安心ですが、通常のレンタサイクルでも脚力に自信があれば走破できます。

島一周にかかる時間は、写真を撮ったり神社に立ち寄ったりしながら回ると、おおよそ3時間から4時間程度です。途中の絶景ポイントや神社では自転車を降りて徒歩で探索するという組み合わせがおすすめです。

ポタリング中にぜひ立ち寄りたいのが、島の高台から望む絶景スポットです。晴れた日には伊豆大島や新島、遠く富士山まで見渡せ、「ここが東京都内か」と目を疑うような景色が広がります。早朝や夕暮れ時の景色は格別で、朝焼けや夕焼けに染まる海と椿林のコントラストは一生の記憶に残る美しさです。

利島の観光スポット──7つの神社と宮塚山

利島には7つの神社が点在しており、島全体が神々に守られているかのような神聖な雰囲気を持っています。古くから島人たちの信仰の拠り所となってきたこれらの神社は、それぞれ独自のご利益や歴史を持ち、島一周ポタリングの立ち寄り先として最適です。

中でも最も重要とされるのが「阿豆佐和気命本宮(あずさわけのみことほんぐう)」です。宮塚山の南麓の西側に位置するこの神社は、1987年(昭和62年)に東京都文化財に指定された歴史ある社で、島の守護神が祀られています。椿林に囲まれた参道は幽玄な雰囲気を漂わせ、訪れる人の心を静めてくれます。

その他にも「下上神社」「大山小山神社」「堂の山神社」など、各地区に根付いた神社が島内に点在しています。これらは、島の人々が古くから海の安全や豊漁を祈願してきた場所であり、島の歴史と文化を感じられる貴重なスポットです。

体力に自信のある方には、宮塚山への登山もおすすめのコースです。標高507.5メートルという高さは決して低くはありませんが、登山道は整備されており、日帰りで往復できます。山頂からは360度のパノラマが広がり、天気が良ければ伊豆半島や伊豆諸島の島々を一望できます。

初夏の利島──幻のさくゆりを求めて

利島をはじめとする伊豆諸島の初夏、特に6月中旬から7月上旬にかけて、幻の花として名高い「さくゆり(作百合)」が島中に咲き誇ります。さくゆりは伊豆諸島の固有種で、世界最大のゆりのひとつとして知られている花です。

草丈は1メートルを超え、大輪の白い花びらに桃色の斑点が入った気品ある姿は、一度見たら忘れられない美しさを持ちます。利島のさくゆりは島内のあちこちに自生しており、椿林の木陰や山道の脇、崖の縁などに群生する様子は壮観です。

椿の花が終わり、緑が深まった初夏の島に突然現れる大輪のさくゆりは、利島のもうひとつの顔を見せてくれます。さくゆりの見頃に合わせて利島を訪れる花好きのリピーターも少なくありません。

利島は気候がおだやかで、年間を通じて何らかの花が咲いている花の島でもあります。春のツバキ、初夏のさくゆり、夏の磯の花々と、訪れる季節によって島の表情が変わるのも、利島の大きな魅力です。

野生のイルカと泳ぐ──利島のドルフィンスイム体験

利島の海には、ミナミハンドウイルカ(南方バンドウイルカ)が約20頭前後生息しており、年間を通じて島の近海に定住しています。この野生のイルカたちと海に入って一緒に泳ぐ体験ができるのが、利島ならではの「ドルフィンスイム」です。

ドルフィンスイムは、シュノーケリングやスキンダイビングでイルカが泳ぐ海の中に入り、近くで観察したり一緒に泳いだりするアクティビティです。水族館のように仕切られた場所でのふれあいではなく、野生のイルカが自然に過ごす海に人間がお邪魔するというスタイルなので、イルカのコンディションや気分によって近寄ってくれたり離れていったりします。それが「野生ならでは」の感動につながります。

ドルフィンスイムには守るべきルールがあります。イルカには触らない、無理な接近や追いかけはしない、自然な行動を妨げない、カメラのフラッシュを使わない、といった基本マナーです。こうしたルールを守ることで、イルカたちが人間を怖がらずに共存できる環境が保たれています。

ドルフィンスイムを体験するには、島内の専門ガイドや体験ツアー会社を通じて申し込む必要があります。ツアーの実施時期はおおむね3月から11月で、冬季はシーズンオフです。参加可否は当日の天候と海況によって判断されるため、必ず1日以上の余裕を持って利島に滞在することが必要です。

参加費用は、ツアー会社によって異なりますが、シュノーケルセットなどのレンタル込みで8,000円から15,000円程度が相場です。初めての方でもガイドが丁寧にサポートしてくれるため、泳ぎに自信がなくてもチャレンジできます。

利島での宿泊と食事──島の日常に溶け込む滞在

人口約300人という小さな島・利島では、宿泊施設の数は決して多くありません。しかし、その分だけ民宿では島の人々との距離が近く、島の生活文化に溶け込んだ体験ができます。漁師が釣り上げた新鮮な魚を使った料理、島産の椿油を使ったシンプルな料理、島の野菜と海の幸を組み合わせた郷土料理など、島ならではの食の体験が民宿の楽しみです。

利島港の周辺には数軒の民宿があり、それぞれが島民による小規模な経営で成り立っています。予約は早めに行うことが基本で、繁忙期(夏休み、椿の見頃の冬、ゴールデンウィークなど)は早期に満室になることが多いです。ドルフィンスイムや釣り体験のサポートをしてくれる宿もあり、アクティビティ重視の旅にはそうした民宿を選ぶのも良いでしょう。

食事については、島内の飲食店の数が限られているため、民宿での朝食・夕食を付けてもらうスタイルが一般的です。昼食は港周辺の食堂や、持参した食料で済ませるケースが多くなります。島内の売店では基本的な食料や飲み物を購入できますが、品揃えは都市部と比べると限られています。旅の準備段階で、ある程度の食料や飲料を持参するのが賢明です。

島の特産品としては、椿油が最も代表的です。利島産の純粋な椿油は品質の高さから美容・食用ともに高い評価を受けており、お土産として非常に人気があります。その他にも、椿油を使ったシャンプーや化粧品、地魚の干物なども島のお土産として喜ばれます。

1泊2日の利島ポタリング旅モデルプラン

利島への旅を計画するときの参考として、1泊2日のスケジュール例を表にまとめます。実際の便の時刻や所要時間は、シーズンや天候によって変動するため、最新情報は東海汽船で確認してください。

時間帯1日目の行程
早朝6時30分頃東京・竹芝客船ターミナル到着、乗船手続き
7時30分高速ジェット船出発
9時55分利島港到着
午前民宿にチェックイン、荷物を預ける
10時30分〜12時レンタサイクルで島北部をポタリング、椿林と神社を巡る
12時〜13時港周辺で昼食
13時〜15時島南部ポタリング、阿豆佐和気命本宮を参拝
15時〜17時ドルフィンスイム体験(要事前予約)
18時民宿に戻り夕食
島の暗闇を利用した星空観察
時間帯2日目の行程
早朝日の出を見に展望スポットへ
午前宮塚山登山または残りのスポットを徒歩・自転車で訪問
12時昼食
14時頃高速ジェット船で竹芝へ出発
16時30分頃竹芝着

この1泊2日のスケジュールで、利島の主要な魅力──ポタリング、イルカ体験、椿林散策、神社参拝──をひととおり体験できます。余裕があれば2泊3日に延ばし、宮塚山登山をゆっくり楽しんだり、ダイビングを追加したりするのもおすすめです。

利島旅の注意点──快適な島時間のために知っておきたいこと

利島旅を快適に楽しむために、知っておきたいポイントを整理しておきましょう。利島は東京都内でありながら離島特有のルールやマナーがあり、事前の理解が旅の満足度を大きく左右します。

天候と船の運航について、利島への船は天候と海況に非常に敏感です。特に冬季は時化(しけ)で欠航になることが多くなります。旅行前日には必ず東海汽船の最新の運航情報を確認し、島内に1泊以上の予備日を設けるのが理想です。

服装と持ち物については、利島の気候は東京よりやや温暖で、夏は30度を超える日も多くなります。山道や椿林を歩く際には、歩きやすいスニーカーや軽登山靴が必要です。ドルフィンスイムに参加する場合は水着やラッシュガードを持参しましょう。日焼け対策も忘れずに準備します。

虫対策も重要です。亜熱帯性の島らしく蚊や虫が多いため、長袖長ズボン、虫よけスプレーは必携となります。

通信環境については、主要なキャリアの携帯電話は島内でもおおむね通じますが、山中や海岸の一部では電波が届かない場所もあります。大事な用件は港近くで済ませておくと安心です。

現金の準備も忘れてはなりません。島内のほとんどの施設は現金払いが基本で、クレジットカードや電子マネーが使えない場合も多いため、十分な現金を持参しましょう。島内にATMはほとんどないため、東京出発前に現金を用意しておくことが鉄則です。

予約については、民宿、ドルフィンスイムツアー、レンタサイクルは旅行出発前に必ず事前予約を入れることが基本です。特にゴールデンウィークや夏休み、椿の開花シーズン(1〜3月)は早期に満員になりやすいので注意が必要です。

「電子しまぽ(しまぽ通貨)」の活用もおすすめです。これは東京諸島内でのみ使えるプレミアム付き電子マネーで、一定額を購入すると割増しの価値分が使えるため、宿泊費や飲食費、アクティビティ代に活用するとお得になります。詳しくは「東京都島しょ振興公社」のウェブサイトで確認できます。

利島の歴史──江戸時代から続く椿との深い縁

利島の歴史は、椿と切っても切り離せない関係にあります。島の古い記録はほとんど残っておらず、たびたびの飢饉や口伝の途絶えによって近世以前の詳しい歴史は不明な部分が多いものの、江戸時代の史料からは当時の利島の特異な立場が浮かび上がります。

江戸幕府は全国に米を年貢として納めることを命じていました。しかし利島は火山島であり面積も小さく、水をはじめとした農業資源に乏しい土地柄でした。稲作などの農業に向いていなかったため、利島の島民は米を年貢として納めることができず、逆に幕府から米の支援を受けていたという記録が残っています。

困難な状況の中で島民が目を向けたのが、集落の周囲に防風林として植えられていた椿でした。椿は強い海風から集落を守るために古くから島に植えられてきた木で、島人にとっては身近な存在だったのです。試行錯誤の末、島民たちは日本固有種のヤブツバキの実から椿油を精製・生産することに成功し、これを米の代わりに年貢として幕府に納めることが認められました。

この江戸時代の知恵と努力が、現代の利島椿産業の礎となっています。代々受け継がれてきた椿の栽培技術と油の精製技術は、現在も島民によって大切に守られており、国内最高水準の椿油として高い評価を得ています。島の面積の約80パーセントを占める椿林は、自然だけが作り出したものではなく、幾百年にもわたる人々の営みと知恵が積み重なって育まれたものです。その事実を知ってから島の椿林を歩くと、また一味違った感慨が生まれるはずです。

利島の海と食──黒潮が育む豊かな恵み

利島の豊かさは椿だけではありません。島の周囲を流れる黒潮の恵みによって、利島の海は魚介類の宝庫でもあります。特に伊勢海老とサザエは利島を代表する名産品で、資源保護の観点から十分に成長したものだけを水揚げするルールが徹底されているため、サイズの大きさと濃厚な旨みは本土のものとは一線を画します。

利島の民宿の夕食テーブルには、こうした島産の新鮮な海の幸が並ぶことが多くなります。伊勢海老の刺身や味噌汁、大ぶりのサザエのつぼ焼き、その日に釣れた魚の煮付けや刺身。都市部の高級料理店で食べるような食材が、民宿の素朴な食卓にさりげなく登場するのが、利島の食の日常です。

ダイビングや釣りを楽しむ旅行者にとっても、利島の海は格別です。黒潮の影響を受けた透明度の高い海の中には、初心者向けの浅瀬のポイントから、上級者向けのダイナミックな地形のポイントまで多様なダイビングスポットが点在しています。

ウミウシやエビ・カニなどのマクロ生物を楽しめる港近くの12メートル前後の浅いポイントから、ブリやサバの大きな群れが見られる沖のポイントまで、利島の海はダイバーを飽きさせません。ウミガメやサメ(アオザメ、トラザメなど)に出会えることもあり、アオリイカの産卵床など独特のシーンも観察できます。

夏の利島は磯遊びでも楽しめます。砂浜こそないものの、岩場や港の周辺で磯遊びや海水浴を楽しめます。透明度の高い海の中をシュノーケリングで泳げば、色とりどりの魚や珊瑚を眼下に見ながら、イルカと同じ海に漂う贅沢な時間を過ごせます。

利島から見える星空──都会では見られない夜の絶景

利島のもうひとつの絶景が、夜の星空です。人口約300人という小さな島には街灯が少なく、光害がほとんどありません。晴れた夜には天の川が肉眼で見えるほどの満天の星空が広がり、天文ファンにとっては聖地ともいえる環境が整っています。

夏の夜、民宿の外に出て空を見上げるだけで、東京では決して見ることのできない星空に包まれる体験ができます。流れ星が頻繁に見え、東京湾の向こうに光る本土の夜景と満天の星が重なる景色は、言葉を失うほどの美しさです。

天体観察が趣味の方は、双眼鏡や小型の天体望遠鏡を持参するとより楽しめます。星座の解説をしてくれる現地ガイドが同行するツアーを企画している民宿もあるため、事前に問い合わせてみるのがおすすめです。

利島への移住とワーケーション──島時間で働く新しい選択

近年、利島への移住やワーケーションを選ぶ人々が少しずつ増えています。島には光ファイバーインターネットが整備されており、リモートワーク環境として十分な通信インフラが整っています。竹芝まで高速船で約2時間25分というアクセスの良さも、週に数日は都内に出社するハイブリッドワーク形式での移住を後押ししています。

利島村では、移住希望者向けの「ふるさとワーキングホリデー」という体験プログラムを実施しています。これは、椿農業や島の産業を体験しながら島での暮らしを試せる制度で、移住前のお試し期間として利用できます。実際に移住した若い世代の人々が、島の椿農業や観光産業を支え、島の活性化に貢献している事例も増えています。

もちろん、利島への移住には課題もあります。買い物や医療などの生活インフラは本土と比べて限られており、台風や冬の時化シーズンには船が欠航して島から出られない日が続くこともあります。それでも、椿の香りに包まれた静かな島での生活に魅力を感じ、島の一員として生きることを選んだ人々が、今日の利島を支えています。

移住まで考えなくても、ワーケーションとして数日間利島に滞在し、午前中は仕事をして午後はポタリングやドルフィンスイムを楽しむというスタイルも、近年注目を集めています。仕事と旅の境界が溶けていく島時間は、日常の思考パターンをリセットし、新鮮なアイデアや活力を生み出すきっかけになると話す経験者は多くいます。

利島と東京諸島の今──持続可能な島旅へ

近年、利島をはじめとする東京諸島への注目度は着実に高まっています。新型コロナウイルス禍によって人々の旅の価値観が変化し、混雑した観光地を避けてゆっくりと自然の中で過ごしたいというニーズが増えたことが背景にあります。「秘島」「隠れ家的な離島」への関心は、SNSやメディアでも頻繁に取り上げられるようになり、利島もその代表格として認知が広がりました。

東京都が進める「東京宝島」プロジェクトや、東京諸島観光連携推進協議会による観光情報の整備・発信も、利島の知名度向上に貢献しています。椿を活かした体験プログラムの拡充や、島での滞在型観光(ワーケーションなど)の推進など、島の魅力をより多くの人に伝える取り組みが続けられています。

一方で、人口約300人という小さなコミュニティを守るためには、観光客の過度な増加が島の自然環境や生活環境に悪影響を与えることへの懸念もあります。利島を長く愛され続ける島にするためには、訪れる観光客一人ひとりが、島のルールとマナーを守り、島の人々の生活を尊重することが不可欠です。ゴミは必ず持ち帰る、静かな住宅地では騒がない、自然の動植物には触れないといった基本的なエコツーリズムの精神を持って島を訪れたいものです。

利島ポタリング旅についてよくある疑問

利島へポタリングの旅を計画するうえで、多くの方が抱く疑問について、まとめてお答えします。

利島の自転車一周はどのくらいの時間がかかるのか、という疑問については、外周約8キロメートルを写真撮影や神社参拝を挟みながら回ると、おおよそ3時間から4時間程度が目安となります。坂道が多いため、純粋な走行時間以上に余裕を持った時間配分が必要です。

利島でレンタカーを借りられるかという質問もよく寄せられますが、利島島内にはレンタカーもバスもなく、移動手段は基本的に徒歩か自転車のみです。だからこそポタリングが島旅の定番になっています。

ドルフィンスイムは初心者でも参加できるのかという点については、ガイドが丁寧にサポートしてくれるため、泳ぎに自信がなくてもチャレンジできます。ただし当日の天候と海況によって参加可否が判断されるので、1日以上の余裕を持った滞在が安心です。

利島での支払い方法については、島内のほとんどの施設は現金払いが基本で、クレジットカードや電子マネーが使えない場面も多くあります。島内にATMはほとんどないため、東京出発前に十分な現金を用意しておくのが鉄則です。

椿の見頃はいつかという疑問には、1月から3月にかけてが見頃で、この時期に島全体がピンクや赤の花で染まるとお答えできます。一方で初夏(6月中旬〜7月上旬)にはさくゆりが咲き、夏は深い緑とドルフィンスイム、秋は椿の実の収穫風景と、季節ごとに異なる魅力が利島にはあります。

椿の香り漂う島で、のんびり一周のポタリング旅へ

利島は、東京から約2時間半でたどり着ける椿の島でありながら、観光インフラが充実しているとは言えない島です。食事処は少なく、お土産屋さんもわずかで、ハイシーズン以外では他の観光客と出会う機会も限られます。しかしだからこそ、利島には「本物の島旅」の醍醐味が残っています。

地元の方々の素朴なもてなし、手つかずの自然、静寂の中に聞こえる波の音と椿の葉が風に揺れる音。そのすべてが、都市生活に疲れた心と体を深いところから癒してくれます。外周8キロメートルの小さな島を自転車でゆっくりと一周しながら、椿の森の奥深くに分け入り、海食崖から雄大な海を眺め、島の神社に手を合わせる。その体験はきっと忘れられない記憶として、旅好きの心に残るはずです。

東京諸島の中でも特別な存在感を放つ利島へ、ぜひポタリングを旅のメインテーマに据えて訪れてみてください。椿の香りに包まれた島時間が、新しい旅の物語を運んできてくれるはずです。

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