吉原宿から岳南電車沿線をポタリングで巡る昭和商店街と富士市の旅

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静岡県富士市の吉原宿は、江戸時代に東海道の十四番目の宿場として栄えた町で、周辺には昭和の商店建築が残る商店街と、岳南電車の沿線風景が広がっています。この吉原エリアを自転車でめぐるポタリングは、半日から一日程度の行程で、東海道の歴史と昭和レトロな街並み、そしてどの駅からも富士山が見えるローカル私鉄という三つの魅力を一度に味わえるコースです。起点となる吉原駅から主要な見どころまでの距離が近く、自転車に乗り慣れていない人や家族連れでも走りやすいのがこのエリアの強みです。

観光地として大きく取り上げられる機会は多くないものの、実際に走ってみると密度の濃さに気づきます。東海道の史跡、昭和の商店文化、鉄道と工場が同居する景観が、数キロメートルの範囲に凝縮されているからです。この記事では、吉原宿の史跡から吉原商店街のご当地グルメ、岳南電車沿線の見どころ、周辺のポタリングコースやアクセス情報まで、実際に走る際に役立つ内容をまとめました。

目次

吉原宿は東海道十四番目の宿場で移転により「左富士」が生まれた

吉原宿は、東海道五十三次のうち江戸から数えて十四番目にあたる宿場で、現在の富士市中心市街地に位置していました。東海道は江戸と京都を結ぶ最重要の街道で、各宿場には本陣や旅籠、問屋場が置かれ、参勤交代の大名行列や商人、旅人が行き交う要衝として機能していました。吉原宿も富士山を望む景勝地として、東海道有数の宿場町として賑わったと伝えられています。

吉原宿には大きな特徴があります。宿場の位置が歴史の中で何度か移転している点です。もともと海に近い場所にあった宿場は、高波や地震の被害を受けて内陸側へ移され、この移転によって東海道のルート自体が北側に大きく湾曲しました。その結果、それまで進行方向の右手に見えていた富士山が、移転後の道筋では左手に見えるようになりました。これが「左富士(ひだりふじ)」と呼ばれる全国的にも珍しい景勝地です。江戸から京都へ向かって東海道を進むと富士山は基本的に右側に見え続けるのが通常ですが、吉原宿周辺だけは例外的に左側に富士山が見える区間があります。歌川広重の浮世絵にも描かれ、古くから東海道随一の名所として知られてきました。現在も「左富士神社」がその名残を伝えており、旧東海道を巡る旅人や自転車乗りにとって欠かせない立ち寄りスポットになっています。

吉原宿周辺には、左富士神社のほかにも、源平合戦にゆかりのある史跡「平家越」や、子育て祈願で知られる大運寺の子育て稲荷など、旧東海道沿いに史跡が点在しています。富士市が整備している「東海道旧吉原宿コース」は、吉原まちづくりセンターを起点に、これらの史跡を巡りながら歩く約六キロメートルのモデルコースとして紹介されており、徒歩でも自転車でも無理なく巡れる距離感です。

吉原宿には、江戸時代から三百四十年以上にわたって庶民の宿として営業を続けてきた老舗旅籠「鯛屋」も残っています。館内には、幕末の剣豪・政治家として知られる山岡鉄舟の手による看板や、幕末の侠客として名高い清水次郎長が定宿としていた名残など、歴史的な逸話を伝える品々が保存されているそうです。近代的な観光地化がされすぎていないぶん、こうした生きた歴史の痕跡に触れられるのが、吉原宿周辺を走る楽しみのひとつだといえます。

吉原商店街は全長約700メートルのアーケードに昭和の商店建築が残る

吉原宿の中心部から続く「吉原商店街」は、全長約七百メートルにおよぶ屋根付きのアーケード街です。雨の日でも傘をささずに歩ける(自転車を押して歩ける)造りになっています。一六〇〇年頃、東海道の宿場町として、また富士登山の玄関口としても栄えた歴史を持つこのエリアは、昭和の高度経済成長期には地域随一の繁華街として賑わい、当時の建物や看板、アーケードの意匠が今も色濃く残されています。

商店街を歩くと、正面にどっしりと富士山がそびえる景色が随所で目に入ります。昭和的な懐かしい町並みと雄大な富士山という組み合わせが、独特の情緒を生み出しています。近年ではこうしたレトロな雰囲気そのものが観光資源として見直され、二〇二四年七月には商店街の空き店舗を活用した分散型のホテル「アーケードホテル(Arcade Hotel)」が開業しました。商店街全体をひとつの宿泊施設に見立てる「まちやど」という考え方に基づいた取り組みで、宿泊客が実際に商店街の飲食店や店舗を利用しながら滞在する仕組みになっており、商店街再生のモデルケースとして日本経済新聞などのメディアでも取り上げられました。

つけナポリタンは2008年に商店街の町おこし企画から誕生した

吉原商店街を語るうえで欠かせないのが、ご当地グルメ「つけナポリタン」です。つけナポリタンは二〇〇八年、吉原商店街の町おこしを目的としたテレビ番組の企画がきっかけで誕生したメニューで、商店街内の喫茶店「コーヒーショップ・アドニス」の店主と、つけ麺店の店主が協力して開発したとされています。通常のナポリタンとは異なり、麺とスープ(ソース)が別々の器で提供され、つけ麺のように麺をスープにくぐらせて食べるスタイルが特徴です。ベースとなるのはトマトソースに鶏ガラや野菜などから取ったブイヨンを合わせたダブルスープで、「トマトソースをベースにしたWスープであること」「麺とスープが別々のつけ麺スタイルであること」という二つの定義を満たさなければ「つけナポリタン」を名乗れないというルールも設けられています。現在では商店街内だけでも数十店舗がそれぞれ独自の味わいのつけナポリタンを提供しており、一軒ごとに食べ比べる「つけナポ食べ歩き」を楽しむ観光客も多いといいます。

つけナポリタン以外にも、昔ながらの製法で作られるプリンを提供する和菓子店など、個性的な店が軒を連ねています。硬めの卵と牛乳を使った昔ながらのプリンは、どこか懐かしい味わいで、商店街散策の合間の休憩にちょうどよい一品です。ポタリングの途中で自転車を止め、こうした昭和からの味を楽しみながら一休みするというのも、このエリアならではの楽しみ方でしょう。

岳南電車は全10駅すべてから富士山が見える9.2キロの路線

吉原商店街や吉原宿の散策とあわせて体験したいのが、地元のローカル私鉄「岳南電車」です。岳南電車は、JR東海道本線と接続する起点駅「吉原」から、終点「岳南江尾」までのわずか九・二キロメートルを結ぶ小さな路線ですが、全線のすべての駅から富士山を望めるという、県内でも他に類を見ない特徴を持っています。かつては貨物輸送を担う工業路線としての性格が強く、沿線には今も製紙工場をはじめとする工場群が広がっており、昭和の産業と鉄道が織りなす独特の景観も見どころのひとつです。

吉原駅とジヤトコ前駅間の踏切は電車と富士山を一枚に収められる撮影地

沿線で特に人気の撮影スポットとして知られているのが、吉原駅とジヤトコ前駅の間、公設市場付近の踏切です。まっすぐに伸びる線路の上を電車が向かってきて、その正面に富士山がそびえるという構図で写真が撮れることから、鉄道ファンだけでなく一般の観光客にも人気のポイントとなっています。ポタリングの途中でこうした撮影スポットに立ち寄り、電車が通過するタイミングを待ってシャッターを切ってみるのも面白い体験になるはずです。

岳南電車沿線には、鉄道関連の見どころも点在しています。二〇二一年には岳南富士岡駅の構内に、実際に使われていた電気機関車を展示する「がくてつ機関車ひろば」がオープンし、鉄道ファンや家族連れに人気のスポットとなりました。同じ二〇二一年には、本吉原駅のホームが国の登録有形文化財に登録されるなど、鉄道施設そのものの歴史的価値も評価されています。

岳南電車は、鉄道として日本で初めて「日本夜景遺産」に認定された路線としても知られています。車内の照明を消して走る「夜景電車」や、乗客自身が実際に電車を運転する体験ができる「岳鉄運転体験」、走行中の車内でビールを楽しめる「ビール電車」など、ユニークなイベント企画を数多く実施しており、単なる移動手段にとどまらないエンターテインメント性の高さがこの路線の魅力になっています。

岳南電車には「全線一日フリー乗車券」が用意されており、大人七百五十円、子供三百十円程度(時期により変動の可能性があります)で一日乗り放題になります。有人駅である吉原駅、吉原本町駅、岳南富士岡駅の窓口で購入できるほか、スマートフォンアプリ「乗換案内」を通じたモバイルチケットでの購入にも対応しています。ポタリングの合間に電車で移動区間をショートカットしたり、逆に自転車を輪行袋に入れて持ち込んだりする際には、事前に岳南電車の公式サイトや窓口で自転車の持ち込みルールを確認しておくと安心です。

岳南電車は全部で十の駅からなる小さな路線ですが、終点に近い駅にもそれぞれ味わい深い個性があります。比奈駅の周辺は、地域で語り継がれてきた「かぐや姫の里」の伝承にゆかりのある土地とされており、富士山かぐや姫ミュージアムの展示内容とあわせて訪れると物語の背景を感じやすくなります。終点のひとつ手前にあたる神谷駅の周辺には、古代から江戸、昭和、平成へと続く長い時の流れを感じさせる街並みが今も残っており、終着駅である岳南江尾駅までのんびりと乗り継いでいくと、吉原の賑やかな商店街の風景とはまた違った、静かで素朴な富士市の表情に出会えます。全線を乗り通しても片道二十分ほどの小さな路線だからこそ、途中下車を繰り返しながら、自転車と電車を組み合わせて自分のペースで沿線を巡れるのが岳南電車ポタリングの醍醐味です。

広見公園と富士山かぐや姫ミュージアムは入館無料の休憩スポット

岳南電車沿線や吉原宿周辺を自転車で巡るルートに、少し足を延ばして組み込みたいのが「広見公園」とその一画にある「富士山かぐや姫ミュージアム」です。広見公園は富士市を代表する総合公園のひとつで、緑豊かな園内には市の指定文化財となっている歴史的建造物が移築保存されており、公園を散策するだけでも富士市の歴史の一端に触れられます。

富士山かぐや姫ミュージアムは、もともと富士市立博物館として開館していた施設が、平成二十八年(二〇一六年)のリニューアルを経て現在の名称になったもので、「富士に生きる」というコンセプトのもと、富士山南麓に暮らしてきた人々の歴史や文化を紹介しています。館名にも冠されている「かぐや姫」は、富士山南麓に伝わる竹取物語(かぐや姫伝説)のご当地伝承にちなんだもので、日本各地に残るかぐや姫伝説のひとつとして富士市域のものを取り上げ、信仰の山としての富士山を地域に根ざした視点から紐解く展示になっています。分館にあたる歴史民俗資料館では、漁業や農業、製紙業、教育、戦争など、より生活に密着した富士市の歴史資料も紹介されています。リニューアルにあわせて入館料は無料になっており、公園に遊びに来たついでに気軽に立ち寄れる施設になっている点も、ポタリングの休憩スポットとして助かるポイントです。

富士市のポタリングコースは海岸線・富士川・市街地の3タイプに分かれる

富士市は、駿河湾沿いの平坦な海岸線から、富士川沿いの高低差のあるコース、そして市街地に残る旧東海道まで、走り方によって性格の異なる自転車コースを楽しめる懐の深いエリアです。

初心者やのんびりとしたポタリングを楽しみたい人におすすめなのが、駿河湾沿いを走る海岸線コースです。このコースはほぼ高低差がなく信号も少ないため、自転車に乗り慣れていない人でも安心して走れます。走りながら駿河湾と富士山を同時に望めるビューポイントが点在しているほか、区間によっては東海道新幹線と富士山が同時に視界に入る、鉄道ファンにはたまらない撮影ポイントも存在します。新鮮な海の幸を提供する飲食店も沿線に点在しており、走った後にご当地の魚介グルメで一息つく楽しみ方もできます。

もう少し走りごたえのあるコースを求める人には、日本三大急流のひとつに数えられる富士川沿いを走るコースが向いています。こちらはアップダウンのある本格的なコースで、ロードバイクだけでなく電動アシスト付きのeバイクでも走りやすいように整備されています。富士川沿いを走ったあとに、一面に茶畑が広がる茶園に立ち寄ったり、東海道有数の古社である富士山本宮浅間大社に参拝したりと、走ることと観光を組み合わせやすいのも魅力です。

そして、今回のテーマである吉原宿・岳南電車沿線・吉原商店街を巡るコースは、これら二つのコースとはまた違う、歴史と生活の風景を楽しむタイプのポタリングになります。高低差はほとんどなく、市街地をゆっくり流しながら史跡やレトロな商店街、ローカル線の駅を巡っていくスタイルで、走行距離自体は数キロから十キロ程度に収まることが多く、写真を撮ったり食べ歩きをしたりしながら半日程度かけてじっくり楽しむのに向いています。

自転車を持っていない、あるいは輪行が面倒だという場合には、レンタサイクルの利用も選択肢になります。新富士駅構内には富士山観光交流ビューローがあり、市内観光の足としてeバイクのレンタルを行っています。JR新富士駅を起点に自転車を借り、市街地から岳南電車沿線、吉原宿方面へと走るプランも組みやすくなっています。

田子の浦港まで足を延ばすと工場夜景と富士山ドラゴンタワーに出会える

吉原宿・吉原商店街・岳南電車沿線のポタリングだけでは物足りない、もう少し海の景色も楽しみたいという場合には、南側に位置する「田子の浦港」まで走るコースを組み合わせるのもおすすめです。田子の浦港周辺は、海抜ゼロメートルの海岸線から富士山頂までを一望できる絶景スポットとして知られ、「ふじのくに田子の浦みなと公園」には富士山の百分の一スケール(高さ三十七・七六メートル)を再現した展望施設「富士山ドラゴンタワー」も設置されています。日中は駿河湾越しの富士山、夕方には沈む夕日と富士山のシルエット、夜には工場夜景と、時間帯によってまったく異なる表情を見せてくれるのが田子の浦港の魅力です。早朝には、しらす漁の漁船団が一斉に出漁していく光景を目にすることもあります。

田子の浦港のプロムナードゾーン周辺には、田子の浦漁業協同組合が運営する食堂もあり、水揚げされたばかりの田子の浦しらすを使った丼などを味わえます。吉原エリアから田子の浦港までは、高低差の少ない「富士オーシャンビューロード」と呼ばれる海沿いの平坦なコースでつながっており、初心者でも無理なく走れます。吉原宿・商店街めぐりで歴史とレトロな街並みを楽しんだあと、締めくくりに海と富士山の絶景を眺めながら休憩する一日がかりのプランを組んでみるのもよいでしょう。

半日で回れるモデルコースは吉原駅発着で宿場跡から商店街、沿線へと進む

ここでは、実際に走る際の一例として、半日程度で回れるモデルコースを紹介します。あくまで一例であり、体力や興味に応じてアレンジ可能です。

出発点はJR吉原駅、あるいは岳南電車の起点でもある吉原駅とします。まずは駅周辺で自転車を借りる、または輪行を解いてスタートの準備を整えます。

最初に向かうのは、旧東海道沿いに残る左富士神社です。ここは吉原宿の移転の歴史を今に伝える象徴的なスポットで、進行方向の左手に富士山を望める、全国的にも珍しい景観ポイントになっています。神社に参拝したのち、周辺に残る平家越などの史跡を巡りながら、旧東海道の面影が残る道をゆっくりと走ります。

次に、岳南電車の吉原本町駅方面へと向かい、吉原商店街に入ります。ここでは自転車を押しながら、あるいはどこかに一旦停めて、約七百メートル続くアーケード街をじっくりと歩いて見て回りたいところです。昭和の商店建築や看板、正面にそびえる富士山を眺めながら、つけナポリタンを提供する店を何軒か覗いてみるのもよいですし、老舗の甘味処で一休みするのもよいでしょう。時間に余裕があれば、二〇二四年に開業したアーケードホテルの外観や、商店街が「まちやど」としてどのように再生に取り組んでいるかを見て回るのも興味深いところです。

商店街を抜けたら、岳南電車沿線を岳南江尾方面へと向かって走ります。途中、吉原駅とジヤトコ前駅の間にある公設市場付近の踏切に立ち寄り、電車と富士山が同時に写る撮影スポットで一枚撮ってみたいものです。さらに足を延ばせるようであれば、岳南富士岡駅構内の「がくてつ機関車ひろば」に立ち寄り、実際に使われていた電気機関車の展示を見学するのもよいでしょう。

体力と時間に余裕があれば、そこからさらに広見公園・富士山かぐや姫ミュージアムまで足を延ばし、無料で見学できる展示を通じて富士市の歴史や、地域に伝わるかぐや姫伝説について理解を深めるのもおすすめです。公園内でひと休みしたのち、来た道を戻るか、あるいは岳南電車に自転車と一緒に乗車して起点の吉原駅まで戻れば、無理なく一日の行程を締めくくれます。

吉原祇園祭と吉原宿宿場まつりは商店街が最も賑わう2つの祭り

吉原商店街とその周辺では、一年を通じて地域色の濃い祭りが開催されており、ポタリングの時期を合わせて訪れると、街の活気をより肌で感じられます。

もっとも大規模なもののひとつが「吉原祇園祭」です。毎年六月の第二土曜日と日曜日に開催されるこの祭りは、地元では「お天王さん」の愛称で親しまれ、江戸時代から続く伝統行事とされています。祭りの期間中は、市内二十一の町内から出される山車(やま、やまかさ)が各町内を練り歩き、夜になるとすべての山車が吉原商店街に集結します。提灯に灯がともった山車が商店街のアーケードの下に勢揃いする光景は壮観で、昭和レトロな町並みとも相まって独特の雰囲気を作り出しています。

もうひとつの代表的な祭りが「吉原宿宿場まつり」です。こちらは秋の恒例行事として定着しており、かつて東海道五十三次の十四番目の宿場町であった吉原の歴史にちなんだ内容になっています。祭りの当日は吉原商店街のメインストリートが歩行者天国となり、吉原祇園ばやしの演奏や、郷土資料館の展示、人力車の運行、大道芸、よさこい踊り、阿波踊りなど多彩な催しが行われるほか、名物のつけナポリタンをはじめとする地元グルメの出店も並びます。近年では毎年十月頃に開催されており、直近では第二十五回にあたる開催が二〇二四年十月十三日に、第二十六回が二〇二五年十月十二日に行われました。ポタリングの計画を立てる際には、こうした祭りの開催時期に合わせて訪れると、普段以上に賑やかな商店街の様子を楽しめるでしょう。

つけナポリタンは喫茶アドニスなど商店街に約40店が味を競う

吉原商店街およびその周辺には、現在四十軒近いお店がそれぞれ個性的なつけナポリタンを提供しており、自転車で立ち寄りながら数軒を食べ比べるのもポタリングの醍醐味のひとつです。ここでは代表的な店舗をいくつか紹介します。

つけナポリタン発祥の店として知られるのが「喫茶アドニス」です。特製のトマトソースと鶏ガラスープを合わせたダブルスープに、地元産の桜えびを練り込んだ特注麺を合わせるのが特徴で、発祥店ならではの完成度の高さが評判になっています。住所は静岡県富士市吉原二丁目三番十六号です。

イタリアンレストラン「トラットリア キクチ」では、手作りの味を大切にした「吉原トラトリタン」を提供しています。特製トマトソースに自家製ソースを合わせたダブルスープが特徴で、本格的なイタリアンの技術を生かしたつけナポリタンとして人気を集めています。住所は静岡県富士市吉原二丁目三番二十四号です。

南ヨーロッパをイメージした開放的なオープンカフェ「イル・ポンテ」では、季節ごとに味わいの異なるつけナポリタンを提供しており、訪れる季節によって違った表情を楽しめます。住所は静岡県富士市蓼原九百五十六番地です。

紙バンド手芸教室を併設するユニークな店舗「紙工房のカフェ」では、ムール貝を使った深い味わいのトマトソースに、桜えびをのせたストレートパスタを合わせるつけナポリタンが人気です。住所は静岡県富士市吉原四丁目二番二号です。

このほかにも商店街には多種多様なつけナポリタン提供店が点在しており、自転車でひとつひとつの店を巡りながら、それぞれのスープの違いや麺のこだわりを食べ比べていく楽しみ方もできます。つけナポリタンは静岡県富士市が推進する「富士ブランド」の認定品にも選ばれており、地域を挙げてこのご当地グルメを盛り上げていることがうかがえます。

アクセスは吉原駅・新富士駅が起点でフリー乗車券は大人750円

このエリアの起点となるのはJR東海道本線の吉原駅、あるいは新幹線停車駅である新富士駅です。新富士駅からは路線バスなどで市街地へアクセスでき、駅構内の観光案内所ではeバイクのレンタルも行っています。吉原駅は岳南電車の起点でもあり、JRから岳南電車への乗り換えもスムーズです。車で訪れる場合は、東名高速道路の富士インターチェンジや新東名高速道路の新富士インターチェンジが最寄りになります。

レンタサイクルを利用したい場合、富士山観光交流ビューローを通じて、電動アシスト付きのeバイクを市内三箇所(富士川楽座、富士市サイクルステーション「ふじクル」、JR新富士駅観光案内所)で借りられます。車種はパナソニック製の「グリッター」とメリダ製の「e-PASSPORT400 EQ」の二種類が用意されており、グリッターは三時間以内が七百五十円、三時間を超える場合が千五百円、e-PASSPORT400 EQは三時間以内が千五百円、三時間を超える場合が三千円です(料金は変更される場合があるため、利用前に公式サイトでの確認をおすすめします)。新富士駅観光案内所の受付時間は八時三十分から十七時十五分まで(年末年始を除く)です。

岳南電車を利用する場合は、「全線一日フリー乗車券」を活用すると、途中下車をしながら沿線を回るスタイルのポタリングとも相性がよくなります。自転車を電車に持ち込みたい場合は、事前に岳南電車の公式サイトや駅窓口で輪行・持ち込みに関するルールを確認しておくことをおすすめします。

まとめ

静岡県富士市の吉原宿・岳南電車沿線・吉原商店街エリアは、江戸時代の東海道の歴史、昭和の商店街文化、そしてローカル私鉄という三つの異なる時代の魅力が、自転車でゆったりと回れる範囲に詰まった、ポタリングにうってつけのエリアです。左富士神社に代表される東海道の史跡を巡り、昭和レトロなアーケードが残る吉原商店街でつけナポリタンを味わい、全駅から富士山が見える岳南電車の沿線を走り抜けます。観光地然としていない、生活のそばにある富士山と歴史の風景こそが、このエリアの一番の魅力だといえるでしょう。高低差の少ない平坦な道が多く、自転車初心者や家族連れでも無理なく楽しめる点も嬉しいポイントです。次の休日には、レンタサイクルや輪行袋を用意して、富士市のこのコンパクトで奥深いエリアをゆっくりとポタリングしてみましょう。

最後に、実際に走る際に押さえておきたいポイントを簡単に整理しておきます。まず服装や装備については、平坦な道が中心とはいえ、旧東海道沿いの史跡や商店街のアーケード内は自転車を押して歩く場面も多いため、歩きやすい靴で臨むのがよいでしょう。夏場は富士山周辺特有の強い日差しにさらされる区間もあるため、帽子や日焼け対策、こまめな水分補給を心がけたいところです。冬場は空気が澄み、富士山がもっとも美しく見える季節でもありますが、朝晩は冷え込むため、防寒着を用意しておくと安心です。

また、吉原商店街やその周辺の史跡は生活道路や住宅街に隣接している場所も多く、地元の人々の日常の営みの中にある観光資源であることを忘れず、走行時は歩行者や地域の生活に配慮したマナーを心がけたいものです。祭りの開催日程や商店街の定休日、岳南電車の運行ダイヤなどは変更されることがあるため、訪問前には各施設・団体の公式サイトなどで最新情報を確認しておくことをおすすめします。歴史、鉄道、食、そして富士山という多面的な魅力を持つ富士市の吉原エリアは、一度訪れるとまた季節を変えて走りたくなる、奥行きのあるポタリングスポットです。

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