入谷朝顔市は、東京都台東区の入谷鬼子母神(真源寺)境内および言問通りで毎年7月上旬に開催される、江戸時代から続く日本最大級の朝顔市です。2026年は7月6日(月)から8日(水)までの3日間、午前5時から午後11時まで第78回入谷朝顔まつりが開催される予定で、約60軒の朝顔業者と100軒近い露天商が並び、毎年40万人もの来場者が訪れます。早朝の境内で色とりどりの朝顔を選び、その足で自転車に乗り換えて谷根千や上野、浅草へと足を延ばす下町ポタリングは、江戸の薫りと昭和の面影を一日で味わえる夏ならではの過ごし方です。
本記事では、入谷朝顔市の歴史と2026年の開催情報、入谷鬼子母神の見どころ、そして朝顔市を起点とした下町ポタリングの推奨コースを、訪問前に知っておきたいアクセスやマナーまで含めて詳しく解説します。早朝の朝顔市で江戸情緒を味わったあと、自転車で下町を巡る半日コースを想定している方にとって、この記事一本で旅の計画が立てられる内容となっています。

入谷朝顔市とは何か――江戸から続く夏の風物詩
入谷朝顔市とは、東京都台東区下谷の入谷鬼子母神(真源寺)境内と隣接する言問通りで開催される、日本最大級の朝顔の市のことです。毎年7月6日・7日・8日の3日間にわたって行われ、東京の夏の到来を告げる風物詩として広く親しまれています。
朝顔が日本に伝来したのは奈良時代で、当初は中国から薬として持ち込まれたと伝えられています。観賞用として広く親しまれるようになったのは江戸時代のことで、特に文化・文政期(1804年〜1830年)と嘉永・安政期(1848年〜1860年)に大きな朝顔ブームが起こりました。幕末にかけての品種改良は目覚ましく、約1200系統もの変化朝顔が生み出されたと伝えられています。
変化朝顔とは、突然変異した遺伝子が複合的に組み合わさることで花びらや葉の形が通常とは異なる形状になる朝顔のことで、「正木(まさき)」と「出物(でもの)」の2タイプに大別されます。江戸の人々はこの変化の妙を競い合い、木版の図譜類も多数出版されました。朝顔は単なる花ではなく、江戸人の美意識と探求心が結実した文化的産物だったのです。
入谷の朝顔が世に知られるようになったのも、まさにこの江戸時代末期のことでした。入谷の十数軒の植木屋が競って朝顔作りに取り組み、大輪や珍しい花を年々咲かせたことで、入谷は朝顔の名産地としてその名を馳せるようになりました。
一度途絶えた入谷朝顔市が復活した経緯
入谷朝顔市は、大正2年(1913年)に一度途絶えています。明治以降の都市化の波で植木屋が減少し、長く続いた市も維持できなくなったためです。それから35年後の昭和23年(1948年)、地元有志と下谷観光連盟が「世の中を少しでも明るくしたい」という思いのもと、江戸情緒豊かな夏の風物詩として入谷朝顔市を復活させました。
戦後の混乱期にあって、色とりどりの朝顔は人々の心に潤いと希望をもたらすものであったに違いありません。復活した朝顔市はその後も着実に規模を拡大し、今日では東京を代表する夏祭りのひとつとして、毎年40万人もの来場者が訪れる大イベントへと成長しています。
2026年の入谷朝顔まつり開催概要
2026年の入谷朝顔まつりは、第78回を迎えます。開催の基本情報を以下にまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開催日 | 2026年7月6日・7日・8日 |
| 開催時間 | 午前5時から午後11時まで |
| 会場 | 入谷鬼子母神(真源寺)境内および言問通り |
| 所在地 | 東京都台東区下谷1丁目12番16号 |
| 最寄り駅 | 東京メトロ日比谷線「入谷駅」1番出口から徒歩約1分 |
| 入場料 | 無料 |
| 朝顔の価格帯 | 500円〜5,000円程度 |
JR山手線・京浜東北線「鶯谷駅」南口からは徒歩7〜8分ほどで会場に到達できます。JR「上野駅」からも徒歩約20分、タクシーなら約5分の距離で、複数の路線からアクセスしやすい立地です。
入谷鬼子母神(真源寺)とはどんな寺院か
入谷鬼子母神は、正式には「真源寺」と称する法華宗本門流の寺院です。開山は光長寺第20世高運院日融上人で、万治2年(1659年)に創建されました。江戸三大鬼子母神のひとつに数えられており、「恐れ入谷の鬼子母神」という地口(語呂合わせ)で全国的に知られています。
この地口は「恐れ入りました」という謙遜の言葉と「入谷の鬼子母神」を掛け合わせたもので、江戸っ子らしい洒脱な言葉遊びの典型として今も語り継がれています。なお、鬼子母神は本来「鬼」の字の上の点がない字体を使用しますが、これは彼女が鬼から仏の道に帰依したことを示しているとされています。
鬼子母神の由来と御利益
鬼子母神(きしもじん)はもともと子供を食べる鬼女であったとされますが、釈迦に諭されて仏道に帰依し、安産・育児・子育ての守り神へと変化したと伝えられています。母親と子供を守る女神として、特に子宝祈願や安産祈願を願う人々から篤い信仰を受けてきました。
入谷鬼子母神では現在も安産・子宝に関する御利益を求めて多くの参拝者が訪れており、境内にはその歴史を物語る様々な文化財や仏像が安置されています。また、下谷七福神の一社として福禄寿を祀っており、正月の七福神めぐりのコースにも組み込まれています。
朝顔まつりの舞台としての真源寺
真源寺が広く知られるようになった理由は、何といっても朝顔まつりの存在が大きいといえます。まつり期間中は境内と言問通りが会場となり、約60軒もの朝顔業者が軒を連ねます。境内には鮮やかな朝顔の鉢が所狭しと並べられ、まるで色彩の洪水のような光景が広がります。
まつり開催中は境内に特設の縁日も設けられ、普段は静かな寺院が熱気あふれる空間へと変貌します。朝顔を買い求める人々の声、縁日の賑わい、そして朝の清々しい空気が交じり合う早朝の境内は、入谷朝顔まつり最大の見どころといえるでしょう。
朝顔市の楽しみ方とベストタイミング
入谷朝顔市を最大限に楽しむベストタイムは、午前5時の開場から午前10時頃までです。朝顔という名が示す通り、この花は朝に最も美しく咲き、昼近くになると花はしぼみ始めるためです。満開の朝顔の美しさを堪能したいなら、迷わず早朝に足を運ぶのが正解です。
「朝顔の市場は早起きが基本」というのは朝顔業者の間でよく言われることで、良い株を選ぶためにも早朝来場が圧倒的におすすめです。夏の早朝の涼しい時間帯に、色とりどりの朝顔に囲まれながら歩く体験は格別なものになります。一方で、夜の賑わいや屋台グルメを楽しむなら夕方から夜の時間帯も魅力的で、それぞれの目的に合わせて訪問時間を選ぶとよいでしょう。
入谷朝顔まつりの朝顔の値段と種類
入谷朝顔まつりで販売される朝顔の価格は、組合によってほぼ統一されているため、どの業者でも同じ種類の鉢なら同程度の価格となっています。価格と種類の目安は次の通りです。
| 鉢のタイプ | 価格帯 | 特徴 |
|---|---|---|
| 小さな鉢植え | 500円から | 手軽に持ち帰れるサイズ |
| あんどん作り | 1鉢2,000円前後 | 5本の支柱に蔓が絡まる人気の仕立て |
| 大型・希少品種 | 5,000円程度まで | 変化朝顔や珍しい色合いを含む |
最も人気があるのは「あんどん作り」と呼ばれる仕立て方の朝顔で、5本の支柱に蔓が絡まるように仕立てられた大ぶりの鉢が、多くの来場者に選ばれています。サイズや品種によって500円〜5,000円程度の幅があり、自宅のスペースや好みに合わせて選ぶことができます。
定番の青紫色の花から白、赤、ピンク、絞り模様まで、まるで競い合うように鮮やかな朝顔が並ぶ光景は圧巻です。江戸時代に育まれた変化朝顔の文化は現代の朝顔市にも受け継がれており、珍しい形の花びらや変わった色の朝顔が販売されることもあります。
言問通りの屋台と縁日グルメ
朝顔市の期間中は、言問通りに100軒近い露天商が立ち並びます。食べ物系の屋台はもちろん、ヨーヨー釣りや金魚すくいなど子供向けの遊戯系の屋台も充実しており、老若男女が楽しめるお祭りの雰囲気が漂います。
人気の食べ物としては、夏の定番であるかき氷がダントツの人気を誇ります。串もんじゃ、拉麺バーガー、浅草焼きそばなど、東京下町らしいユニークなグルメも登場し、食べ歩きの楽しみも十分です。朝顔を持ち帰りやすいよう、専用の持ち手付きの袋を用意してくれる業者も多く、帰り道に朝顔の入った紙袋を提げて歩く人々の姿も、入谷朝顔まつりならではの光景となっています。
ポタリングとは何か――下町散策に最適な移動スタイル
ポタリング(Pottering)とは、目的地を定めず自転車でのんびりと町を走り回ることを指します。英語の「potter around(ぶらつく)」が語源で、競技的なサイクリングとは異なり、景色を楽しんだり、気になるお店に立ち寄ったり、写真を撮ったりしながらゆっくりと進むスタイルが特徴です。
台東区を中心とした東京下町エリアは、ポタリングに最適な環境が整っています。平坦な地形が多く、狭い路地や商店街、神社仏閣など見どころが凝縮されているため、自転車の機動力を活かしながら散策の楽しさも味わえます。また、台東区内には複数の自転車駐輪場でレンタサイクルが実施されており、1日(午前6時〜午後8時30分)借りても300円と格安なのも嬉しいポイントです。
入谷朝顔市から始める下町ポタリング推奨コース
入谷朝顔まつりの朝、早起きして朝顔市で鉢植えを購入したら、その足で下町ポタリングに出かけるのが理想的な過ごし方です。朝顔の鉢はホテルや宿に一時預けておけば、身軽に自転車散歩を楽しめます。
入谷を起点に提案するポタリングコースは、全体で約15〜20キロメートル程度の行程で、途中の立ち寄り時間を含めると半日程度の充実したコースになります。以下、3つの方面別コースをご紹介します。
コース1 入谷から谷根千(谷中・根津・千駄木)へ
入谷鬼子母神を出発し、言問通りを西へ向かうと、まもなく下谷地区から台東区北部へと入っていきます。自転車で10〜15分ほど走ると、「谷根千(やねせん)」と呼ばれる谷中・根津・千駄木エリアに到達します。
谷根千は、東京でも有数の下町情緒が残るエリアです。関東大震災や東京大空襲の被害が比較的少なかったこともあり、昭和初期から続く木造建築や細い路地が今も残っています。谷中霊園を中心に多くの寺院が立ち並ぶ「寺町」としての顔もあり、都心にいながら江戸・明治の面影を感じられる貴重なエリアといえます。
谷中の名物は「谷中銀座」です。「夕やけだんだん」と呼ばれる石段を下ると、昭和レトロな雰囲気たっぷりの商店街が広がっています。メンチカツやコロッケ、和菓子などの食べ歩きグルメが充実しており、平日でも多くの観光客と地元の人々で賑わいます。
根津神社は谷根千エリアの中でも特に人気の高いスポットです。江戸時代に第5代将軍徳川綱吉によって建立されたと伝えられる社殿は国の重要文化財に指定されており、春のツツジまつりの時期には境内が一面の花で埋め尽くされます。朝顔市と同じ夏の時期には緑豊かな境内が清々しく、参拝の後は隣接する根津の街並みを散策するのも楽しい時間となります。
コース2 上野公園と不忍池でハスと朝顔を一日で
入谷からほんの少し南西に走ると、東京を代表する都市公園である上野公園に到着します。広大な緑の中には東京国立博物館、上野動物園、東京都美術館など多数の文化施設が集まっており、半日では回りきれないほどの見どころがあります。
上野公園内を抜けると、不忍池(しのばずのいけ)が広がります。夏の不忍池は一面を覆うハスの葉で美しく装われ、ピンクのハスの花が咲き誇る光景は壮観です。ちょうど7月の朝顔まつりの時期はハスの見頃とも重なるため、朝顔と蓮という二つの夏の花を同じ日に楽しめる贅沢なコースになります。
不忍池の弁天堂では弁財天を祀っており、芸事や縁結びの御利益があるとして親しまれています。池のほとりにはボート乗り場もあり、ゆったりとした時間を過ごすことができます。
コース3 浅草・隅田川沿いを走る下町ポタリング王道ルート
上野・入谷から東へ向かうと、浅草のエリアへと続きます。雷門と仲見世で有名な浅草寺はもちろん、その周辺には江戸時代から続く老舗や商店が立ち並んでいます。かっぱ橋道具街(合羽橋)では、プロの料理人御用達の調理器具や食器のほか、本物そっくりの食品サンプルなども購入でき、見ているだけでも楽しいエリアです。
浅草から隅田川沿いへ出ると、川沿いのサイクリングコースが整備されており、自転車でも快適に走ることができます。隅田川に架かる多くの橋を眺めながら走るのも、このコースの醍醐味です。中でも桜橋は歩行者・自転車専用の橋で、東京スカイツリーを背景にした眺めが絶景として知られています。
さらに東へ足を延ばすと、今戸神社があります。招き猫発祥の地として知られており、境内のあちらこちらに招き猫が祀られています。縁結びの御利益でも有名で、若い参拝者の姿も多く見られます。
下町ポタリングで使えるレンタサイクル情報
下町ポタリングの足として活躍するのが、台東区のレンタサイクルです。料金は1日(午前6時〜午後8時30分)300円と非常にリーズナブルで、下町散策の強い味方となります。区内各所にレンタサイクルステーションが設けられており、観光客でも気軽に自転車を借りられる体制が整っています。
自転車を返却するステーションは借りた場所でなくても構わない(乗り捨て可能な場合も多い)ため、片道ポタリングも実現しやすい点が魅力です。また、東京都が推進するシェアサイクルサービスも台東区内に多数のポートが設置されています。スマートフォンのアプリで解錠・返却ができる仕組みで、観光中に好きな場所で借り、好きな場所で返せる利便性の高さが特徴です。
朝顔市で購入した朝顔を長く咲かせる育て方
入谷朝顔まつりで買った朝顔は、適切なケアをすれば秋まで花を楽しむことができます。朝顔を長く咲かせるためのポイントを整理しました。
まず重要なのが置き場所です。朝顔は日当たりの良い場所を好みますが、真夏の強い西日には弱い特性があります。午前中に十分な日光を当て、午後は直射日光を避けられる半日陰の場所に移すのが理想的です。また、夜は暗い場所に置くことが大切で、夜間に明かりが当たると昼と夜のリズムが乱れ、花付きが悪くなることがあります。
水やりは夕方にたっぷりと行うのが基本で、日中に葉が垂れ下がってきたら追加で水を与えます。夜露に当てることも朝顔にとって好ましく、ベランダのある家庭では夜間に外に出しておくのもよい方法です。肥料も欠かせず、液体肥料を1〜2週間に一度与えると、長期間にわたって美しい花を咲かせてくれます。
変化朝顔の魅力と入谷朝顔まつり
江戸時代に庶民の間で大ブームとなった変化朝顔は、現代でも愛好家の間で育てられています。変化朝顔は通常の朝顔とは異なる形の花びらや葉を持ち、その変化の多様さが魅力です。花びらが細かく分かれた「撫子咲き」や、葉が変形した「縮緬葉」など、同じ朝顔とは思えないほど個性豊かな姿を見せてくれます。
変化朝顔には「正木」と「出物」の2種類があります。正木は変化した形質が遺伝子に安定して組み込まれており、種から育てると親と同じ形に育ちます。出物は不安定な遺伝子の組み合わせによって変化が起きるため、同じ親から育てても多様な形が現れ、育てる楽しみが大きい品種です。入谷朝顔まつりでも変化朝顔の鉢が販売されることがあり、通常の朝顔と並んで変わった形の花を探すのも、朝顔市の楽しみの一つとなっています。
入谷・下町の食文化と谷中銀座の食べ歩き
朝顔まつりの会場周辺から台東区全域にかけては、江戸から続く食文化が色濃く残るエリアです。早朝に朝顔市を訪れた後、朝食や昼食を下町グルメで楽しむのも旅の醍醐味です。
上野・御徒町エリアには、アメ横(アメヤ横丁)が近接しています。戦後の闇市から発展したこの商店街は、鮮魚、乾物、衣料品などを扱う店が入り乱れ、独特の活気を持っています。特に正月前や盆の時期は買い物客でごった返しますが、朝顔まつりの時期にも多くの人で賑わいます。
浅草には老舗の天ぷら屋や鰻屋、蕎麦屋が数多く残っており、江戸前の食文化を現代に伝えています。昼時には行列ができる人気店も多く、食べ歩きから本格的なお座敷料理まで、予算や気分に合わせて選べるのが浅草グルメの強みです。
谷中銀座は、下町ポタリングの途中に立ち寄りたい食べ歩きの聖地です。全長約170メートルの小さな商店街に、惣菜屋、精肉店、和菓子屋、カフェなどが密集しています。特に人気なのは揚げたてのコロッケやメンチカツで、地元の精肉店で揚げたてを買い、商店街を歩きながら食べるスタイルは谷中銀座の定番となっています。ねこ雑貨の店や個性的な雑貨屋なども多く、谷中独特のアート感覚あふれる街の雰囲気を楽しめます。
入谷朝顔市の混雑を避けるコツ
毎年40万人が訪れる入谷朝顔まつりは、特に土日や夕方の時間帯に非常に混雑します。2026年は7月6日が初日にあたるため、日曜日の初日は特に人が多くなることが予想されます。
混雑を避けるには、平日の早朝訪問が最も効果的です。7月7日か8日の午前5時〜7時台に来場すれば、朝顔も満開の状態で、かつ比較的落ち着いた雰囲気の中で朝顔を選ぶことができます。早朝の涼しい時間帯にゆったりと朝顔を選びながら鬼子母神に参拝するのが、通の楽しみ方といえるでしょう。
まつり期間中は近隣の道路が歩行者天国になる時間帯もあるため、自転車での来場は周辺の交通規制に注意が必要です。ポタリングで訪れる場合は、会場から少し離れた駐輪場に自転車を停めてから徒歩で向かうことをおすすめします。車でのアクセスは近隣に駐車場が少なく、まつり期間中は大変混雑するため、公共交通機関や自転車の利用が推奨されます。
下町ポタリングに適した自転車・装備とマナー
下町ポタリングに適した自転車は、一般的なシティサイクル(ママチャリ)で十分です。細い路地に入り込んだり、気になるお店の前で気軽に止まれる機動性が重要であり、スポーツ車の高速走行は必ずしも必要ありません。台東区のレンタサイクルで借りられる自転車も、シティサイクルタイプがほとんどです。
装備としては、夏場のポタリングなら帽子や日焼け止めが必需品となります。水分補給用のボトルホルダーがあると便利で、行動中はこまめに水分を取るよう心がけたいところです。スマートフォンのホルダーをハンドルに取り付けておけば、地図を確認しながら走れて便利です。
朝顔市で朝顔を購入する場合は、自転車の前かごや後ろキャリアに置けるかどうかを事前に確認しておくとよいでしょう。あんどん作りの大きな鉢は自転車には載せにくいため、購入した朝顔はいったん預かってもらうか、宅配サービスを利用するのが現実的な選択です。
下町エリアのポタリングでは、地域の方への配慮が大切です。細い路地では歩行者が優先で、自転車はゆっくりと通行しましょう。商店街や縁日の混雑した場所では自転車を降りて押すのがマナーです。写真撮影は下町ポタリングの楽しみのひとつですが、民家の窓や庭を無断で撮影するのは控えるべきです。神社仏閣での撮影も、礼儀をわきまえた行動が求められます。下町の住民の生活の場であることを忘れず、訪問者として節度ある行動を心がけることが、この地域の文化を守ることにもつながります。
入谷周辺のもう一つの名所――小野照崎神社
入谷鬼子母神から徒歩わずか2〜3分の場所に、もう一つ見逃せない神社があります。小野照崎神社(おのてるさきじんじゃ)です。東京メトロ入谷駅4番出口からほぼ直近で、朝顔まつりの参拝と合わせて訪れやすい立地にあります。
小野照崎神社に祀られているのは、平安時代初期の歌人・小野篁公(おのたかむらこう)です。小野篁は「小倉百人一首」に歌が選ばれた著名な歌人であるとともに、漢詩や絵画にも秀でた才人で、法律にも精通した学者であり、参議という要職を歴任した政治家でもありました。その多才ぶりから、芸事・技芸上達、学業成就、仕事運の御利益がある神社として広く知られています。
芸能活動や音楽活動、資格試験の合格祈願などで多くの参拝者が訪れており、朝顔まつりの時期にも合格祈願の絵馬が境内にたくさん奉納されます。入谷を訪れた際には、鬼子母神と小野照崎神社の両方に参拝することで、子宝・安産から芸術・学業まで、幅広い御利益を授かることができます。
下谷七福神めぐりと組み合わせた入谷ポタリング
台東区の入谷・下谷エリアには「下谷七福神」と呼ばれる七か所の神社仏閣が点在しています。入谷鬼子母神(真源寺)は福禄寿を祀る社として、この七福神めぐりのルートのひとつを担っています。
通常の七福神めぐりは正月(1月1日〜7日)に行われることが多いものですが、台東区内を自転車でポタリングしながら七か所を巡るコースは、時期を問わず楽しめる散策ルートとしてもおすすめです。入谷朝顔まつりの時期に合わせて訪れ、七福神の一社として入谷鬼子母神に参拝するのも、旅に深みを加える楽しみ方のひとつといえます。
旧吉原と日本堤――入谷ポタリングで江戸の影を辿る
入谷から少し北東に向かうと、かつて江戸最大の花街として栄えた「吉原」のあった千束エリアに到達します。現在はその面影はほとんど残っていませんが、日本堤(にほんつつみ)と呼ばれた堤防の跡は今も道路名として残っており、吉原神社も静かに鎮座しています。
吉原神社は遊郭で没した遊女たちの霊を弔うために建てられた神社で、縁結びの御利益があるとして知られています。朝顔まつりから自転車で10分足らずで到着できる距離で、江戸の影の歴史に思いを馳せながら参拝するのも、下町ポタリングならではの体験です。
このエリアをポタリングすることで、入谷・千束・日本堤という江戸時代から庶民文化が花開いたエリアを、現代の視点で再発見できます。表通りだけでなく細い路地に入り込むことで、昭和の面影が残る民家や商店に出会うこともあります。それが下町ポタリングの醍醐味であり、地図アプリだけに頼らず、気の向くまま迷い込む楽しさが下町散歩の真髄といえるでしょう。
入谷朝顔市と下町ポタリングについてよくある疑問
入谷朝顔市と下町ポタリングについて、訪問前によく寄せられる疑問への回答をまとめます。
入谷朝顔市はいつ開催されるのかという質問に対する回答は、2026年は7月6日・7日・8日の3日間、午前5時から午後11時までの開催が予定されています。例年7月6日・7日・8日の3日間で固定されているため、年間の予定が立てやすい点も特徴です。
朝顔市の混雑が少ない時間帯はいつかという疑問については、平日の早朝(午前5時〜7時台)が最も空いている時間帯となります。土日や夕方以降は混雑がピークに達するため、ゆっくり朝顔を選びたい場合は平日早朝の訪問が最適です。
入谷から下町ポタリングを始める場合の距離感については、谷根千エリアまで自転車で約10〜15分、上野公園・不忍池までは10分以内、浅草までは15分前後で到達できます。半日で3〜4スポットを巡るのが現実的なペースです。
朝顔の鉢を購入したあとに自転車で移動するのは難しいのではという心配については、小さな鉢植えなら前かごに収まりますが、人気のあんどん作り(2,000円前後)は大きさがあるため、ホテルや宿に一時預けるか、宅配サービスの利用がおすすめです。
入谷朝顔市と下町ポタリングで江戸の夏を体感する
入谷朝顔市は単なる花の市ではなく、江戸時代から連綿と受け継がれてきた日本の美意識と庶民文化の結晶です。早朝の爽やかな空気の中、鮮やかな朝顔に囲まれて歩く言問通りは、現代の東京にいながら江戸の夏にタイムスリップするような感覚を与えてくれます。
入谷鬼子母神に参拝し、好みの朝顔を選んで購入した後は、自転車で下町を巡るポタリングへ出発しましょう。谷根千の路地裏、上野の不忍池、浅草の仲見世、隅田川沿いのサイクリングロードと、それぞれに異なる魅力を持つこれらのスポットを、自転車ならではのペースでゆっくりと巡ることができます。
東京の夏、とりわけ朝顔まつりの時期は、この街が最も下町らしい顔を見せる瞬間かもしれません。朝顔の鉢を持ち帰り、自宅の玄関や窓辺に飾れば、夏の間中、入谷の夏の記憶が鮮やかに甦ります。ポタリングで汗をかいた一日の締めくくりには、かき氷や冷たい甘酒で涼を取りながら、再び訪れることを誓う。そんな夏の過ごし方を、ぜひ一度体験してみてください。2026年の入谷朝顔まつりは7月6日から8日まで。今年の夏は、朝顔と下町ポタリングで、東京の原風景に出会いに行きましょう。









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