新潟県村上市の城下町ポタリング、黒塀通りと安善小路を自転車で巡る

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新潟県村上市の城下町をめぐるポタリングでは、黒塀通りと呼ばれる安善小路が一番の見どころになります。町屋造りの家並みに沿って黒く塗られた板塀が続くこの小路は、徒歩よりも自転車で流すほうが距離感がちょうどよく、路地の奥まで目が届きます。村上駅前の観光案内所でレンタサイクルを借りれば、旧町人町から村上城跡、藤基神社まで無理なく一周できる規模感です。京都や金沢のような大規模観光地とは違い、村上は町屋の軒先に塩引き鮭が吊るされ、地元の人が黒塀の間を自転車で行き交う、暮らしの延長線上にある町だといえます。だからこそ、車で通り過ぎるより自転車でゆっくり流すポタリングが似合います。黒塀通りや安善小路を中心に、村上の城下町を巡るポタリングの見どころとモデルコース、季節のイベントを紹介します。

目次

村上は千年続く鮭の町として城下町の面影を残す

新潟県の最北端に位置する村上市は、日本海と朝日連峰に挟まれた自然の中に、江戸時代からの城下町の風情をそのまま残す町です。かつては村上藩の城下町として栄え、堀直竒、榊原氏、内藤氏と藩主が変わりながら町割りが整えられました。中心部には小町から大町、上町へと続く旧町人町があり、約500メートルにわたって町屋造りの建物が軒を連ねています。町屋造りとは、間口が狭く奥行きが深いいわゆる「うなぎの寝床」型の建築で、職住一体の商家として発展してきた様式です。格子窓や下見板張りの外観には、当時の商人たちの生活の知恵が詰まっています。

村上のもう一つの顔が鮭の町であることです。平安時代にはすでに京の朝廷へ鮭の加工品を献上していた記録が残っており、村上は千年以上にわたって鮭とともに歩んできました。晩秋から冬にかけて町屋の軒先に塩引き鮭が吊るされる光景は、この町ならではの風物詩です。酒どころとしても知られ、〆張鶴を醸す宮尾酒造や大洋盛を醸す大洋酒造といった老舗の蔵元が、今も町内で酒造りを続けています。鮭と酒と人情、この三つが村上を語るときのキャッチフレーズになっています。

レンタサイクルは1回500円、村上駅前観光案内所で借りられる

村上の旧城下町エリアは徒歩でも回れる規模ですが、村上城跡のある臥牛山や瀬波温泉方面まで足を延ばすとなると、徒歩だけでは時間がかかります。ここで役に立つのが自転車です。車では見落としがちな路地の奥の黒塀や、ふと目に入った町屋の意匠に立ち止まりやすく、徒歩よりも行動範囲を大きく広げられます。のんびり自転車で散策するポタリングというスタイルは、村上の町歩きによく合います。

村上駅前観光案内所では、例年3月1日から11月30日まで、9時から16時の受付でレンタサイクルを貸し出しています。料金は1台500円(税込)で、時間内であれば返却まで何時間でも利用できます。予約は受け付けていないため、休日や天気の良い日はできるだけ早い時間に借りに行くのがおすすめです。案内所は村上駅の改札を出て左手にあり、村上市内だけでなく瀬波温泉についての相談にも応じてくれます。

新潟駅から村上へは、特急いなほで約46分というアクセスの良さも魅力です。普通列車(JR白新線・羽越本線)なら1時間10分程度かかりますが、運賃は970円から1200円程度に抑えられます。特急いなほの運賃は2200円から3300円程度が目安です。

手段所要時間運賃の目安
特急いなほ約46分2200円~3300円程度
普通列車(白新線・羽越本線)約1時間10分970円~1200円程度

日帰りでも楽しめる距離感でありながら、東京から新幹線と特急を乗り継いでも数時間で着くため、首都圏からの小旅行先としても選ばれています。村上駅からは徒歩でも旧城下町エリアまで行けますが、レンタサイクルを使えば瀬波温泉方面や三面川沿いまで無理なくカバーできます。

黒塀通りと呼ばれる安善小路は460メートル、住民の手で今の景観が生まれた

村上の城下町ポタリングでまず訪れたいのが、黒塀通りと呼ばれる安善小路です。安善小路という名前は、1655年(明暦元年)に開かれた浄土真宗の寺院、安善寺に由来しており、元禄期の絵図にはすでにその名が記されています。江戸時代には榊原氏の治世のもと、旧町人町と寺町を結ぶ小路として機能していました。俳人の松尾芭蕉も、奥の細道の道中でこの界隈を歩いたと伝えられています。

今の黒塀の景観は、比較的新しい取り組みから生まれました。2002年に始まった黒塀千枚プロジェクトという市民運動により板塀を黒く塗る活動が広がり、2008年からは緑の千枚運動として植栽整備も進みました。古くからの町割りの上に、住民が自らの手で景観を磨き上げてきたのが、今目にする黒塀通りの姿です。通りの長さはおよそ460メートルで、歴史ある住宅や寺院、飲食店が軒を連ねています。近くには国指定重要文化財の浄念寺、おやこ小坂と呼ばれる緩やかな坂道もあり、これらを結んで歩くだけでも小一時間は楽しめます。

毎年10月には、黒塀通りを主な舞台に村上宵の竹灯篭まつりが開かれます。およそ2万本の竹灯籠が灯され、音楽イベントも行われる秋の村上を代表する催しです。日中の凛とした黒塀と、夜の灯りに浮かぶ表情、その両方を見ておくと、村上の奥行きがより伝わってきます。

千年鮭きっかわは1626年創業の米問屋が鮭料理の店へと姿を変えた

安善小路から旧町人町のメインストリートへ進むと、鮭の加工品を扱う店や地酒の酒販店、和菓子屋など、町屋造りの店舗が次々と現れます。中でも代表格が千年鮭きっかわです。この店は1626年(寛永3年)に米問屋として創業し、江戸時代末期からは造り酒屋も営んでいました。戦後の昭和30年代、村上から失われつつあった鮭料理の伝統を絶やしてはならないという思いから、鮭料理を製品化して販売する店へと方向を変えたそうです。

現在の店舗は築130年ともいわれる典型的な村上の町屋で、国の登録有形文化財に指定されています。店内に入ると、天井の梁からずらりと塩引き鮭が吊り下げられた光景に圧倒されます。この建物はかつて旅籠でもあり、松尾芭蕉とその弟子の曾良がおくのほそ道の道中で二晩泊まった宿としても知られています。塩引き鮭の製法には「止め腹」と呼ばれる、腹の一部をつないだまま加工する独特の切り方があり、干す際も頭を下にして吊るすという、他地域にはあまり見られない様式が受け継がれています。平安時代から続く鮭の歴史と、住民の手で守られてきた技術が今も息づいている点は、村上の町歩きで印象に残る場面のひとつです。

村上城跡のある臥牛山は山頂まで20分、若林家住宅は武家屋敷を今に伝える

城下町エリアを一通り自転車で流したら、少し脚を延ばして村上城跡のある臥牛山を目指したいところです。臥牛山は標高135メートルの独立峰で、村上城が最初に築かれた時期ははっきりしないものの、戦国時代の16世紀初頭にはすでに存在していたと考えられています。当時この地を治めていた本庄氏の拠点となり、1568年には上杉謙信による攻撃を受けるなど、幾多の戦の舞台にもなりました。江戸時代に入ると、村上氏、堀氏、松平氏など歴代の藩主が城の改修を重ね、北越後の中心的な拠点として城下町を整えていきました。

今は天守などの建物は残っていませんが、石垣が良好な状態で保存されており、国指定史跡になっています。登山道は整備されていて、山頂までは20分ほどで登れます。自転車を麓に停めて徒歩で登れば、山頂から村上の町並みと日本海、天気が良ければ佐渡島まで見渡せる眺めが待っています。

臥牛山のふもと、城跡に隣接して残っているのが若林家住宅です。国の重要文化財に指定されている武家屋敷で、江戸時代の中級武士の暮らしぶりを今に伝えています。町人町の町屋建築とはまた違う、武家屋敷ならではの質実な佇まいを間近で見られる場所です。

藤基神社は村上藩主内藤家を祀る神社

城跡から城下町へ戻る道すがら、立ち寄っておきたいのが藤基神社です。この神社は村上藩の藩祖である内藤信成を祀っており、内藤家は徳川家康の異母弟にあたる家系とされています。歴代の藩主も合わせて祀られており、境内一帯が国の史跡に指定されています。夏には夏越大祓などの神事も行われており、地域の信仰の中心として今も大切にされている様子がうかがえます。

宮尾酒造の〆張鶴と大洋酒造の大洋盛、村上は酒どころでもある

村上は鮭と酒と人情という言葉が示す通り、日本酒の町としても知られています。城下町ポタリングの合間に、酒蔵の見学や試飲を組み込むのもおすすめです。

蔵元銘柄創業特徴
宮尾酒造〆張鶴1819年(文政2年)朝日連峰の伏流水と地元産の酒米「五百万石」を高精白して仕込む
大洋酒造大洋盛1945年(下越銘醸として創業)「和水蔵」で仕込みに使われた土蔵造りの貯蔵庫を見学できる

宮尾酒造は淡麗でありながら味わい深い酒質を目指しており、敷地内の井戸水には三面川の伏流水が使われています。きめ細かな甘みを持つ軟水が、この土地ならではの酒造りを支えてきました。大洋酒造は1945年に下越銘醸株式会社として発足し、当初は「越の魂」という酒名でしたが、5年後に大洋酒造株式会社となり、酒名も大洋盛に改めました。自転車での酒蔵めぐりでは、試飲後の運転に注意が必要ですが、購入だけなら城下町散策の合間に無理なく組み込めます。

春は人形さま巡り、秋は屏風まつりと竹灯篭まつりが見どころ

村上の城下町は、季節ごとに違う表情を見せてくれます。春には城下町村上町屋の人形さま巡りが開かれます。旧町人町の町屋や店舗で、代々受け継がれてきた雛人形や武者人形、土人形などを無料で公開する催しで、普段は見られない町屋の内部にまで入れる機会です。近年の開催期間は3月上旬から4月上旬で、時間は9時から17時が目安ですが、参加店舗によって多少前後します。桜のシーズンと重なりやすく、瀬波温泉での宿泊と組み合わせた春の小旅行としても選ばれています。

秋には城下町村上町屋の屏風まつりが9月から10月にかけて開かれます。各家に代々伝わる屏風や調度品が町屋の店先に展示され、店主がその由来や歴史を説明してくれる、生きた歴史学習の場になっています。参加店舗はおよそ80軒にのぼり、人形さま巡りと並ぶ村上の町屋文化を象徴する行事です。

さらに10月には、黒塀通りを舞台にした村上宵の竹灯篭まつりが開かれます。加えて、村上大祭という祭礼も年間行事の中で特に重要な位置を占めています。絢爛豪華な屋台おしゃぎりが町内を巡行する様子は迫力があり、城下町の歴史と結びついた祭礼文化の厚みを感じさせてくれます。こうした行事の時期に合わせて訪問日を選べば、町並み散策以上の体験になります。

瀬波温泉と村上牛で城下町散策の疲れをほぐす

城下町エリアのポタリングに余裕があれば、村上駅から日本海側に向かって瀬波温泉まで足を延ばすのもおすすめです。瀬波温泉は明治時代に石油の試掘中に温泉が湧き出たことをきっかけに開かれたとされる温泉地で、日本海に面したロケーションから夕陽の名所としても知られています。村上駅からは複数のホテルが送迎シャトルバスを運行しているほか、自転車でも無理なく着ける距離感です。城下町散策で歩き疲れた体を、日本海を望む温泉でほぐすという組み合わせは、村上を訪れる旅行者の定番プランのひとつになっています。

グルメの面では、村上牛も見逃せません。潮風にさらされた気候と朝日連峰からの豊かな水源に恵まれた環境で育てられるブランド牛で、きめ細やかな霜降りと上品な旨みが特徴とされています。城下町の飲食店の中には村上牛を使ったメニューを提供する店もあり、鮭料理、地酒、村上牛と、この土地ならではの食を一日で楽しめます。

モデルコースは村上駅を起点に半日から一日で一周できる

ここまで紹介したスポットを踏まえ、村上駅を起点にしたポタリングのモデルコースを一例として示します。

まず村上駅前観光案内所でレンタサイクルを借り、旧町人町エリアへ向かいます。最初に小町から大町にかけての町屋通りをゆっくりと流し、千年鮭きっかわなどの老舗店舗をのぞきながら鮭文化に触れます。次に安善小路へ入り、黒塀通りの静かな佇まいを堪能します。時間があれば浄念寺やおやこ小坂にも立ち寄りたいところです。

その後、藤基神社に参拝し、村上藩の歴史に思いを馳せてから、臥牛山のふもとへ移動します。自転車を停めて村上城跡まで20分ほど登り、山頂からの眺望を楽しみます。下山後は若林家住宅で武家屋敷の造りを見学し、余力があれば宮尾酒造や大洋酒造に立ち寄って地酒を購入します。最後は村上駅方面へ戻りつつ、村上牛や鮭料理を提供する飲食店で休憩を取り、レンタサイクルを返却して旅を締めくくる、というのが半日から一日で楽しめる基本の流れです。

宿泊を伴う旅であれば、夕方以降は瀬波温泉へ移動し、日本海に沈む夕陽と温泉を楽しむのもよいでしょう。10月であれば宵の竹灯篭まつりのタイミングに合わせて滞在時間を調整し、夜の黒塀通りを再訪するプランも魅力的です。

三面川の種川の制はカナダより140年早い世界初の鮭増殖の仕組み

村上が鮭の町と呼ばれる理由を語るうえで欠かせないのが、城下町のすぐそばを流れる三面川と、そこで実現した種川の制という仕組みです。江戸時代中期、村上藩の下級武士だった青砥武平治(1713年~1788年)は、鮭が生まれた川に戻ってくる母川回帰という習性に着目した人物として知られています。武平治は、鮭が産卵しやすい環境を人為的に川の中に作り出せば、そこで生まれた稚魚が海へ下り、数年後には成長して同じ川へ戻ってくるはずだと考えました。

この発想をもとに構想されたのが、三面川の本流から分流を設け、そこに鮭を導いて産卵させ、産卵が終わるまではその区域を禁猟とする種川の制です。着工は1755年頃とされ、完成までに31年もの歳月を要し、1794年(寛政6年)に制度として完成したと伝えられています。鮭の人工ふ化事業が世界で初めて行われたとされるカナダなどでの取り組みより、およそ140年も先んじていたことになります。種川の制は大きな成功を収め、以後の村上藩の財政を支える資源として鮭の恵みは長く続きました。町屋の軒先に塩引き鮭が吊るされる文化的な景観の背景には、こうした知恵と地道な取り組みの積み重ねがあります。

三面川沿いには、鮭文化を体系的に紹介するイヨボヤ会館という日本で最初の鮭の博物館があります。館内では三面川の生態系や種川の制の歴史、鮭の一生を学ぶことができ、時期によっては実際に川を遡上する鮭の姿を観察できることもあります。城下町エリアからは少し距離がありますが、自転車であれば無理なく往復できる範囲です。三面川の鮭漁を担ってきた三面川鮭産漁業協同組合も、この地域の鮭文化を今に伝える存在として活動を続けています。

村上木彫堆朱は江戸時代中期に武士のたしなみとして始まった

村上の城下町を語るうえで、鮭や酒と並んで欠かせないのが村上木彫堆朱という伝統工芸です。堆朱そのものの起源は古く、中国の唐の時代にまでさかのぼり、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて日本へ伝わったとされています。村上における堆朱の歴史は江戸時代中期、武士のたしなみとして始まったと伝えられており、その後歴代の藩主による奨励もあって、次第に町人たちの間にも広まりました。

木地に幾重にも漆を塗り重ね、乾かしては彫り、また塗るという工程を経て、重厚な質感と艶を持つ器物や調度品が生み出されます。この技術は1955年に新潟県の文化財に指定され、1976年には国指定の伝統的工芸品としても認められました。城下町のメインストリート沿いには村上木彫堆朱会館があり、職人の手仕事を間近で見学できるほか、絵付けなどを体験できるプログラムを用意している施設もあります。武家の心得として始まった工芸が町人文化と融合しながら受け継がれてきた経緯は、武家と町人が共存しながら育んできた城下町という村上の性格をよく表しています。

岩船大祭と村上茶、周辺エリアもポタリングの楽しみを広げる

村上の祭礼文化は城下町だけにとどまりません。村上駅から日本海側へ向かった港町の岩船地区では、毎年10月18日と19日に岩船大祭が開かれます。石が海を渡ってこの地に流れ着いたという伝説に由来する石船神社の例大祭で、舟形屋台とも呼ばれています。絢爛豪華な御しゅん屋台を先頭に、神輿とともに9台のおしゃぎりが木遣り歌や祭囃子を響かせながら町を練り歩きます。漆塗りと金箔で飾られた屋台の姿は見応えがあり、海上安全や大漁、商売繁盛、五穀豊穣を祈願する秋祭りとして地域の人々に大切にされています。

グルメの面でも、瀬波や村上、岩船エリアは奥行きが深い場所です。前述の村上牛や鮭料理に加え、この地域は村上茶の産地としても知られています。村上茶は日本における茶栽培の北限に位置することで有名で、寒暖差のある気候が茶葉に独特の香りと味わいをもたらすとされています。城下町の店舗の中には村上茶を扱う老舗もあり、鮭や日本酒だけでなくお茶を目当てに立ち寄る楽しみ方もできます。港町エリアには新鮮な海の幸を提供する飲食店も多く、城下町の町屋グルメとはひと味違う海沿いの食文化を味わえます。

健脚なら笹川流れまで足を延ばすサイクリングも選べる

体力と時間に余裕があり、より本格的なサイクリングを楽しみたい場合は、村上市北部の日本海沿いに広がる笹川流れまで足を延ばす選択肢もあります。笹川流れは国の名勝・天然記念物に指定され、日本百景にも選ばれている景勝地で、およそ11キロメートルにわたる海岸線には荒波の浸食によって生まれた奇岩や岩礁、洞窟など変化に富んだ景観が続きます。国道345号を北上するルートは伊豆半島を思わせる眺めが広がるとの評もあり、経験のあるサイクリストからは日本海パークラインと呼ばれる海岸線コースとして親しまれています。夏季には現地でレンタサイクルを借りて笹川流れを気軽に周遊することもできます。

ただし、城下町エリアから笹川流れまでは片道数十キロにおよぶ本格的な行程になるため、健脚向けのプラスアルファとして捉えておきたいところです。城下町ポタリングをじっくり楽しんだうえで、もう一泊して翌日に笹川流れサイクリングへ挑戦するという組み立て方をすれば、村上という町の歴史と自然の両方を無理なく味わえます。

むらかみ町屋再生プロジェクトは10年でおよそ30軒の町屋をよみがえらせた

黒塀通りの黒塀千枚プロジェクトと並んで、村上の町並みを語るうえで欠かせないのがむらかみ町屋再生プロジェクトです。平成16年(2004年)に始まったこの取り組みは、行政主導の大規模な観光開発ではなく、住民自身が主体となって古い町屋を残し再生していこうという地域運動として広がりました。空き家になりかけていた町屋や、老朽化して取り壊しの危機にあった建物を、住民や商店主たちが知恵を出し合いながら修復し、店舗や住居として再び活用しています。プロジェクト開始から10年間でおよそ30軒もの町屋が再生されたと伝えられています。

黒塀通りの景観づくりと合わせて考えると、村上の城下町の魅力は観光地として整備された町並みではなく、暮らしている人たちが誇りを持って守り続けている町並みであることがよくわかります。ポタリングで町屋の軒先を眺めるとき、その一軒一軒に住民の努力の歴史が刻まれていることを知っていると、何気ない路地の風景も違って見えてきます。

まち歩きマップを使えばテーマ別にルートを組み立てられる

村上の町なかを効率よく巡るには、村上商工会議所などが配布している越後村上・まち歩きマップを活用するのもひとつの方法です。このマップには、城下町巡りコース、職人の手仕事に触れる手仕事巡りコース、塩引き鮭の加工場が並ぶ塩引き街道巡りコースなど、テーマ別のモデルルートが紹介されています。自分の興味に合わせてコースを選び、そこに黒塀通りや村上城跡、酒蔵めぐりといった要素を自由に組み合わせれば、滞在時間に応じたオリジナルのポタリングルートを組み立てられます。村上駅前観光案内所や市内の観光案内所では、こうした地図や最新のイベント情報を入手できるので、レンタサイクルを借りるタイミングで一緒に立ち寄っておくとルート計画がスムーズになります。

村上の城下町ポタリングは半日あれば主要スポットを一周できる

村上の城下町は、派手な観光施設に頼らずとも、町そのものが持つ歴史の厚みと住民の手による景観づくりによって、訪れる人を惹きつけてきた町です。黒塀通りと安善小路の静かな小路、千年の歴史を持つ鮭文化、武家屋敷と寺社が残す城下町の記憶、そして老舗蔵元が醸す地酒。これらすべてを、徒歩よりも自由に、車よりもゆっくりと味わえるのが自転車によるポタリングというスタイルです。

新潟駅から特急でおよそ46分というアクセスの良さもあって、村上は日帰りでも一泊二日でも楽しめる懐の深い旅先になっています。レンタサイクルを借りて、黒塀の続く安善小路をゆっくりと自転車で流しながら、鮭と酒と人情の町の空気を感じてみてください。季節のイベントに合わせて訪問時期を選べば、何度訪れても新しい発見のある町として記憶に残ります。

計画のポイントを整理すると、まずレンタサイクルは予約ができないため、休日や観光シーズンには早めの時間に村上駅前観光案内所へ向かうことです。次に、黒塀通りと安善小路、千年鮭きっかわ、村上城跡と若林家住宅、藤基神社、宮尾酒造や大洋酒造といった主要スポットは、いずれも旧城下町エリアの中に収まっているため、半日あれば無理なく一周できます。そして、人形さま巡りや屏風まつり、宵の竹灯篭まつり、村上大祭、岩船大祭といった季節の行事は、それぞれ町の違う表情を見せてくれるため、旅の日程を組む際にはあらかじめ開催時期を調べておくと満足度が変わってきます。

村上木彫堆朱の艶やかな漆器、村上茶の香り、村上牛の旨み、そして三面川の種川の制が育んできた鮭文化。これらが半径数キロメートルの城下町エリアに集まっている密度の高さは、全国的に見てもなかなかありません。車で通り過ぎるのではなく、自転車のペダルを踏みながら風を感じ、路地の奥までじっくり目を向けるポタリングというスタイルが、村上という町の魅力を引き出してくれます。次の旅行先を検討しているなら、一度この北越後の城下町へ自転車を走らせてみてください。

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