摩周湖と屈斜路湖をポタリングで巡る、北海道の避暑旅

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北海道の道東に位置する摩周湖と屈斜路湖の周辺は、夏でも平均気温が20度前後にとどまる涼しさが持ち味で、この気候を生かして自転車でのんびり巡るポタリングが避暑の過ごし方として広がっています。舞台となるのは弟子屈町(てしかがちょう)で、湖畔の温泉や田園風景を眺めながら走るコースが初心者から上級者まで揃っています。本州が猛暑に見舞われる時期でも、木陰に入れば汗ばむ場面は少なく、朝晩はむしろ上着が欲しくなるほどです。この記事では、摩周湖・屈斜路湖エリアへのアクセス方法、レンタサイクルの拠点、おすすめのポタリングルート、立ち寄りたいグルメや温泉までをまとめて紹介します。自転車という乗り物だからこそ気づける景色の変化や、車移動では素通りしてしまう小さな畑道の発見も、このエリアを走る楽しみのひとつです。

目次

摂氏20度前後の涼しさが道東を避暑地にする

弟子屈町を含む道東の釧路周辺は、夏でも30度を超える真夏日がほとんどなく、湿度も本州より低いため、木陰に入れば汗ばむことは少ない地域です。朝晩は肌寒く感じることもあり、この気温差こそが暑さから逃れたい旅行者を引き寄せる最大の理由になっています。

摩周湖は「摩周ブルー」と呼ばれる高い透明度を誇るカルデラ湖で、周囲約20キロメートル、最大水深212メートルという深さを持っています。長年濃霧に包まれることが多いことから「霧の摩周湖」の異名でも知られ、その神秘的な姿を一目見ようと国内外から観光客が訪れます。一方の屈斜路湖は日本最大のカルデラ湖で、周囲約57キロメートルという規模を誇ります。湖畔には温泉が点在し、カヌー愛好者からも支持を集めています。この二つの湖を中心に広がる阿寒摩周国立公園には、火山地形と豊かな温泉文化が凝縮されています。

弟子屈町は農業と観光を主産業とする町で、まちの至るところに温泉資源が根付いています。この地の温泉宿は長年、湯治場として旅人や地元住民に親しまれてきた歴史があり、今なお豊富な湯量を誇る温泉が避暑に訪れる旅行者の体を癒しています。雄大な自然と涼しい気候、そして良質な温泉が揃う弟子屈町は、日本国内でも珍しい避暑地のひとつといえるでしょう。

こうした気候と地形を活かして注目を集めているのが「ポタリング」です。ポタリングとは、スポーツとしての本格的なサイクリングとは異なり、景色を楽しみながらのんびりと自転車で巡る旅のスタイルを指します。坂道を攻略するタイムを競うのではなく、涼しい風を感じながら牧草地や湖畔をゆっくり走り、気になるカフェや展望台があれば自由に立ち寄る過ごし方です。避暑地の空気感を全身で味わうのに向いたアクティビティといえます。

摩周湖と屈斜路湖は、いずれも阿寒摩周国立公園というひとつの国立公園エリア内にあります。公園内には阿寒湖という個性豊かなカルデラ湖もあり、三つの湖はそれぞれ異なる魅力を持ちながら道東の自然を形づくっています。摩周湖が「見る湖」として静けさを湛えているのに対し、屈斜路湖は「触れる湖」としてカヌーや湖水浴、砂湯での足湯などアクティブに楽しめる懐の深さがあります。この対照的な二つの湖を自分の脚とペダルで結びながら移動できるところに、ポタリングという旅のスタイルならではの醍醐味があります。

女満別空港から摩周湖まで車で約1時間10分

摩周湖・屈斜路湖エリアへの玄関口は、女満別空港(めまんべつくうこう)と釧路空港の二つです。いずれも公共交通機関の便数が限られているため、レンタカーでの移動が基本になります。

女満別空港からは、国道243号線・道道52号線を経由しておよそ1時間から1時間30分ほどで摩周湖第一展望台や屈斜路湖の砂湯周辺に到着します。距離はおよそ65キロメートル前後で、弟子屈町の中心部までは車でおよそ1時間10分が目安です。

釧路空港からは道道53号線を利用して、摩周湖・屈斜路湖まではおよそ2時間ほどかかります。女満別空港経由よりやや時間を要しますが、釧路湿原など道東の他の観光地と組み合わせて周遊する旅行者には釧路空港発着が便利です。

町なかの移動については、2024年から弟子屈町内でレンタサイクルの提供が本格的にスタートしました。摩周駅、川湯温泉駅、川湯ビジターセンター、そして摩周湖カムイテラスの4つの拠点でレンタサイクルを借りることができ、鉄道やバスで弟子屈入りした後、現地で自転車を調達してポタリングを楽しむスタイルも定着しつつあります。

これら4つの拠点は、いずれもポタリングの起点や中継地として位置づけられています。JR釧網本線の摩周駅を起点にすれば市街地から気軽にスタートでき、川湯温泉駅や川湯ビジターセンターを拠点にすれば硫黄山や屈斜路湖方面へのアクセスが良好です。摩周湖カムイテラスを起点にすれば、最初から摩周湖の景色を横目に走り出せます。借りる場所と返す場所の組み合わせによって旅程の自由度が変わってくるため、宿泊地や交通手段に合わせて計画しておくと、限られた滞在時間を無駄なく使えます。

初心者向けは10キロ、中級者向けは16キロのコース設定

弟子屈エリアのポタリングコースの魅力は、そば畑やじゃがいも畑といった季節ごとに表情を変える田園風景と、硫黄山の噴煙、そして摩周湖・屈斜路湖という二つの異なる個性を持つ湖を、一つのエリアでまとめて楽しめる点にあります。舗装された走りやすい道が多く、初心者でも安心して走行できるコースが充実しています。

代表的な初心者向けコースは、距離約10キロメートル、所要時間1時間から1時間半程度で、舗装された平坦な道が中心です。体力に自信がない人や家族連れでも気軽に挑戦できます。畑作地帯を抜けながら硫黄山の景観を望むルートで、写真映えするスポットも多く点在しています。

もう一段レベルアップしたい人には、距離約16キロメートル、所要時間1時間半から2時間程度のコースがあります。道中にアップダウンが含まれるため難易度はやや中程度で、体力を温存したい場合や日差しの強い日には電動アシスト付きのE-BIKEを選ぶ人が多いようです。屈斜路湖や藻琴山(もことやま)を望みながら走り、途中でカフェに立ち寄ってお茶を楽しんだり、アイヌ民族資料館を見学したりと、自転車を移動手段ではなく旅そのものを楽しむ道具として使うスタイルが根付いています。

E-BIKEを使ったガイド付きツアーも複数の事業者が展開しており、専門ガイドとともに屈斜路湖、摩周湖、硫黄山、美幌峠といった景勝地を巡るプランが人気を集めています。1組ごとの少人数制プライベートツアーを用意している事業者もあり、初心者から自転車好きの上級者まで自分のペースに合わせて申し込めます。

弟子屈町を拠点にサイクリングとアウトドア体験を提供する事業者には、電動アシストマウンテンバイクの専門ガイドツアーを手がける会社や、プライベートE-BIKEツアーを展開する会社などがあり、レンタサイクルとガイドツアーの両方を扱っている点が特徴です。旅慣れていない人や初めて道東を訪れる人でも、ガイドが同行することでルート選びに迷うことなく、見どころを効率よく回れます。ガイドは地元の気象や地形に詳しいため、その日の天候や霧の出やすさに応じてコースを調整してくれることも多く、自力で計画を立てるより絶景ポイントを押さえやすいという利点があります。自分のペースで走りたい人には、レンタサイクルを借りて自由に走る個人プランも根強い人気です。地図アプリと合わせて自分だけのルートを組み立てる楽しみも、ポタリングの醍醐味のひとつといえます。

美幌峠から砂湯、硫黄山を抜けて川湯温泉へ

道東エリアを代表するポタリングルートのひとつが、美幌峠を起点に屈斜路湖畔を巡り、硫黄山を経て川湯温泉に至るコースです。

美幌峠は屈斜路カルデラ全体を見渡せる展望スポットで、眼下に広がるカルデラ湖の姿はスケール感があります。ここから緩やかに下りながら屈斜路湖畔へと向かうと、湖に足を浸せる人気スポット「砂湯」に到着します。砂湯という名前の通り、湖畔の砂浜を少し掘るとほんのり温かい温泉が湧き出しており、実際に足湯代わりに楽しむ観光客の姿も見られます。夏場は湖水浴やカヌー体験を楽しむ人々で賑わい、避暑地ならではの開放的なひとときを味わえます。

砂湯からさらに進むと、白い噴煙を上げる硫黄山(アトサヌプリ)にたどり着きます。火山ガスの独特な匂いと荒涼とした景観は、湖畔ののどかな風景とは対照的で、道東の大地が今なお活動していることを実感させてくれます。このあたりまで来ると、道中の休憩ポイントとして薬湯で知られる川湯温泉が旅の終着点として選ばれることが多いようです。強酸性の泉質で知られる川湯温泉は、サイクリングで火照った体を落ち着かせるのにちょうどいい湯どころです。

摩周湖ヒルクライムで摩周ブルーの絶景を目指す

もう一つの人気ルートは摩周湖ヒルクライムと呼ばれるコースで、摩周湖第一展望台や第三展望台を目指して坂道を上っていきます。上級者向けのやや本格的なサイクリングコースですが、坂を上りきった先に広がる摩周ブルーの景色は、体力を費やしてでも見る価値があります。展望台からは、湖の中央に浮かぶ小島「カムイシュ島」も望むことができ、記念撮影スポットとしても定番です。

標高を稼ぎながら走る道中では、振り返るたびに背後に広がる緑の丘陵地帯や遠くの山並みが少しずつ視界に入ってきます。坂道そのものはそれなりに脚にこたえますが、こまめに休憩を挟みながら自分のペースで上っていけば、決して走りきれない距離ではありません。一歩ずつ標高を上げていく過程そのものが、山頂で待つ景色への期待感を高めてくれます。

摩周湖第一展望台と第三展望台、静けさを取るなら第三

摩周湖第一展望台は、駐車場からのアクセスも良く、観光バスも多く訪れる最もポピュラーな展望スポットです。晴れた日にはコバルトブルーの湖面がくっきりと見え、霧が出ている日には白い霧に包まれた摩周湖を眺めることができます。天候によって全く違う顔を見せてくれるのが、この湖の面白いところです。

摩周湖第三展望台は、第一展望台に比べて観光客が少なく、静かに景色を楽しみたい人に向いています。ポタリングの休憩ポイントとして立ち寄る人も多く、ゆったりとした時間を過ごせます。観光バスの立ち寄りが少ない分、駐車場も比較的空いていることが多く、静寂の中で摩周ブルーの湖面と向き合いたい人にはこちらの展望台のほうが合っているかもしれません。展望台周辺には売店なども控えめで、景色そのものを主役にした時間を過ごせるのが特徴です。

屈斜路湖の砂湯と和琴半島で森と湖を一度に楽しむ

屈斜路湖は、湖畔に近づける場所が多く点在しているのが特徴で、水辺に直接触れられる砂湯をはじめ、湖を一望できる展望スポットも各所に整備されています。夏場は湖面を渡る風が心地よく、避暑にふさわしいロケーションが広がっています。

屈斜路湖の南岸に突き出た和琴半島も見逃せないスポットです。半島全体が原生林に覆われており、湖畔沿いには自然探勝路が整備されているため、自転車を降りて少し歩くだけで静かな森林浴を楽しめます。半島の先端からは屈斜路湖を広く見渡すことができ、対岸に連なる山並みとのコントラストが印象的です。ポタリングの道中でわずかに寄り道するだけで、湖と森、山という異なる自然の表情を一度に味わえるのが、このエリアを走る大きな醍醐味です。

摩周そばと摩周ポークの豚丼で走った分を補給する

北海道旅行の楽しみのひとつはご当地グルメです。弟子屈エリアで外せないのが「摩周そば」で、地元産のそば粉を使い、30年以上にわたってそばを打ち続ける老舗の店をはじめ、こだわりの手打ちそばを提供する店が点在しています。摩周産そば粉を使ったガレットなど、そばを使ったアレンジメニューを提供する店もあり、そば好きには見逃せないエリアです。

もうひとつの名物が「摩周ポーク」を使った豚丼です。全国駅弁大会で2位に輝いた実績を持つ「摩周の豚丼」は、駅弁としてはもちろん、店内でできたてを味わうこともできます。タレの効いた豚肉とご飯の相性は良く、サイクリングで消費したエネルギーを補給するのにちょうどいい一品です。

さらに贅沢したい人には「摩周和牛」を使ったメニューもあります。1日数食限定というメニューを提供する店もあり、早めの来店が推奨されています。

カフェ文化も充実しており、行者ニンニクを使った料理やピザ、パスタを提供するカフェレストランなど、地元食材を活かした店が揃っています。ポタリングの道中、涼しい店内でひんやりとしたスイーツや飲み物を楽しみながら一休みするのも、避暑地ならではの過ごし方です。

川湯温泉とコタン温泉、走った後に選びたい2湯

サイクリングで体を動かした後は、温泉で疲れを落ち着けたい人も多いはずです。川湯温泉は強酸性泉として知られ、その泉質の特徴から「薬湯」とも呼ばれてきた歴史ある温泉地です。硫黄山からほど近い立地で、火山地形とセットで楽しむのに向いた立ち寄り湯が揃っています。

屈斜路湖畔の砂湯や周辺の温泉施設では、湖を眺めながら開放的な気分で湯につかれるロケーションも多くあります。走った後の火照った体に、じんわりと染み渡る温泉の心地よさは、避暑地ポタリングならではの醍醐味です。

屈斜路湖畔には泉質の異なる温泉が点在しているのも見逃せないポイントです。川湯温泉、仁伏温泉、池の湯、そしてコタン温泉など、それぞれ個性豊かな湯が湖畔のあちこちに湧いています。なかでもコタン温泉は屈斜路湖畔に面した混浴の露天風呂で、24時間利用可能かつ無料という懐の深さも魅力です。冬場は湖に飛来する白鳥を眺めながら湯につかれることで知られていますが、夏場も変わらず、湖を望む開放的なロケーションで疲れを落ち着けることができます。

カムイシュ島の伝説と摩周湖の霧が出やすい風向き

摩周湖のほぼ中央に浮かぶ小さな島は「カムイシュ島」と呼ばれています。カムイシュとはアイヌ語で「カムイ(神、あるいは神のように崇高な霊的存在)」と「シュ(老婆)」を組み合わせた言葉です。伝説によれば、宗谷のコタン同士がイヨマンテの夜に争い、敗れたコタンの老婆が孫とともに逃げる途中、孫とはぐれてしまいます。老婆は孫を探し続けながら摩周湖のほとりにたどり着き、摩周岳(カムイヌプリ)に一夜の休息を願いますが、悲しみと疲労のあまりそこから動けなくなり、来る日も来る日も孫を待ち続けるうちに、島そのものになってしまったといいます。今も摩周湖に人が近づくと、老婆はうれし涙を流し、その涙が雨になり霧になり、時には吹雪になると伝えられているそうです。

「霧の摩周湖」という歌のイメージから、摩周湖は一年中霧に包まれていると思われがちですが、実際に霧が発生しやすいのは夏場に限られます。霧の発生には風向きが関わっており、南から湿った風が吹き込む日は霧が出やすく、逆に北からの風が吹く日には視界良好な澄み渡った湖面を望みやすいといわれています。ポタリングで展望台を訪れる際は、午前中の早い時間帯や北寄りの風が吹く日を狙うと、コバルトブルーの湖面に出会える確率が高くなるでしょう。

2022年7月には、摩周湖第一展望台に新たなビュースポット「摩周湖カムイテラス」がオープンしました。ここは前述の通りレンタサイクルの貸し出し拠点のひとつにもなっており、ポタリングの出発地点や休憩ポイントとして利用しやすい場所です。売店やカフェも併設されているため、坂を上りきった達成感とともに、地元の味を楽しみながらひと息つくのに向いたスポットです。

RECAMP砂湯と和琴湖畔キャンプフィールドでカヌー体験も

屈斜路湖畔には、避暑をより深く楽しむためのアクティビティスポットも充実しています。砂湯に隣接する「RECAMP砂湯(砂湯野営場)」は、湖畔の砂地と草地にテントを張れるキャンプ場で、夏場は水遊びやカヌーを楽しむ利用者で連日賑わいます。砂湯レストハウスでは白鳥をかたどったボートの貸し出しも行っており、家族連れでも気軽に湖上散策を楽しめます。

湖の南側、和琴半島に位置する「和琴湖畔キャンプフィールド」も人気の高いスポットです。波打ち際のすぐ近くにテントを設営できるロケーションが魅力で、夏には多くのリピーターや地元客がカヌーや釣りに興じています。ポタリングの途中にこうしたキャンプ場へ立ち寄り、湖面を渡る風を感じながら小休止するのも、この土地ならではの過ごし方です。

「グランフォンド摩周」は120キロ、90キロ、60キロの3コース

もっと本格的にサイクリングを楽しみたいという人には、毎年6月頃に弟子屈町で開催されるサイクリングイベント「グランフォンド摩周」も選択肢に入ります。ロングコース120キロメートル、ミドルコース90キロメートル、ショートコース60キロメートルの3コースが用意されており、摩周湖や屈斜路湖を巡りながら弟子屈町内を縦横に走り抜けます。

イベントは通常2日間で構成され、初日は身体慣らしのサイクリングツアーとして、ヒルクライムを含む80キロコースと、アップダウンの少ない60キロコースが用意されます。夜には参加者同士が交流できる立食形式の夕食会も開催され、旅の思い出づくりにもひと役買っています。2日目の本戦では、各エイドステーションで摩周そばやカレーライス、天然酵母パン、なめらかプリン、いもだんご、温泉ゆで卵、豚汁、地場産アイスクリームといったご当地グルメが振る舞われ、走りながら弟子屈の食文化を味わえる仕掛けになっています。参加賞として温泉の入浴券が付くこともあり、走り終えた体を地元温泉で癒せるのも嬉しいポイントです。普段のんびりポタリングを楽しんでいる人が、次のステップとして腕試しに挑戦する舞台としても人気を集めています。

ロングコースの120キロメートルともなれば、摩周湖周辺のヒルクライム区間や屈斜路湖畔の起伏を含む、道東の地形を存分に味わえる一日になります。一方でショートコースの60キロメートルはアップダウンが比較的少なく設定されているため、日頃あまり自転車に乗り慣れていない人でも、エイドステーションでの休憩を挟みながら完走を目指しやすいでしょう。普段のポタリングでは走らないような長い直線道路や、地元の人しか知らない裏道を走れるのも大会形式ならではの体験で、参加者同士で励まし合いながらゴールを目指す一体感も魅力のひとつです。

川湯温泉街と硫黄山、自転車を降りて歩く価値がある理由

ポタリングの拠点としても人気の高い川湯温泉は、古くから湯治場として親しまれてきた歴史ある温泉街です。すぐそばにそびえる硫黄山を源泉としており、豊富な湯量を誇るとともに、温泉街全体にほんのりと硫黄の香りが漂っています。強酸性の泉質は古くから「薬湯」として地元の人々にも親しまれてきました。温泉街には源泉掛け流しの足湯も設けられており、自転車を降りて散策する道すがら、気軽に足だけ温泉につかってひと休みできるのも嬉しいポイントです。

硫黄山はアイヌ語で「裸の山」を意味する「アトサヌプリ」とも呼ばれ、今なお活発に噴煙を吹き上げる活火山です。噴気孔のすぐ近くまで遊歩道が整備されており、間近まで歩いて行くことができます。山肌のあちこちには硫黄が結晶化した鮮やかな黄色の岩肌が広がり、火山ガス特有の匂いとともに、道東の大地が今も活動を続けていることを肌で感じられる場所です。

川湯温泉街に隣接する川湯ビジターセンターでは、阿寒摩周国立公園に生息する動植物や、摩周湖・屈斜路湖周辺の自然について詳しく学ぶことができます。ポタリングの前後に立ち寄れば、これから走るコースの背景を知ったうえで景色を眺められるため、旅の満足度が一段と高まるはずです。宿泊については、川湯温泉駅周辺に源泉掛け流しの浴槽や天然温泉の大浴場を備えたホテルや旅館が複数集まっており、ポタリングの拠点として一泊しながらエリア全体を巡るプランを組みやすくなっています。

ヒグマ注意、道東ポタリングの安全対策

弟子屈エリアを通る主要道路は直線的で路面状況もよく管理されており、交通量も少ないため、サイクリングには走りやすい環境が整っています。ただし山岳地帯特有の急勾配区間も点在するため、スピードの出しすぎには注意が必要です。下り坂ではブレーキ操作に余裕を持ち、慌てずに走ることを心がけたいところです。

道路にはキツネやシカといった野生動物が不意に飛び出してくることがあるため、視界の開けた直線区間でも油断は禁物です。このエリアはヒグマの生息地でもあり、川湯ビジターセンターでは「熊は、います」という現実的な注意喚起が発信されています。近年は目撃情報が増加傾向にあるとも報告されており、単独での早朝・薄暮時の走行は避け、鈴やベルを携行するなど基本的な対策を怠らないようにしたいところです。裏摩周展望台方面へ向かう分岐点なども見通しの悪い箇所があるため、初めて訪れるコースでは地図アプリや現地の案内表示をこまめに確認しながら走るのが安心です。

7月から9月上旬が狙い目、朝晩の冷え込みに備える服装

摩周湖・屈斜路湖エリアでポタリングを楽しむなら、気温が安定し日照時間も長い夏場、特に7月から9月上旬にかけてがおすすめの時期です。ただし、朝晩は本州の感覚より冷え込むことがあるため、半袖に加えて羽織れる薄手の上着を一枚持っておくと安心です。標高が高いエリアや霧が出やすい摩周湖周辺では、日中でも肌寒く感じることがあります。

天候が変わりやすい土地柄でもあるため、レインウェアや折りたたみ傘があると心強いでしょう。日差しが強い日は紫外線対策も忘れずに行いたいところです。E-BIKEを利用する場合はバッテリー残量にも注意しながら、無理のない範囲でコースを選ぶことが、快適なポタリングを楽しむコツになります。

服装は、朝の出発時には長袖の上着を羽織り、日中気温が上がってきたら脱いで調整するレイヤードスタイルが基本です。特に摩周湖第一展望台など標高が高い場所や、風が吹き抜ける湖畔沿いの道は体感温度が下がりやすいため、半袖一枚で走り続けるのは避けたほうがよいでしょう。日焼け止めに加えて、虫除けスプレーを携行しておくと、休憩中に草むらへ立ち寄る際にも安心です。飲み物はこまめに補給できるよう、ボトルを携行するか、道中のカフェや道の駅で適宜補給するプランを立てておきたいところです。北海道の夏は湿度が低く汗をかいてもすぐ乾くため脱水症状に気づきにくいことがあるので、涼しいからと油断せず、意識的に水分をとることも忘れないようにしましょう。

涼しさと絶景を両取りできる道東の避暑ポタリング

摩周湖と屈斜路湖という個性の異なる二つの湖、噴煙を上げる硫黄山、そして雄大なカルデラを一望できる美幌峠。これらを結ぶポタリングルートは、暑さを避けながら北海道らしい自然を全身で感じられる避暑旅の形といえます。初心者向けの平坦なコースから、E-BIKEを活用した本格的なルートまで幅が広く、体力や旅のスタイルに合わせて選べるのも魅力です。走った後には摩周そばや豚丼で腹を満たし、川湯温泉や砂湯で疲れを落ち着ける。こうした一日の流れそのものが、道東ならではの避暑体験を作り上げています。

本州の暑さから離れ、涼しい風の中で自転車のペダルを漕ぎ、湖の青さに目を奪われ、噴煙を上げる山肌に息をのみ、温泉とご当地グルメで一日を締めくくる。摩周湖・屈斜路湖エリアのポタリングは、涼しさだけでなく、道東の自然と土地の文化を味わい尽くせる旅の形です。空港からのアクセスにやや時間がかかる分、都会の喧騒から切り離された静けさと、手つかずの自然が色濃く残っています。レンタサイクルやガイド付きツアーも充実してきた今、自転車という乗り物だからこそ気づける小さな発見を求めて、この道東の避暑地へ足を運んでみてはどうでしょうか。

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