境港ポタリングの定番ルートは、水木しげるロードでの妖怪めぐりと、白砂青松で知られる弓ヶ浜サイクリングコースを組み合わせた1日プランです。前半は徒歩やレンタサイクルで妖怪ブロンズ像を巡り、後半は日本海と大山を望む全長15.8キロメートルの海沿いコースを走ります。この記事では鳥取県境港市を舞台にしたポタリングの見どころとアクセス、休憩スポットの情報を2026年09月11日時点の内容でまとめました。妖怪文化と絶景サイクリング、新鮮な海の幸をまとめて味わいたい人に向けた実用ガイドです。

境港市は人口3万3千人の港町で妖怪と魚が観光の軸
境港市は鳥取県の西端にあり、人口約3万3千人、面積約29平方キロメートルという県内で最も人口が少ない自治体です。それでも境漁港は日本有数の水揚げ量を誇り、カニの水揚げ量は日本一、生のクロマグロも全国有数の水揚げ量を記録しています。ハタハタやサワラ、ノドグロといった魚種も四季を通じて水揚げされており、水産業の存在感が街の雰囲気にも表れています。加えて漫画家水木しげる先生の出身地でもあり、妖怪文化と海産物という2つの軸が境港観光を支えています。境港市街には国際空港の米子鬼太郎空港と、対岸の松江市美保関町を結ぶ境水道大橋もあり、空路・鉄道・自動車のいずれからもアクセスしやすい立地です。
水木しげるロードは177体の妖怪ブロンズ像が並ぶ800メートル
水木しげるロードは、JR境港駅から水木しげる記念館まで続く約800メートルの通りです。1993年に23体の妖怪ブロンズ像が設置されたのが始まりで、その後何度も増設が重ねられました。2018年7月には大規模なリニューアルが行われ、新たに24体が加わって全177体という規模になり、ゾーンごとにテーマを分けて再配置されています(一部の資料では178体と紹介されることもあります)。鬼太郎やねずみ男、目玉おやじ、猫娘、砂かけばばあ、子泣き爺といった主要キャラクターに加えて、あまり知られていないマイナーな妖怪像まで並んでおり、1体ずつ見ていくとかなり時間がかかります。
ロード沿いには妖怪モチーフの土産物店や飲食店、和菓子店が軒を連ねていて、妖怪グッズを買いながら歩くだけでも飽きません。夜はブロンズ像や街灯がライトアップされ、昼間とは違った雰囲気になります。人力車や妖怪の着ぐるみとの記念撮影スポットもあるので、家族連れにも外国人観光客にも人気です。
食べ歩きグルメでは、水木しげる先生が帰省するたびに立ち寄っていたという鬼太郎茶屋が有名です。コーヒーや抹茶に加えて、鬼太郎やねずみ男、猫娘、目玉おやじをかたどった妖怪ラテアートを提供しています。妖怪人気投票で1位に輝いた一反木綿をかたどった一反木綿イカ焼きも名物で、手頃な価格で気軽に食べ歩けます。
ロード沿いの妖怪広場にある河童の泉も撮影スポットの1つです。河童の三平の主人公・三平をはじめ、河童や小豆洗いといった水にまつわる妖怪、悪魔くんやタヌキなど計9体のブロンズ像が泉を囲むように配置されています。少し離れた場所には妖怪神社もあり、高さ約3メートルの黒御影石と樹齢300年のケヤキで構成された御神体が祀られています。参拝作法は二礼二拍手一礼のあと御神体に触れるというもので、ご利益を求めて訪れる観光客も少なくありません。境港市では毎年秋に境港妖怪検定も開催されており、初級公式テキストとして全妖怪ブロンズ像を網羅したガイドブックも販売されています。
2024年春には境港駅前に新しいフォトスポット「ゲゲゲの広場」が完成しました。開設から30年以上が経った今も新しいスポットが加わり続けているのが、このロードの特徴です。
水木しげる記念館は妖怪洞窟と妖怪ポストが見どころ
水木しげるロードの終点にあるのが水木しげる記念館です。水木しげる先生の生い立ちや戦争体験、漫画家としての歩み、代表作の原画が展示されています。館内には薄暗い通路を進む「妖怪洞窟」という仕掛け展示があり、中庭には鬼太郎の家が再現されているほか、実際に投函できる妖怪ポストも設置されています。記念館周辺は妖怪ブロンズ像が密集しているエリアなので、ポタリングの合間に自転車を降りてじっくり見て回るのがおすすめです。
水木しげる先生(本名・武良茂)は1922年に大阪府で生まれ、幼少期からこの境港市で育ちました。太平洋戦争ではラバウルに出征し、爆撃によって左腕を失っています。戦後は紙芝居や貸本漫画の世界に入り、1958年に「ロケットマン」でデビューしました。1966年に「テレビくん」で講談社児童漫画賞を受賞し、1967年から少年マガジンで「ゲゲゲの鬼太郎」の連載を始めています。代表作の「ゲゲゲの鬼太郎」はテレビアニメや実写映画にもなり、国民的なキャラクターとして親しまれるようになりました。「悪魔くん」「河童の三平」といった妖怪テーマの作品のほか、自身の戦争体験をもとにした「総員玉砕せよ!」のような戦記漫画でも評価されています。2003年に境港市に水木しげる記念館が開館し、2010年には文化功労者に選ばれました。2015年11月30日に93歳で亡くなりましたが、境港の街には今も先生が生み出した妖怪たちが息づいています。
白砂青松の弓ヶ浜サイクリングコースは全長15.8キロの平坦ルート
白砂青松の弓ヶ浜サイクリングコースは、境港市の境夢みなとターミナルから米子市の日野川河口までを結ぶ、全長約15.8キロメートルのコースです。白い砂浜と青々とした松林が織りなす景観が特徴で、コースの多くの区間が海岸線に沿って続きます。全体的に平坦な地形で傾斜がほとんどないため、本格的なサイクリストだけでなく家族連れや自転車初心者でも走りやすいルートです。鳥取県が整備する自転車道の1つで、瀬戸内海側のサイクリングルートを対象とした広域プロジェクト「Setouchi Vélo」にも登録されています。鳥取県公式サイトの「とっとり自転車旅」でも代表的なルートとして紹介されており、県内外から自転車愛好家が訪れます。
弓ヶ浜という名前は、弓なりに湾曲した海岸線に由来します。弓ヶ浜半島は、日野川から美保湾へ流れ出た砂が海流や北東風の波の力で北西へ運ばれ、長い年月をかけて堆積してできた日本最大級の砂州です。『出雲国風土記』には「伯耆の国郡内の夜見の嶋」という記述があり、この記述から古くはこの一帯が島だったことがわかります。その後、日野川が運んだ土砂が堆積し続けたことで現在の半島が形成されました。戦国時代には水軍の拠点として境松合戦や弓浜合戦といった戦が起きた記録も残っています。
現在の弓ヶ浜には樹齢35年から80年ほどの松原と白い砂浜が10キロメートル以上にわたって連なっています。江戸時代以降、防風林・防砂林として松を植える取り組みが進められ、地域住民やボランティア団体の手で長年保全されてきました。この功績によって弓ヶ浜は「日本白砂青松百選」と「快水浴場百選」の両方に選ばれています。
大山を望む絶景は弓ヶ浜サイクリングコースならではの魅力
弓ヶ浜サイクリングコース最大の見どころは、海越しに望む大山の姿です。標高1729メートルの大山は「伯耆富士」とも呼ばれ、天候が良ければコースのあちこちから美しいシルエットを見られます。青い日本海と白い砂浜、緑の松林、遠くにそびえる大山という組み合わせは、このコースでしか味わえない景色です。
大山は東西南北どの角度から眺めるかによって表情を変えます。海岸線からまっすぐ見上げる姿は天候や時間帯によって陰影が変わるため、写真を撮りながら走るサイクリストも多いです。境港市周辺は日本海と大山を同時に画角に収めやすいロケーションで、コース沿いの開けた砂浜エリアはシャッターチャンスが豊富です。大山周辺には豪円山のろし台のように、ゲレンデの緑と大山北壁、眼下の日本海を一望できる360度パノラマの展望スポットもあるので、時間に余裕があれば足を延ばす価値があります。
コースの途中には米子鬼太郎空港があり、サイクリングコースのすぐ近くを飛行機が離着陸していきます。飛行機の音とともに日本海の潮風を感じられる区間は、他のサイクリングコースにはない体験です。松林の中を抜ける区間は木陰が心地よく、夏場でも比較的走りやすくなっています。
レンタサイクルは夢みなとターミナルとコグステーション皆生の2拠点
弓ヶ浜サイクリングコースは両端にレンタサイクルの拠点があるため、手ぶらで訪れても気軽にポタリングを楽しめます。境港市側の拠点は夢みなとターミナル、米子市側の拠点は皆生温泉近くのコグステーション皆生です。片道だけ走ってレンタサイクルを乗り捨てる利用ができる場合もあるので、体力や時間に応じてコース取りを調整できます。境港市では市内観光向けのレンタサイクルサービスも用意されているので、水木しげるロードから境港駅周辺だけを回るなら、こちらを利用して身軽に散策する手もあります。
境港駅から夢みなとターミナルまでは市街地を経由してアクセスでき、水木しげるロードの散策とセットでプランを組みやすくなっています。ロードを歩いて妖怪ブロンズ像を堪能したあと自転車を借り、弓ヶ浜サイクリングコースへ向かうという1日プランが定番です。
境港さかなセンターの海鮮丼はポタリング途中の定番ランチ
境港さかなセンターは夢みなと公園内にある海産物専門の直売施設です。地元の鮮魚仲買業者が集まり、境港で水揚げされた魚介類を市場直結価格で販売しています。中間流通を省いているため、安さと新鮮さ、種類の豊富さがそろっています。松葉がにや紅ずわいがに、するめいかの一夜干しなど、山陰ならではの海の幸が並びます。営業時間は8時30分から17時までで、水曜定休(祝日の場合は営業)です。訪問前に定休日を確認しておくと安心です。
隣接する直営店「美なと亭」では新鮮な海の幸を使った海鮮丼や定食を味わえます。境港水産物直売センター内の食事処「さかな塾」でも、朝水揚げされたばかりの魚介類をリーズナブルな価格で提供しています。ポタリングで体を動かしたあとに海鮮丼で栄養補給をするのも、境港ならではの楽しみ方です。
夢みなとタワーの展望室は入場料300円で360度パノラマ
境港さかなセンターがある夢みなと公園は、境夢みなとターミナルにも近く、弓ヶ浜サイクリングコースの起点としても機能するエリアです。園内の夢みなとタワーは地上43メートルの展望室からの眺めが自慢で、日本海や国立公園大山、島根半島、境水道大橋、境港市街、弓ヶ浜、中海、米子市街、皆生温泉までを見渡す360度のパノラマが広がります。入場料は大人300円、子ども150円と手頃なので、ポタリングの休憩がてら立ち寄りやすい料金設定です。
タワーのすぐ横には露天風呂を備えた天然温泉施設「みなと温泉ほのかみ」があり、大山や日本海を眺めながら大浴場やサウナ、露天風呂でくつろげます。4階には展望喫茶「タワーズ・カフェ」も併設されていて、景色を見ながら一息つけます。広々とした芝生広場もあるので、家族連れがピクニック感覚で立ち寄る場所としても人気です。
皆生温泉の足湯はサイクリング後の休憩に最適
弓ヶ浜サイクリングコースの米子市側の終点付近にあるのが皆生温泉です。発見されたのは1900年で、浜辺で漁をしていた地元漁師が海中から泡が吹き出ているのを偶然見つけたのが始まりとされています。本格的な温泉街としての整備が進んだのは大正時代に入ってからで、大正9年に皆生温泉土地株式会社が設立され、温泉の掘削や旅館、公衆浴場の整備が進みました。
皆生温泉は全国的にも珍しい海から湧く温泉で、美保湾の海底から湧出するナトリウム・カルシウム塩化物泉です。県下一の湧出量を誇り、塩分濃度が濃く保温力が高いことから、体を温める泉質として知られています。別名「塩の湯」とも呼ばれ、古くから神経痛や筋肉痛、関節痛、疲労回復、冷え性などに向くとされる温泉として親しまれてきました(効能の感じ方には個人差があります)。白浜の美しい弓ヶ浜沿いに温泉旅館が立ち並ぶ景観も見応えがあります。
皆生温泉には無料で利用できる足湯があり、サイクリングで疲れた足を休められます。コース終盤に足湯で一休みしてから温泉旅館に宿泊したり、日帰り入浴を楽しんだりするプランも人気です。潮風を浴びながら海を眺めつつ足湯につかる時間は、ポタリングの締めくくりにちょうど良い過ごし方です。
JR境線の鬼太郎列車と米子鬼太郎空港からのアクセス
境港へのアクセスで特色があるのがJR境線です。米子駅と境港駅を結ぶ約17.9キロメートルの路線で、沿線には妖怪の愛称がつけられた16の駅があり、それぞれに妖怪モチーフの駅名標が設置されています。現在は鬼太郎、ねずみ男、猫娘、目玉おやじ、こなきじじい、砂かけばばあをモチーフにした6種類のラッピング列車、通称「鬼太郎列車」が運行されていて、車体全体が妖怪キャラクターで彩られています。ポタリングの行き帰りに合わせて乗車するのもおすすめで、輪行袋を使って自転車を分解して持ち込めば、境港駅で組み立てて水木しげるロードから弓ヶ浜サイクリングコースへ走り出すプランも組めます。
空路で訪れる場合は米子鬼太郎空港が最寄りです。空港には米子空港駅があり、境港駅まではJR境線でわずか190円というアクセスの良さです。空港自体も妖怪モチーフの内装が施されていて、到着した瞬間から旅の雰囲気を味わえます。空港のすぐ近くを弓ヶ浜サイクリングコースが通っているため、飛行機の離着陸を眺めながら走れる区間もあります。
自動車で訪れる場合は、境港市内や夢みなとターミナル周辺に駐車場が整備されているので、マイカーやレンタカーでのアクセスもしやすくなっています。
境港ポタリングのモデルコースは1日で妖怪と海を満喫
境港エリアを効率よく回るなら、まずJR境港駅から水木しげるロードを徒歩で散策し、妖怪ブロンズ像と記念館を見て回ります。そのあと夢みなとターミナルでレンタサイクルを借り、境港さかなセンターで海鮮ランチを済ませてから、白砂青松の弓ヶ浜サイクリングコースを米子方面へ走り出す流れが定番です。米子鬼太郎空港付近では離着陸する飛行機を眺めつつ休憩し、日野川河口や皆生温泉方面まで足を延ばして足湯で疲れを癒やすと1日のプランが完成します。
体力や時間に余裕がなければ、夢みなとターミナル周辺から数キロだけ往復するショートコースにアレンジできます。逆に健脚派であれば、コース全長15.8キロを往復して境港と米子の両方の魅力をじっくり味わうロングプランもおすすめです。傾斜がほとんどないフラットなコースなので、普段自転車に乗り慣れていない人でも無理なく走れるのがこのルートの強みです。
境水道大橋の眺望も、ポタリングの締めくくりに立ち寄りたいスポットです。境港市と対岸の島根県松江市美保関町を結ぶこの橋は、全長709メートル、高さ約40メートルのトラス構造のアーチ橋で、境水道を航行する船の通行を妨げないよう橋脚が高く設計されています。地元では「おさかな大橋」の愛称で親しまれていて、これは境港と対岸の美保関漁港という2つの港町を結ぶ橋であることに由来します。橋の下には漁船や外国船が行き交い、橋のたもとには釣りを楽しむ人の姿も見られます。夕暮れ時や夜の港の灯りが美しい時間帯は、特に撮影に向いています。
境港ポタリングに適した季節は空気が澄む秋
弓ヶ浜サイクリングコースは一年を通じて走れますが、気候が穏やかな春と秋が走りやすい季節です。春は松林の新緑が美しく、海風も心地よく感じられます。秋は空気が澄んでいて、大山のシルエットがひときわくっきり見える季節です。夏場は日差しが強いので、松林の木陰を活用しつつこまめな水分補給を心がけたいところです。冬場は日本海特有の強い季節風が吹くこともあるため、防寒対策をしっかりしてから走るのが望ましいでしょう。水木しげるロードは屋外の徒歩エリアですが、アーケードや店舗が点在しているので、天候が多少悪くても散策自体は楽しめます。
境港ポタリングでよく聞かれるのが、水木しげるロードと弓ヶ浜サイクリングコースをどう組み合わせればいいかという質問です。答えは、境港駅から夢みなとターミナルまでの区間を街歩きの延長として使い、そこからレンタサイクルで弓ヶ浜サイクリングコースに合流するルート取りです。この動線なら、妖怪めぐりからサイクリングへの切り替えが自然につながり、移動のロスも少なくて済みます。もう1つよくある質問が所要時間で、ロードの散策とサイクリングコースの往復を合わせると1日がかりのプランになるとイメージしておくと、皆生温泉での休憩まで含めて余裕を持って回れます。
境港ポタリングの魅力は、水木しげるロードという文化的な観光資源と、白砂青松の弓ヶ浜サイクリングコースという自然の景観を、1つの旅程で両方味わえる点にあります。妖怪ブロンズ像を眺めながらの街歩きと、海と松林、大山を望むサイクリングという異なる2つの体験を1日で楽しめる街は、そう多くはありません。新鮮な海の幸のグルメや皆生温泉の足湯といった食と休息の要素も充実しているので、家族旅行から1人旅、サイクリング愛好家のツーリングまで幅広く対応できるルートです。次の休日に、妖怪と海、大山の景色をまとめて楽しめる境港ポタリングに出かけてみてはどうでしょうか。








