桑名市の九華公園と六華苑を結ぶポタリングコースは、桑名駅を起点にした平坦な周遊ルートです。三重県桑名市は木曽三川の河口に広がる水郷の町で、獲得標高がわずか28メートルというコースもあるほど起伏が少なく、自転車に乗り慣れていない人でも安心して走れる地形が続きます。桑名駅前でレンタサイクルを借りれば、桜の名所として知られる九華公園と、大正期の洋館建築が残る六華苑を、半日ほどで巡ることができます。
江戸時代の桑名は、東海道42番目の宿場町として栄え、東海道唯一の海路である七里の渡しの発着地として多くの旅人で賑わいました。その面影は今も七里の渡し跡や寺町通り商店街に残っていて、堤防沿いの道を自転車で走ると、当時の町割りをそのまま感じ取れます。名古屋駅から近鉄特急でおよそ20分という近さも、日帰りポタリングを組み立てやすい理由のひとつです。この記事では、九華公園と六華苑を軸にした桑名ポタリングのモデルルートと、それぞれのスポットの見どころ、レンタサイクルの利用方法、周辺グルメまでをまとめました。

桑名ポタリングは獲得標高28メートルの平坦なコースが基本
桑名市内を巡るサイクリングコースは、桑名駅を起点・終点とする約5キロメートルの周回が定番です。獲得標高はわずか28メートルほどしかなく、坂道らしい坂道がほとんど出てきません。木曽三川の下流域に広がる低地の町という土地の成り立ちが、このなだらかな地形を生んでいます。ロードバイク経験者だけでなく、普段はあまり自転車に乗らない人や、子ども連れの家族でも走りやすいコースだといえるでしょう。
コース上には、東海道の宿場町として栄えた歴史を伝える寺町通り商店街や、大正時代の建築美を今に伝える六華苑など、随所に見どころが配置されています。堤防沿いの道では木曽三川の広い流れを眺めながら走れるので、川風を受けつつのんびり進むポタリングらしい時間を味わえます。
桑名駅前のレンタサイクルは1回500円ほどで借りられる
自転車を持ち込まなくても、桑名駅前で手軽にレンタサイクルを利用できます。JR・近鉄桑名駅前にある複合施設「桑栄メイト」の1階には桑名市物産観光案内所があり、ここで自転車の貸し出しを行っています。用意されているのは普通自転車と電動アシスト付き自転車(eバイク)の2種類で、坂道の少ない桑名では普通自転車でも十分快適に走れますが、より長い距離を楽に走りたいなら電動アシスト車を選ぶとよいでしょう。
受付時間や料金は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受付時間 | 8時30分から17時まで |
| 返却時間 | 16時30分まで |
| 定休日 | 年末年始 |
| 料金(シティサイクル) | 1回500円程度 |
| 料金(eバイク) | 1回500円程度 |
| 問い合わせ | 桑名市物産観光案内所(0594-21-5416) |
駅から徒歩すぐの立地なので、電車で桑名に着いてそのままポタリングを始められる手軽さも魅力です。
モデルルートは七里の渡し跡から寺町通り、九華公園、六華苑へと進む
桑名駅を出発してまず目指すのは、東海道の史跡である七里の渡し跡です。七里の渡しは、東海道五十三次で宮宿(現在の愛知県名古屋市熱田区)から桑名宿までを結んだ海路で、熱田・宮の渡しから海上七里、距離にしておよそ27.5キロメートルを船で渡って桑名の渡しに着いたことからこの名がついたとされています。江戸時代、桑名宿は東海道42番目の宿場町として多くの旅人で賑わい、七里の渡し跡には現在も伊勢国一の鳥居が立ち、伊勢神宮への玄関口としての歴史を伝えています。堤防沿いからは揖斐川の流れと対岸の景色を一望でき、写真を撮りたくなるスポットです。
七里の渡し跡から少し内陸へ入ると、寺町通り商店街に着きます。ここは桑名市に古くからある商店街で、毎月3と8のつく日には「三八市」と呼ばれる朝市が開かれ、地元の野菜や特産品が並びます。アーケードが整備されているため、天候を気にせず歩けるのも便利な点です。食べ歩きグルメや老舗の甘味処も点在していて、ポタリングの休憩にちょうどよい場所です。
寺町通りから南へ進むと、桑名城跡に整備された九華公園に着きます。九華公園は桑名観光の中心にあたるスポットで、自転車に乗ったまま、あるいは自転車を降りて歩きながら、かつての桑名城の面影を確かめることができます。公園から北へさらに足を延ばせば、明治から大正にかけて建てられた洋館建築、六華苑にたどり着きます。揖斐川と長良川を望む広い敷地に立つ優雅な建物は、桑名ポタリングのハイライトといえる存在です。
このほか、堤防沿いには漁業複合施設のはまぐりプラザがあり、館内の食堂はまかぜでは桑名名物のはまぐり料理を手ごろな価格で味わえます。ポタリングの締めくくりに、桑名らしいグルメを楽しむのもよいでしょう。
九華公園は約450本の桜が並ぶ日本さくら名所100選の公園
九華公園は三重県桑名市吉之丸にあり、かつての桑名城本丸と二之丸の跡地を利用して整備された公園です。園内の広さは約7.2ヘクタールにおよび、桑名市民の憩いの場であると同時に、県内でも屈指の花の名所として知られています。
園内にはソメイヨシノ、しだれ桜、山桜など合わせて約450本の桜が植えられており、日本さくらの会が選ぶ「日本さくら名所100選」にも名を連ねています。日本さくら名所100選は1990年、日本さくらの会の創立25周年を記念して選ばれたもので、全国有数の桜スポットだけが名を連ねる認定です。例年春にはさくらまつりが開かれ、ぼんぼりに照らされた夜桜見物の客で園内が賑わいます。桑名城の堀をめぐりながら花見ができる「桑名城お堀めぐり」の舟が運航されるほか、写生大会なども開かれ、地域を挙げて桜の季節を盛り上げています。
桜の時期を過ぎても、九華公園には見頃を迎える花が続きます。4月下旬頃にはつつじまつりが開かれ、ヒラドツツジやオオムラサキツツジなど約550本のツツジが園内を彩ります。初夏には園内に整備された3つの菖蒲園で約4,000株の花菖蒲が見頃となり、花菖蒲まつりとして多くの来園者を集めます。桜が終わった後も、初夏まで花を目当てに何度も訪れたくなる公園だといえるでしょう。
本多忠勝が慶長6年に築いた「扇城」桑名城
九華公園の一帯は、かつて「扇城」とも呼ばれた桑名城の中枢部にあたります。徳川四天王の一人として知られる本多忠勝が、慶長6年(1601年)に桑名へ入封した際、藩政を確立するため揖斐川沿いに築城を始めた城です。最盛期には4重6階、高さ17メートルの天守と51基の櫓、46基の多聞櫓が建ち並び、船着き場まで備えた海に開かれた城郭でした。海に向かって開いた独特の縄張りが、扇城という異名の由来です。
本多忠勝は築城と並行して城下町の整備も進めました。城郭と居住区を堀ではっきり区切り、まちの中に東海道を通し、湊町・城下町・東海道の宿場町としての桑名の骨格を作り上げたのです。現在の桑名の町割りや、寺町通り・七里の渡しといった史跡の位置関係は、この本多忠勝による都市計画に由来しています。
明治時代の廃城とその後の火災で、桑名城の天守や櫓の多くは失われました。現在は堀の一部と石垣、そして復元された蟠龍櫓(ばんりゅうやぐら)がかつての姿を伝えています。蟠龍櫓は二層構造の櫓で、現在は国土交通省水門統合管理所の建物として外観が復元され、揖斐川沿いのランドマークになっています。
九華公園へは、桑名駅から徒歩やバスのほか、自転車なら10分前後で着きます。バスを使う場合は市内循環バスの「本町」バス停で降り、徒歩約3分です。園内は平坦で走りやすく、堀沿いの遊歩道をゆっくり進みながら、桜や水辺の景色、城跡ならではの石垣を眺められます。
六華苑はジョサイア・コンドルが東京以外で手がけた唯一の現存住宅建築
九華公園から北へ少し足を延ばした揖斐川・長良川のほとりに立つのが六華苑です。六華苑は、桑名の実業家で山林王としても知られた二代諸戸清六の邸宅として建てられました。着工は明治44年(1911年)、完成は大正2年(1913年)で、木曽三川の流れを望む約18,000平方メートルの敷地に、洋館・和館・日本庭園が一体となって配置されています。
諸戸家の礎を築いたのは初代諸戸清六です。18歳の頃から米穀業を営み、わずか3年で父の負債を完済するほどの商才を発揮し、明治維新後は事業をさらに広げて田畑の開墾や山林の植林を積極的に進め、やがて「日本一の大地主」と称されるまでの財を成しました。初代清六が明治39年に亡くなった後、早稲田大学在学中だった四男の清吾が家業を継ぐために呼び戻され、わずか18歳で二代目諸戸清六を襲名しています。六華苑は、この二代目清六が当主として新居を構えるにあたって建てた邸宅であり、諸戸家の経済力と、明治から大正にかけての実業家が持ちえた美意識の高さを今に伝える建築です。
六華苑最大の見どころは、洋館部分を設計したのが英国人建築家ジョサイア・コンドルだという点です。コンドルは、明治政府が国家事業として建てた社交場「鹿鳴館」の設計者としても知られる、日本の近代建築史できわめて重要な人物です。東京帝国大学(現・東京大学)工部大学校の教授として辰野金吾ら多くの日本人建築家を育てたことでも知られ、「日本近代建築の父」とも呼ばれています。六華苑は、コンドルが東京以外の地で手がけた現存する唯一の住宅建築という点で、建築史のうえでも貴重な存在です。
二代諸戸清六の希望で塔屋が4階建てに変更された
洋館の外観で目を引くのが、四層構造の塔屋です。コンドルが設計した当初案では3階建ての塔でしたが、施主である二代諸戸清六が揖斐川・長良川の眺望をより楽しみたいと希望したことから、4階建てへの変更を依頼したと伝えられています。この塔屋からは木曽三川の流れを一望でき、当時の諸戸家がこの土地からの眺望をどれほど大切にしていたかがうかがえます。
洋館に隣接する和館は書院造を基調とした落ち着いた佇まいで、洋館の華やかさとは対照的な和の趣を伝えています。庭園は池泉回遊式の日本庭園で、四季折々の草花や樹木が植えられ、洋館・和館とともに調和のとれた景観を作り出しています。
こうした価値が評価され、洋館・和館は平成9年(1997年)に国の重要文化財に指定され、庭園も平成13年(2001年)に国の名勝に指定されました。現在は桑名市が管理する文化施設として一般公開されていて、明治・大正期の日本における西洋建築受容のあり方を体感できる観光スポットになっています。
見学は入苑料460円、休苑日は月曜日
六華苑の見学情報は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公開時間 | 9時から17時まで(入苑は16時まで) |
| 休苑日 | 月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始 |
| 入苑料(一般・高校生以上) | 460円(団体390円) |
| 入苑料(中学生) | 150円(団体70円) |
| 入苑料(小学生以下) | 無料(保護者の付き添いが必要) |
最新の開苑状況や料金、イベント情報は六華苑の公式サイトで確認しておくと安心です。ポタリングで訪れる際は、公園と違って文化財建造物のため、自転車は指定の駐輪スペースに停めてから見学します。館内の見学には30分から1時間ほどを見ておくとよいでしょう。洋館内部の暖炉やステンドグラス、当時の調度品も見応えがあり、写真好きの人にも向いています。
桑名グルメははまぐり料理と寺町通りの三八市が定番
桑名には「その手は桑名の焼き蛤」という古くからの言葉があるほど、はまぐりの名産地として知られてきました。木曽三川が運ぶ栄養分によって育つ桑名のはまぐりは、江戸時代から東海道の名物として旅人に親しまれてきた食材です。堤防沿いの漁業複合施設はまぐりプラザ内にある食堂はまかぜでは、焼き蛤をはじめとするはまぐり料理を手ごろな価格で味わえます。ポタリングの合間に立ち寄って、地元の味覚を楽しむのも桑名らしい過ごし方です。
寺町通り商店街で毎月3と8のつく日に開かれる三八市も、暮らしに根ざした風物詩です。新鮮な野菜や果物、地元の惣菜が軒を連ね、観光客だけでなく地元の人にも親しまれています。アーケード街のため天候の心配が少なく、雨の日のポタリングでも立ち寄りやすい点も魅力です。
揖斐川サイクリングロードを北上すると多度大社と木曽三川公園に至る
九華公園や六華苑を中心とした桑名駅周辺のコースは、2時間から3時間ほどで無理なく回れる距離感です。もう少し走りたいという人には、揖斐川沿いのサイクリングロードを北上して多度大社方面まで足を延ばすルートも向いています。揖斐川沿いは車通りが少なく、河川敷の開けた景色を眺めながら気持ちよく走れます。
多度大社は桑名市多度町に鎮座する古社で、上げ馬神事でも知られています。背後には標高403メートルの多度山がそびえていて、本格的に脚を試したいサイクリストには多度山ヒルクライムも人気です。
多度山ヒルクライムは最大勾配15%の本格的な坂道
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 区間距離 | 約3.9キロメートル |
| 勾配の特徴 | スタート直後から10%を超える急勾配区間あり |
| 最大勾配 | 15%程度 |
九華公園・六華苑周辺の平坦なポタリングとはまったく違う走りごたえを味わえるので、体力に自信のある人は挑戦してみるのもよいでしょう。多度山山頂公園までは、多度駅から鳥居をくぐり宇賀神社を経由するハイキングコースも整備されていて、全長約4,520メートルで眺望を楽しみながら登れます。
揖斐川沿いのサイクリングロードは、さらに北上すると木曽川・長良川・揖斐川の三川が集まる岐阜県海津市方面の国営木曽三川公園へとつながります。木曽三川公園には138タワーパークや木曽三川公園センターといった拠点施設があり、桑名の七里の渡し跡から一宮市の138タワーパークまでを結ぶ、全長約130キロメートルのロングライドに挑戦するサイクリストもいるほど、広い範囲にサイクリングネットワークが整備されている地域です。国営木曽三川公園にもレンタサイクルが用意されていて、シーズン中(3月から10月)は午前9時30分から午後4時15分頃まで、冬季(11月から2月)は午前9時30分から午後3時30分頃まで貸し出しています。日帰りポタリングに慣れてきたら、こうした広域ルートに挑戦してみるのも桑名サイクリングの楽しみ方のひとつです。
養老鉄道のサイクルトレインで片道輪行も楽しめる
桑名駅からは養老鉄道養老線のサイクルトレインを利用することもできます。養老鉄道では、サイクリング愛好者や地域住民の利便性を図るため、自転車をそのまま車両に持ち込めるサイクルトレインを運行していて、桑名駅から揖斐駅までの区間で利用できます。平日は対象マークの付いた列車、土曜・日曜は全列車で利用でき、有効な乗車券に加えて自転車1台を無料で持ち込めます(利用できる車両は進行方向前から2両目)。行きは電車でサイクルトレインを使って上流側まで移動し、帰りは揖斐川沿いを下りながら桑名まで戻ってくるといった、片道輪行スタイルのポタリングを楽しむサイクリストも少なくありません。平坦な市街地ポタリングから多度山ヒルクライム、木曽三川公園への広域ライドまで、体力や時間に合わせて幅広い楽しみ方ができるのが桑名エリアの奥深さです。
堤防沿いは日差しが強く、六華苑では自転車の乗り入れができない
桑名ポタリングは全体的に平坦なコースが多く、初心者でも走りやすいのが特徴ですが、押さえておきたい点もいくつかあります。堤防沿いの道は日差しを遮るものが少ないため、季節によっては熱中症対策や日焼け対策をしっかり行うことが欠かせません。飲み物をこまめに補給しながら走りましょう。
九華公園や寺町通り商店街、七里の渡し跡周辺は観光客や地元住民の歩行者も多いエリアです。公園内や商店街ではスピードを落とし、歩行者を優先することが求められます。特に桜の季節の九華公園は花見客で賑わうため、自転車を降りて押し歩きするのがマナーとして望ましい場面も多いでしょう。六華苑は文化財建造物のため、敷地内への自転車の乗り入れはできません。指定の駐輪場所を利用し、マナーを守って見学しましょう。
服装については、桑名は木曽三川の河口に近く風が強い日もあるため、風を通しにくいウィンドブレーカーを一枚持っておくと安心です。春先や秋口は朝晩の気温差もあるため、脱ぎ着しやすい服装を選ぶとよいでしょう。
桑名ポタリングは水郷と城下町、大正建築を半日で巡れる周遊コース
三重県桑名市は、木曽三川の流れと、東海道42番目の宿場町として栄えた歴史、そして明治・大正期の近代建築という、複数の魅力が重なった土地です。桑名駅を起点に、七里の渡し跡から寺町通り商店街、桜の名所として知られる九華公園、そしてジョサイア・コンドル設計の洋館を擁する六華苑まで、平坦な地形を活かしてゆったりと自転車で巡れます。
レンタサイクルも駅前で手軽に借りられるため、電車で訪れてそのままポタリングを楽しめる利便性の高さも大きな魅力です。桜の季節には九華公園の約450本の桜が咲き誇り、日本さくら名所100選にふさわしい景観を作り出します。六華苑では大正モダンの洋館建築と日本庭園の調和を静かに楽しめて、公園の賑わいとは違うひとときを過ごせます。名物のはまぐり料理や寺町通りの三八市など、食の楽しみも豊富です。名古屋方面からのアクセスもよく、日帰りでも満喫できる距離感でありながら、歴史・自然・建築・グルメがコンパクトにまとまった桑名は、初心者からベテランサイクリストまで幅広い層におすすめできるポタリングの目的地です。









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