千葉県佐倉市のひよどり坂と武家屋敷通りは、江戸時代の城下町の姿をほぼそのまま残しており、自転車でのんびり巡るポタリングの人気スポットになっています。東京駅から佐倉駅まで電車で約1時間という近さも魅力で、竹林に囲まれた坂道、江戸後期の武家屋敷、佐倉城址公園などを、レンタサイクルを使って半日から1日で効率よく回ることができます。この記事では、佐倉武家屋敷やひよどり坂の見どころ、レンタサイクルの料金やコース、周辺のグルメ情報まで、佐倉でポタリングを楽しむために知っておきたい情報をまとめて紹介します。

ポタリングは目的地を決めずに気分でのんびり走る自転車散歩
ポタリングとは、目的地を特に決めず、その時の気分や体調に合わせて自転車で散策することを指します。のんびりする、ぶらつくという意味の英語「potter」に、現在分詞をつくる接尾辞「ing」をつけた和製英語といわれています。自転車に乗って散歩するような感覚で楽しむのがポイントで、「ポタ」と略されたり「ゆるポタ」と呼ばれたりすることもあります。ポタリングが比較的短い距離や中距離をゆったり走るのに対して、サイクリングは長距離を走ることも含む点で違いがあります。
佐倉の城下町は、坂道はあるものの見どころが徒歩圏内に集まっており、がんばりすぎずマイペースに走れるポタリングとの相性が良いエリアです。体力に自信がない人は電動アシスト自転車を選べば、坂道の多い城下町エリアでも気軽に遠出を楽しめます。
佐倉城下町は堀田氏11万石の町として発展した歴史を持つ
佐倉城下町は、もともと戦国大名の千葉氏が築城に着手しながら未完成のまま終わった土地に、慶長16年(1611年)、土井利勝が城を完成させたことで本格的な歴史が始まりました。以後、佐倉城は江戸の東を守る要衝として重視され、堀田氏をはじめとする歴代藩主のもとで佐倉藩は発展し、徳川幕府の老中を何人も輩出しています。城下には武家地と町人地が整然と配置され、その町割りの名残は今も随所に見られます。
城下町の総鎮守として長く信仰を集めてきたのが麻賀多神社です。創建時期ははっきりしていませんが、江戸時代には佐倉城の守護神、佐倉藩の総鎮守として位置づけられていました。現在の社殿は天保14年(1843年)に藩主・堀田正睦が再建したものです。佐倉は「北総四都市江戸紀行」として成田、佐原、銚子とともに日本遺産にも認定されており、江戸時代の風情を伝える町として評価されています。
坂の多い地形も佐倉の特徴で、武家屋敷が並ぶ台地とその周囲の低地を結ぶ坂道がいくつも存在します。中でもひよどり坂は竹林に囲まれた美しい小径として人気が高く、時代劇のロケ地としても使われてきました。こうした坂や竹林、武家屋敷の連なる町並みは徒歩でも楽しめますが、城址公園や周辺スポットまで回るなら、自転車を使ったポタリングの方が効率的です。
ひよどり坂は江戸時代の姿をほぼ変えていない竹林の小径
ひよどり坂は、武家屋敷通りに隣接する古い坂道で、江戸時代からほとんど姿を変えていないといわれる竹林に囲まれています。ゆるやかにカーブを描く坂道には、四つ目垣、目隠し垣、鉄砲垣といった伝統的な竹垣が配置されており、侍が今にも現れそうな雰囲気を漂わせています。竹林を抜ける風や木漏れ日が心地よく、四季を通じて観光客や写真愛好家が訪れる、佐倉を代表する景観スポットのひとつです。サムライの古径という愛称でも親しまれ、日本遺産のストーリーを構成する主要スポットとしても紹介されています。
このひよどり坂は佐倉城址公園と武家屋敷通りをつなぐ位置にあり、自転車を押しながら通り抜けることもできます。坂の途中には手すりや足元の石畳が整備されており、季節を問わず歩きやすいのも特徴です。新緑の季節や、竹林が強い日差しを遮ってくれる夏場は、涼を感じながら歩ける貴重なスポットになります。
佐倉武家屋敷は3棟現存し入館料は250円から見学できる
ひよどり坂に隣接する武家屋敷通りには、江戸時代後期に建てられた武家屋敷が3棟現存し、一般公開されています。いずれも佐倉藩士の屋敷であった建物で、当時の武家の暮らしぶりを今に伝える文化財です。
旧河原家住宅は千葉県指定文化財で、3棟の中では規模が大きく、佐倉藩の中級武士の住まいの様子をよく伝えています。旧但馬家住宅は佐倉市指定文化財で、質実な佇まいの中に武家屋敷らしい造りの工夫が見られます。旧武居家住宅は3棟のうち最も小規模で、下級武士の生活を想像させる造りです。いずれも江戸時代後期の建築で、屋敷内には当時の生活道具や調度品も展示されており、質素ながらも凛とした武家の暮らしぶりがうかがえます。
見学にかかる料金や時間は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 入館料(武家屋敷のみ、3棟共通) | 一般250円、団体170円、学生120円、団体80円 |
| 三館共通券(武家屋敷・旧堀田邸・佐倉順天堂記念館) | 一般600円、団体420円、学生300円、団体210円 |
| 営業時間 | 9時00分から17時00分(入館は16時30分まで) |
| 休業日 | 12月28日から1月4日 |
| アクセス | JR佐倉駅から徒歩約10分、京成佐倉駅から徒歩約20分 |
三館共通券を使えば、幕末の佐倉藩主・堀田正睦の邸宅である旧堀田邸や、日本の近代医学の礎を築いた佐藤泰然が開いた佐倉順天堂記念館もあわせて見学でき、より深く佐倉の歴史を学べます。武家屋敷通りと旧堀田邸は距離が離れているため、この移動には自転車が向いています。
佐倉城址公園には天守閣跡と樹齢400年の巨木が残る
武家屋敷通りから自転車で少し足を延ばすと、佐倉城址公園にたどり着きます。佐倉城は江戸時代に堀田氏が居城とした城で、明治維新後に城郭建造物は取り壊されましたが、天守閣跡や空堀、土塁などの遺構は今も公園内に良好な状態で残されており、佐倉市の史跡に指定されています。
園内で目を引くのが、天守閣跡脇にそびえる高さ約10メートルの夫婦モッコクです。樹齢約400年といわれるツバキ科の常緑樹で、千葉県指定の天然記念物になっています。歴史に興味がある人だけでなく、巨木を眺めるのが好きな人にとっても見応えのあるスポットです。
春は桜の名所としても知られ、3月下旬になると本丸跡や馬出し空堀周辺、出丸跡の水面に映えるソメイヨシノなど、江戸時代から名桜と称される13品種を含む約50品種、約1100本の桜が咲きます。花見の時期は城址公園の桜並木を自転車で走り抜けられる、ポタリングに向いたシーズンでもあります。
公園の東端には佐倉城址公園管理センターがあり、佐倉城に関する模型や古写真、出土遺物が展示されています。公園の二の丸跡には、日本の考古、歴史、民俗に関する資料を収集・展示する国立歴史民俗博物館が立地しています。1983年に開館した国立の歴史博物館で、原始・古代から近現代までの日本の歴史と文化を紹介する常設展示のほか企画展示も充実しており、じっくり見学すると半日近くかかる見応えがあります。
くらしの植物苑とさくら庭園は入場無料で休憩に向く
国立歴史民俗博物館の南東、旧佐倉城の一角には、くらしの植物苑という植物園があります。江戸時代に栄えた武家屋敷の庭先から山野にいたる景観を主として、生活文化を支えてきた植物を系統的に植栽しているのが特徴で、染める、食べる、治す、織る・漉く、道具をつくる、塗る・燃やすという6つのテーマに沿って育成と研究を行った成果を展示しています。年間を通じて季節に合わせた伝統植物の企画展示も行われており、春は桜草、夏は朝顔、秋は菊、冬はサザンカと、四季それぞれの表情を楽しめます。
旧堀田邸の敷地内には、さくら庭園と呼ばれる芝生の庭園も広がっています。国の指定名勝になっている庭園で、大きな石造りの灯籠が目を引き、桜や梅などの木々も植えられ、四季折々の景観を楽しめます。旧堀田邸の建物内部の見学は有料ですが、さくら庭園自体は無料で入場できるため、ポタリングの休憩スポットとして立ち寄りやすいのも利点です。
佐倉のレンタサイクルは1日500円で電動アシストは1000円
佐倉市内は見どころが点在しており、徒歩だけで回ろうとすると移動に時間がかかります。そこで活用したいのがレンタサイクルです。佐倉市のレンタサイクルは、佐倉市観光協会、JR佐倉駅前観光情報センター、佐倉ふるさと広場、サンサンサイクル(京成臼井駅)など市内5箇所で展開されており、これら複数の貸出拠点であれば、借りた場所と異なる場所での返却も可能です。
料金は普通自転車が1日1台500円と手頃です。坂道の多い城下町エリアを走ることを考えると、体力に自信のない人や家族連れ、年配の方には電動アシスト自転車(1日1000円)がおすすめです。ひよどり坂周辺や武家屋敷通りへ向かう道には多少の高低差があるため、電動アシストがあれば体力を温存しながら周遊できます。
佐倉市観光協会では、目的やレベルに応じて選べる2種類のサイクリングマップを用意しています。城下町周遊コースは、佐倉駅周辺の城下町エリアをぐるりと巡るコースで、一部に坂道はあるものの、武家屋敷通りやひよどり坂、佐倉城址公園、旧堀田邸など立ち寄りスポットが多く、街歩き感覚でゆったり楽しめます。サイクリング初心者や観光目的の人に向いたコースです。西印旛沼周遊コースは、佐倉ふるさと広場周辺の印旛沼沿いを走るコースで、田園風景や水辺の景色を楽しめ、城下町コースとは違う自然豊かな雰囲気を味わえます。このほか、佐倉から成田方面へ足を延ばす、より距離のある内陸サイクリングコースを紹介するメディアもあり、脚力に自信のある人は佐倉・成田エリアを横断するロングライドに挑戦することもできます。
ポタリングのモデルコースは半日から1日で武家屋敷から城址公園まで巡れる
ポタリングのモデルコースとしては、まずJR佐倉駅または京成佐倉駅でレンタサイクルを借り、武家屋敷通りへ向かい、旧河原家住宅、旧但馬家住宅、旧武居家住宅を見学します。続いてひよどり坂の竹林を抜けて佐倉城址公園へ自転車を進め、天守閣跡や夫婦モッコク、季節によっては桜並木を眺めながら国立歴史民俗博物館に立ち寄ります。時間に余裕があれば旧堀田邸や佐倉順天堂記念館、さらに足を延ばして佐倉ふるさと広場のオランダ風車まで周遊するコースが定番です。半日から1日あれば無理なく巡ることができ、都心から日帰りでも十分に楽しめます。
印旛沼のほとりに位置する佐倉ふるさと広場は、オランダ風車をシンボルとした花の名所です。内部見学もできるオランダ風車リーフデを中心に、オランダ庭園やシェアガーデン、休憩所と売店を備えたオランダ風建物の佐蘭花などから構成されており、チューリップやコスモスなど季節ごとの花が咲きます。毎年4月に開催される佐倉チューリップフェスタでは、約100種類、60万本のチューリップが畑一面に咲き、オランダ風車と花畑が織りなす風景を目当てに多くの観光客が訪れます。ただし佐倉ふるさと広場はリニューアル工事のため、2026年度から2028年度末まで休園が予定されているので、訪問を計画する際は事前に最新の開園状況を確認しておく必要があります。
また、幕末に活躍した最後の佐倉藩主・堀田正睦の邸宅である旧堀田邸や、日本近代医学の先駆けとなった蘭方医・佐藤泰然が開いた順天堂を記念する佐倉順天堂記念館も、武家屋敷とあわせて訪れたい歴史スポットです。前述の三館共通入館券でまとめて見学できるため、時間と予算を効率よく使いたい人にはこの共通券が向いています。
佐倉順天堂は西の長崎、東の佐倉と呼ばれた蘭方医学の拠点だった
佐倉順天堂は、天保14年(1843年)に、長崎で蘭方医学を修めた佐藤泰然が、佐倉藩主・堀田正睦の招きを受けて佐倉に移り、蘭医学塾兼診療所として開設したことに始まります。当時は西の長崎、東の佐倉と称されるほど西洋医学の一大拠点として知られ、後に二代目堂主となった佐藤尚中をはじめ、日本近代医学をリードする多くの人材をこの地から輩出しました。西洋医学による治療と医学生の教育が同時に行われていた点も特徴です。
現存する建物は安政5年(1858年)の建築で、その後増築されたものが今に伝わっています。1975年に旧佐倉順天堂として千葉県指定文化財(史跡)に指定され、1985年から佐倉順天堂記念館として一般公開されるようになりました。記念館内では、当時実際に使用されていた医学書や医療器具が展示されており、江戸末期の最先端医療の姿を知ることができます。順天堂大学のルーツとしても知られ、医学史に関心のある人には見逃せないスポットです。
佐倉の秋祭りは江戸中期から300年以上続く伝統行事
佐倉の歴史と文化を語るうえで欠かせないのが、毎年10月に麻賀多神社をはじめとする複数の神社が合同で開催する佐倉の秋祭りです。江戸時代中期から300年以上続くとされる祭りで、古今佐倉真砂子という中期の史料にも記述が残るほど、古くから城下町の一大行事として親しまれてきました。祭りの期間中は20台以上の山車や御輿、御神酒所と呼ばれる踊り台が城下町を練り歩き、町全体が賑わいます。麻賀多神社の御輿は千葉県内最大級とされ、掛け声とともに担がれる様子は見応えがあります。
明治初期には、江戸の日本橋界隈から絢爛豪華な人形山車が7台購入され、当時「佐倉新町、江戸をしのぐ」といわれるほどの賑わいを見せたと伝えられています。現在残る山車は江戸型三層構造で、明治12年頃に購入された人形とともに佐倉市の指定文化財になっています。武家屋敷やひよどり坂を巡るポタリングに秋祭りの時期を合わせれば、江戸時代から続く城下町の熱気を感じられます。開催日程は年によって変わるため、訪問前に公式サイトなどで最新情報を確認しておくと安心です。
佐倉市観光協会では、着物や侍衣装を着て城下町を歩く体験イベントも開催しています。侍の衣装でひよどり坂や武家屋敷などを巡るサムライウォークのほか、着物姿で城下町を散策するきものウォークといった企画があり、江戸時代の雰囲気を味わいたい人に人気です。こうした体験イベントは開催時期や実施方法が変わる場合があるため、訪問前に佐倉市観光協会の公式情報を確認してください。
城下町グルメは房州屋の蕎麦と木村屋の甘味が定番
ポタリングの合間に立ち寄りたいのが、城下町ならではのグルメです。佐倉は江戸時代を通じて堀田氏11万石の城下町として栄えた歴史があり、その食文化も日本遺産の構成要素として位置づけられています。武家屋敷通りに近い新町通り沿いには、老舗の和菓子屋である蔵六餅本舗木村屋があり、佐倉銘菓を目当てに立ち寄る観光客も多いです。佐倉城址からスタートして武家屋敷通りを歩き、老舗蕎麦店の房州屋で昼食を取り、木村屋で甘味を休憩がてらテイクアウトするのが、佐倉散策の定番の楽しみ方として紹介されています。
このほか、100年以上の歴史を持つ古民家を活用した和カフェもあり、無農薬、無化学肥料栽培の食材を使ったマクロビオティックメニューや自家製甘味を提供する店もあります。武家屋敷やひよどり坂の落ち着いた雰囲気に合わせて、こうした古民家カフェで一息つくのもポタリングの楽しみ方のひとつです。サイクリングで体を動かした後に、地元の老舗が守り続けてきた味を楽しめば、佐倉の歴史と文化をより深く味わえます。
佐倉へのアクセスは東京駅から約1時間で日帰りできる
佐倉市へのアクセスは、東京駅からJR総武本線快速で佐倉駅まで約1時間、京成上野駅から京成本線で京成佐倉駅まで約1時間ほどで、都内から日帰りで訪れやすい立地です。武家屋敷通りへはJR佐倉駅から徒歩約10分、京成佐倉駅から徒歩約20分ですが、レンタサイクルを利用すれば体力を温存しながら周辺の見どころを効率よく回ることができます。
佐倉は、江戸時代の城下町の面影を残しながらも都心からのアクセスが良く、気軽に訪れられる町です。竹林に囲まれたひよどり坂の静かな佇まい、江戸後期の武家屋敷が伝える侍の暮らし、城址公園の歴史と桜、印旛沼沿いの開放的な自然など、多彩な魅力がコンパクトなエリアに詰まっています。これらをレンタサイクルでつなぎながら巡るポタリングは、徒歩だけでは味わえない効率と自由度を兼ね備えた、佐倉観光の楽しみ方としておすすめできます。
歴史散策が好きな人はもちろん、写真撮影を楽しみたい人、自然の中でリフレッシュしたい人、家族での日帰り旅行を計画している人まで、幅広い層が満足できる旅先です。季節を変えて訪れれば、竹林の緑、桜の淡いピンク、武家屋敷の重厚な佇まいなど、それぞれ違う表情を楽しめます。次の休日は、レンタサイクルを借りて佐倉の城下町をポタリングしてみてはどうでしょうか。








