臼杵の二王座歴史の道をポタリングで巡る城下町コース

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大分県臼杵市の城下町には、二王座歴史の道という石畳の坂道が残っています。ここを自転車でゆっくりめぐるポタリングは、距離1.6キロほどの歴史地区から国宝臼杵石仏まで足を延ばせる、九州でも指折りの町なか観光コースです。江戸時代の白壁や切通しを間近に見ながら走れる点が、徒歩や車での観光とは違う魅力になっています。

大分市や別府市に比べると知名度は控えめですが、狭い路地と静かな時間が残っているぶん、じっくり町を味わいたい旅行者に向いています。この記事では、二王座歴史の道の成り立ちから、実際に走れるモデルコース、レンタサイクルの借り方、休憩に使える味噌ソフトクリームやカフェの情報までまとめます。

目次

二王座歴史の道は阿蘇噴火の凝灰岩を切り開いた石畳の坂道

二王座歴史の道は、距離約1.6キロメートル、歩けば1時間ほどの城下町エリアです。坂道と石畳が続く地形は、約9万年前の阿蘇山噴火による火砕流が固まってできた阿蘇溶結凝灰岩の丘を、そのまま切り開いてつくられたものだそうです。

道の両側に岩壁がそそり立つ「切通し」と呼ばれる景観がこのエリアの特徴で、なかでも旧真光寺前の切通しは、平成5年(1993年)11月に国の都市景観100選に選ばれています。地名の由来は、かつてこの一帯に仁王像を安置した寺があったからという説があり、徳川3代将軍・家光の乳母だった春日局にゆかりの地とも伝えられています。

白壁の土蔵、高い石垣、武家屋敷の長屋門、宗派の違う寺院が軒を連ねる寺町の景観が狭いエリアに凝縮されていて、坂を上るたびに違う角度の町並みが見えてきます。車の通行にはそもそも向かない道幅なので、静かな時間の中を歩く、あるいは自転車でゆっくり流すのが、このエリアには合っています。

臼杵城下町は大友宗麟の海城から稲葉氏15代の統治で形づくられた

臼杵の町の原型を作ったのは、戦国時代にキリシタン大名として知られた大友宗麟です。永禄5年(1562年)ごろ、それまでの拠点だった府内(現在の大分市)から、海に浮かぶ丹生島に城を移しました。三方を海に囲まれた天然の要害で、貿易港の機能もあわせ持つ海城だったといいます。

大友氏のあと、福原直高、太田一吉と城主が交代し、慶長5年(1600年)からは美濃国(現在の岐阜県)出身の稲葉氏が入封しました。稲葉氏は明治維新の廃藩置県まで15代にわたって臼杵藩五万石を治め続け、この長い統治のあいだに武家屋敷や町人町、寺町の町割りが整えられていきました。二王座が寺町として発展したのも、この時期のことです。

臼杵城そのものは明治の廃城令で建物の大半が取り壊され、現在は石垣や堀の一部、復元された門が残る公園として整備されています。城下町のほうは大規模な戦災を免れているため、江戸期の町割りと建物が比較的よく残っていて、今も歩いて、あるいは自転車で当時の空気を感じられる状態になっています。

臼杵城址の石垣にはキリシタン大名の痕跡が残っている

臼杵城の石垣の一部には、アルファベットに似た文字が刻まれたものがあると伝えられています。城内には礼拝所が、城下にはキリシタンの修練所が置かれていたとも言われていて、大友宗麟が南蛮文化を積極的に取り入れていた時代の名残がうかがえます。

城下町を歩くだけだと素通りしがちな臼杵城址ですが、ポタリングの起点や締めくくりとして立ち寄ると、貿易とキリスト教布教の時代の空気を感じられる場所になっています。

国宝臼杵石仏は61体、古園石仏の大日如来像が見どころの中心

臼杵石仏は、街なかから少し離れた山あいにある磨崖仏群で、ポタリングコースの折り返し地点としてよく目指されるスポットです。平安時代後期から鎌倉時代にかけて彫刻されたと考えられていて、ホキ石仏第一群、ホキ石仏第二群、山王山石仏、古園石仏の4つに分かれ、総数は60体を超えます。

このうち61体が平成7年(1995年)6月に国宝指定を受けました。磨崖仏として全国初、彫刻としても九州で初めての国宝指定だったといいます。ホキ石仏第一群は如来像や菩薩像が横一列に並ぶ規模の大きさが見どころで、ホキ石仏第二群には優美な阿弥陀如来像が安置されています。山王山石仏は柔和な表情の三尊像です。

中心となるのは古園石仏の大日如来像で、かつて頭部が胴体から落下し、長らく下に置かれた状態が続いていたそうですが、平成5年からの保存修理事業で本来の位置に戻され、現在は端正な姿で迎えてくれます。石仏群のそばには満月寺という寺院があり、境内北側にはユーモラスな表情の仁王像とともに、基壇から高さ約4.2メートルの日吉塔が建っています。時間に余裕があれば、こちらもあわせて見ておきたいところです。

大分県には全国に残る磨崖仏のうちおよそ7割が現存していて、そのなかでも国東半島には数多くの磨崖仏が集中しているそうです。臼杵石仏は単体でも国宝に指定されるだけの価値がありますが、大分県全体で見ると、石仏文化が特に根づいた地域の代表格という位置づけにもなっています。城下町のポタリングから足を延ばして石仏を訪ねる旅は、こうした大分県ならではの信仰の厚みに触れる時間にもなります。

ポタリングのモデルコースは総距離12.5キロ、所要2時間30分

臼杵市が案内している代表的なポタリングコースは、城下町のまちなかから国宝臼杵石仏までを結ぶルートです。総距離は約12.5キロメートル、所要時間の目安は約2時間30分、消費カロリーの目安は312キロカロリーとされています。徒歩なら半日以上かかる範囲を、休憩を挟みながらでも半日弱で回れる計算です。

主なスポットは、龍原寺三重塔、国宝臼杵石仏、臼杵市歴史資料館、そしてここまで紹介してきた二王座歴史の道の4か所です。臼杵市観光協会は「城下町臼杵を巡る定番コース」など、目的や体力に応じて選べる複数のモデルコースも公開していて、石仏方面まで足を延ばす本格派から、城下町中心部だけを回る短時間コースまで選べます。

コース距離所要時間目安
城下町〜国宝臼杵石仏約12.5km約2時間30分
二王座歴史の道(単体)約1.6km約1時間(徒歩)

稲葉家別邸と龍原寺三重塔、二王座の寺院群を巡る

龍原寺三重塔は、江戸時代建立と伝わる木造三重塔です。九州には江戸期の本格的な木造三重塔が2つしかなく、そのひとつがこの龍原寺境内にあります。塔の高さと装飾の細かさは、写真映えするスポットとしても人気です。

稲葉家別邸は、廃藩置県で東京に移住した旧臼杵藩主・稲葉家が、臼杵滞在時の拠点として明治35年(1902年)に建てた邸宅です。杉や檜を使った式台付きの玄関、書院造りの奥座敷を備え、国の登録有形文化財に指定されています。隣接する稲葉家下屋敷は上級武士の住宅で、あわせて見学すると江戸から明治にかけての武家の暮らしぶりがより立体的にわかります。

臼杵出身の作家・野上弥生子の生家を活用した野上弥生子文学記念館も、城下町エリアの見どころのひとつです。二王座周辺には宗派の異なる寺院が軒を連ねていて、これほど狭いエリアに多くの寺院が集まっているのは全国的にも珍しいとされています。山門や本堂の意匠を見比べながら走るのも、このエリアならではの楽しみ方です。

撮影スポットは旧真光寺の二階、休憩は古民家カフェで

二王座歴史の道の中でも、旧真光寺の二階からの眺めは、狭い路地と白壁、石垣が織りなす景観を見下ろせる撮影スポットとして知られています。自転車を降りて階段を上ると、地上を走っているだけでは気づきにくい町並みの奥行きが見えてきます。

城下町エリアには古民家を改装したカフェやダイニングも点在していて、代表例が「凡と凛」という古民家ダイニングカフェです。趣のある建物でランチやスイーツを楽しめる店で、ポタリングの合間の休憩スポットとして使えます。

味噌ソフトクリームと臼杵ふぐ、味噌醤油の町の名物

臼杵は城下町であると同時に、古くから発酵食品づくりが盛んな味噌・醤油の町でもあります。そのルーツは、慶長5年(1600年)創業と伝わる九州最古の味噌・醤油屋、カニ醤油合資会社まで遡るそうです。ほかにも「フンドーキン醤油」「富士甚醤油」といった九州で名の知られたメーカーが本拠を置いていて、町のあちこちに蔵や店舗の趣ある建物が残っています。

ポタリングの休憩に食べたいのが味噌ソフトクリームです。店によって味噌のクランチをのせたものや味噌ソースをかけたものがあり、価格帯はおよそ300円から500円程度です。カニ醤油の直営店で味わえるみそソフトクリームも臼杵名物のひとつです。城下町散策や自転車移動で火照った体を、甘じょっぱい味噌ソフトで休ませるのは、臼杵ポタリングらしい過ごし方だと思います。

冬場には、豊後水道の荒波で育った臼杵ふぐが名物として知られ、多くの料理店で味わえます。季節の味覚に合わせて旅程を組むのもおすすめです。

フンドーキン醤油とカニ醤油、蔵見学もコースに組み込める

臼杵では実際に蔵や工場を見学できる体験プログラムも用意されています。フンドーキン醤油では醤油工場、味噌工場、ドレッシング工場それぞれの見学が可能で、醤油工場では世界一の木樽と呼ばれる巨大な仕込み樽、味噌工場では四万十杉の味噌樽、ドレッシング工場では醤油醸造メーカーならではの生揚げ醤油を使ったドレッシングづくりの様子を間近で見学できます。

カニ醤油は城下町の八町大路に社屋を構える、九州で最も古い老舗のひとつです。社屋内の工場では、麹づくりなどの作業風景を窓越しに見学できます。前述のみそソフトクリームも、この鑰屋の直営店で味わえます。こうした醤油蔵・味噌蔵は城下町エリアや観光交流プラザから遠くない場所にあることが多く、二王座歴史の道や龍原寺三重塔を巡るコースに無理なく組み込めます。

レンタサイクルは無料、電動アシストは1回300円

臼杵の町なかポタリングを支えているのが、市が用意しているレンタサイクルです。主な貸出拠点は臼杵駅からほど近い臼杵市観光交流プラザで、観光案内や特産品紹介とあわせて、目的別のおすすめコースを載せたパンフレットも入手できます。臼杵駅観光案内所でも取り扱いがあるので、駅に着いてすぐ自転車を借りて城下町へ向かうことも可能です。

利用時間は9時から16時30分まで、最終受付は15時30分です。通常タイプの自転車は無料で借りられます。坂道の多い城下町エリアを楽に回りたい場合は、1回300円の電動アシスト自転車がおすすめです。二王座歴史の道をはじめ上り下りの坂道が多いエリアなので、体力に自信がない人は電動アシストを選んだほうが快適に走れます。なお雨天時や雨天が予想される日は貸し出しが中止される場合があるので、事前に天候を確認しておくと安心です。

自転車の種類料金向いている人
通常タイプ無料短距離・平坦重視で回りたい人
電動アシスト1回300円坂道の多いコースを楽に回りたい人

季節ごとのポタリング、春の桜と7月の臼杵祇園まつり

臼杵の城下町ポタリングは季節によって表情が変わります。春には臼杵城跡の周辺でおよそ800本の桜が咲き、石垣と桜の組み合わせが地元でも人気の花見スポットになります。桜のシーズンに城址から城下町、二王座歴史の道へと自転車で巡れば、満開の桜と歴史ある町並みを一度に楽しめます。

夏は、寛永20年(1643年)から続くとされる臼杵最大の夏祭り、臼杵祇園まつりの季節です。例年7月中旬に、臼杵の辻周辺から八坂神社、御旅所にかけての一帯で山車や神輿の曳出・渡御・還御・曳込が行われ、城下町全体が祭り一色になります。普段は静かな路地に活気があふれる、また違った顔を見られる時期です。

秋から冬は空気が澄んで、石畳や白壁の陰影がくっきり際立ちます。じっくり町並みを眺めながら走りたいなら、この時期が向いているかもしれません。冬は臼杵ふぐの旬でもあるので、サイクリングのあとに料理店へ足を運ぶ旅程もおすすめです。

ポタリングの注意点は石畳の滑りやすさと歩行者優先

二王座歴史の道は道幅が狭く、石畳や急な坂道が続く区間があります。観光客や地元住民とすれ違う場面も多いので、スピードを控えめにして歩行者優先で走ることが大切です。特に狭い路地では、自転車を降りて押し歩きに切り替えたほうが安全な場面もあります。

石畳の路面は雨天や雨上がりの直後に滑りやすくなるので注意が必要です。晴天の日に訪れれば、白壁と石畳のコントラストがより美しく見えて、写真撮影にも向いた条件がそろいます。服装は坂道での立ち漕ぎや押し歩きを想定して、動きやすいものを選んでください。夏場は日差しを遮るものが少ない区間もあるため、帽子や日焼け対策、こまめな水分補給を忘れないようにしましょう。

臼杵石仏まで足を延ばす場合は、往復の距離と体力を考えて電動アシスト自転車の利用を検討したほうがよさそうです。城下町から石仏までのコースは片道でも一定の距離があり、平坦ではない区間も含まれます。

アクセスはJR臼杵駅から徒歩10分、フェリーで四国からも

臼杵市へは、JR日豊本線を利用し、大分駅から特急で30分前後、普通列車でも1時間程度で臼杵駅に到着します。臼杵駅から二王座歴史の道までは徒歩でおよそ10分、自転車ならさらに短時間です。福岡方面からは特急を乗り継ぐ形になりますが、九州各地から比較的訪れやすい立地です。

車の場合は東九州自動車道の臼杵インターチェンジが最寄りで、城下町周辺には市営の駐車場も整備されています。ただし二王座歴史の道をはじめ城下町中心部は道幅が狭く、車の乗り入れに向かない区間が多いため、駐車場に車を停めてから徒歩かレンタサイクルで町なかを回るスタイルが基本になります。

フェリーを使う場合、大分港からのアクセスに加えて、臼杵港には四国の八幡浜港(愛媛県)を結ぶ航路もあります。四国からフェリーで臼杵港に着き、そのまま城下町までポタリングを楽しむルートも、旅に変化をつけたい人には選択肢になりそうです。

城下町を自転車で回る手法は全国の観光地でも広がっている

道幅の狭い城下町を自転車で回るスタイルは、臼杵に限った話ではありません。山口県萩市では、江戸時代の町割りがそのまま残る菊屋横町周辺から萩城跡指月公園までの約2キロを、レンタサイクルで巡る観光が定着しています。京都府舞鶴市の城下町エリアでも、レンタサイクルで周遊するのにちょうどよい距離だとされていて、狭い街路をめぐるには自転車の効率のよさが活かされているようです。

国も自転車観光を後押ししていて、2021年5月に策定された第2次自転車活用推進計画では、サイクルツーリズムの推進による観光立国の実現が掲げられています。日時や期間を決めずに年間を通じて集客できる点が、自治体にとってのサイクルツーリズムの利点とされています。臼杵の二王座歴史の道も、こうした全国的な流れのなかで、城下町とサイクリングの相性のよさを体現しているコースのひとつと言えそうです。

大分県はサイクリング観光の受け入れ整備を県全体で進めている

臼杵のポタリングが走りやすい背景には、大分県全体でのサイクリング観光の推進があります。大分県は2019年12月に自転車活用推進計画を策定し、地域の実情に応じて自転車の活用を総合的かつ計画的に進める方針を示しました。県のサイクリング情報サイト「Cycling OITA」では、九重連山や別府湾沿い、1300年の歴史がある国東半島など、県内各地のコースが紹介されています。

国東半島サイクリングロードや、旧佐賀関鉄道の廃線跡を利用した佐賀関サイクリングロードのように、廃線や海沿いを活用したコース整備が進んでいる地域もあり、臼杵の城下町ポタリングもこうした県全体の自転車観光の流れのなかに位置づけられています。歴史的な町並みを自転車で回れる環境が整っているのは、こうした継続的な取り組みの延長線上にあると考えてよさそうです。

二王座歴史の道は自分のペースで歴史を味わいたい人向きのコース

臼杵の二王座歴史の道と城下町エリアは、大友宗麟の築城から稲葉氏五万石の統治を経て、江戸時代の面影を色濃く残してきた町並みです。阿蘇噴火が生んだ凝灰岩の丘を切り開いた石畳と切通し、白壁の土蔵や武家屋敷、宗派を超えて建ち並ぶ寺院群が、狭いエリアに凝縮されています。徒歩でも十分に魅力を味わえますが、ポタリングを組み合わせれば、より広い範囲を無理のないペースで回れます。

臼杵駅を起点に、無料または電動アシストのレンタサイクルを使いながら、二王座歴史の道、稲葉家別邸、龍原寺三重塔、国宝臼杵石仏までを巡るコースは、歴史と食文化を一度に楽しめる旅の形です。坂道と石畳の多い地形を踏まえ、時には自転車を降りて押し歩きも交えながら、江戸時代から続く城下町の空気を自分のペースで味わってみてください。

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