岐阜市の川原町は、長良橋の南から西へ延びる古い町並みで、自転車でゆっくり走る「ポタリング」と町家の散策、長良川の鵜飼見物を一日にまとめやすい場所です。昼のうちに岐阜駅から長良川沿いを走って川原町の町家を歩き、日が落ちたら観覧船で鵜飼を見る流れが、いちばん無理なく組めます。2026年の鵜飼は5月11日(月)から10月15日(木)までで、この記事を書いている2026年10月4日(日)時点では、シーズン終盤にあたります。
川原町はかつて長良川の水運で栄えた川湊で、材木商や紙問屋が軒を並べていました。今は町家や蔵を改装したカフェや食事処、土産物店が並びます。この記事では、川原町の歩き方、町家カフェと鮎料理の店、鵜飼の仕組みと観覧船の料金、岐阜駅から長良川へ向かうポタリングの道筋、金華山と岐阜公園を足す場合の時間配分、バスで行く場合の降り場まで、順に整理します。

川原町は長良橋南から西へ延びる、かつての川湊の町並み
川原町とは、岐阜市の長良橋のたもとから南へ、長良川の河畔に沿って広がる古い町並みのことです。長良橋南にある鵜飼観覧船事務所(乗り場)から西へ続く一帯で、港、玉井、元浜といった町名にまたがっています。
この場所が栄えた理由は、川にあります。金華山に岐阜城を築いた斎藤道三が、この付近に川の港を整えたと伝わっています。織田信長の時代には、すでに商人が行き交う川湊でした。長良川の上流から運ばれてきた材木や和紙がここに集まり、材木商や紙問屋が軒を連ねる商業の中心になっていきます。
今の川原町を歩くと、その名残がはっきり見えます。格子窓のある木造の町家、古い蔵、間口が狭くて奥へ深く伸びる建物が続いていて、レトロな雰囲気です。川に面した港の跡だと考えておくと、イメージしやすいでしょう。
川原町の町家は格子窓と「うなぎの寝床」の間取りが目印
川原町の町家には、見分けるための目印が3つあります。格子窓、狭い間口、そして奥行きの深さです。表から見るとこぢんまりした店構えなのに、中へ入ると細長い空間が奥へ続いています。この間取りは京都の町家に通じるもので、「うなぎの寝床」と呼ばれます。
町家散策で押さえておきたいのは、建物の多くが今も店として使われている点です。外から眺めるだけの保存地区ではありません。町家や蔵を改装した店が点在し、イタリアン、中華料理、カフェ、スイーツ、雑貨と、ジャンルは幅広くなっています。
土産物にも川原町らしい品があります。鮎の塩焼き、鮎菓子、岐阜うちわの3つが定番です。岐阜うちわは伝統工芸品で、岐阜銘菓の鮎菓子とあわせて、今も扱う店が営業しています。鮎は鵜飼の獲物そのものなので、鵜飼を見る日の土産としても筋が通っています。
川原町は、鵜飼観覧船の乗り場から近い場所にあります。乗船前の時間に散策する流れにも向いていますが、店の閉店時刻には注意が必要です。この点は後の時間配分の節で触れます。
町家カフェは川原町屋と緑水庵の川原町店の2軒が起点
町家の中でゆっくり過ごすなら、まず川原町屋を挙げます。明治時代の紙問屋だった町家の建物を再生して、喫茶とギャラリーとして営業している店です。川原町が紙問屋の町だった歴史が、そのまま建物に残っています。
川原町屋は、母屋、離れ、蔵の3つに空間が分かれています。和モダンの雰囲気の中で、コーヒーとケーキが楽しめます。民芸品を扱うギャラリーのコーナーも併設されているので、お茶を飲んだあとに見て回れます。営業時間は9:00から18:30までで、夏期は19:00までと案内されています。
もう1軒が緑水庵の川原町店です。築130年といわれる古い町家のカフェで、老舗旅館の十八楼の向かいにあります。写真を撮る人に人気のスポットです。
2軒を比べると、使い分けははっきりします。ギャラリーや蔵の空間までじっくり見たいなら川原町屋、町家の外観を写真に収めたいなら緑水庵の川原町店が向いています。時間が限られる日は、川原町屋に絞ったほうが失敗しません。営業時間がはっきり確認できているのは川原町屋のほうだからです。
ほかの店の営業時間や店の一覧は、岐阜市観光コンベンション協会に問い合わせる形が案内されています。
鮎料理の川原町泉屋は塩焼きから鮎ラーメンまで幅が広い
川原町で食事をするなら、鮎を中心にした川原町泉屋があります。腕のある料理人が、鮎を使った独自の料理を出す店です。
炭火で焼く鮎の塩焼きがあるのはもちろんですが、それに加えて、鮎ラーメンや鮎ピザといった創作料理があります。塩焼き一本の店ではなく、鮎をどう料理に使うかを広げている店だと言えます。鵜飼で獲れる魚の味を、先に昼間に確かめておく楽しみ方ができます。
もうひとつ押さえたいのが、冷凍の鮎を通年で扱っている点です。鵜飼のシーズンは5月から10月までなので、季節を外した旅行でも、鮎を食べる選択肢が残ります。シーズンが終わる頃に訪れる人にとっては、助かる情報でしょう。
長良川うかいミュージアムは鵜飼の予習に使える
長良川うかいミュージアムは、長良川鵜飼の歴史、伝統、魅力を紹介する施設です。展示に特徴が2つあります。巻物の形をした画面を使った映像展示は世界初とされています。もうひとつは、クイズ形式で進める体験型の展示です。
鵜飼が行われない期間の週末には、鵜飼の実演と解説があると案内されています。鵜飼が休みの日でも、実際の鵜と鵜匠の動きを見られる機会があるわけです。2026年の鵜飼は10月15日で終わるので、その後に川原町を訪れる人にとって、この実演はとくに意味を持ちます。
観覧船に乗る日なら、乗る前にミュージアムを回っておくと、夜の鵜飼を見る目が変わります。鵜匠や鵜がどう働いているのか、総がらみとは何かを知ってから見るほうが、暗い川面の動きを追いやすくなるからです。
長良川鵜飼は1300年以上続く漁で、鵜匠は国家公務員
鵜飼とは、海鵜(ウミウ)を操って鮎を獲る、古くからの漁法です。長良川の鵜飼は、歴史を1300年以上さかのぼれるとされています。国の重要無形民俗文化財に指定されています。
時の権力者も鵜飼を守ってきました。織田信長は、鵜飼を行う者に「鵜匠」という地位を与えました。徳川家康は鮎鮨を好み、江戸へ献上させています。元和元年(1615年)には、大坂夏の陣の帰りに岐阜へ滞在した家康と秀忠の父子が、鵜飼を観覧したと伝わっています。
もっとも珍しいのが、鵜匠の身分です。ぎふ長良川の鵜飼で活躍する鵜匠は6名で、正式な職名は「宮内庁式部職鵜匠」といいます。世襲で技を受け継いでいます。長良川の鵜匠は国家公務員で、これは律令時代に、鵜匠が宮廷直属の官吏として漁をしていたことに由来するそうです。
観覧船から見る鵜匠は、捕らえた鮎を皇室へ献上する役目も担う現役の漁師です。この点を知っているかどうかで、同じ光景への見え方が変わります。
鵜匠6名、鵜10羽から12羽、総がらみは岐阜でしか見られない
鵜飼の見どころを知っておくと、観覧船の45分が短く感じます。順に説明します。
1人の鵜匠は、手縄(たなわ)と呼ぶ縄を操って、10羽から12羽の鵜を同時に扱います。これは全国の鵜飼の中でも最多の規模とされています。鵜の首には紐が結んであり、結び加減は鵜匠が調整します。大きな鮎は首のところで止まり、小さな鮎は通り抜けられる仕組みです。鵜が小さな魚まで飲み込んでしまわない工夫が、紐の結び目に入っています。
鵜舟には、鵜匠のほかに船頭が2名乗っています。竿と櫂を使って舟を動かし、鵜が鮎を捕りやすく、鵜匠が鵜を扱いやすいように位置を取ります。鵜匠の手元ばかりを見がちですが、舟の動きにも目を向けると、3人の連携が見えてきます。
クライマックスは「総がらみ」です。6名の鵜匠が舟を横一列に並べ、川幅いっぱいに広がって鮎を追い込みます。船頭が舟べりを叩いて音を立て、隠れている鮎を驚かせます。6艘の鵜舟が協力するこの追い込みは、岐阜市でしか見られないと案内されています。観覧船に乗るなら、総がらみまで見届けてから降りるのが得策です。
暗闇に浮かぶ篝火(かがりび)と、川面に映る光も、長良川鵜飼ならではの景色です。夜の闇の中だから成り立つ非日常感があります。
2026年の鵜飼は10月15日まで、観覧船は大人4,200円から
2026年の長良川鵜飼は、5月11日(月)から10月15日(木)まで開かれます。9月17日(木)の鵜飼休みと、増水時などの中止日を除いて、毎日行われます。9月17日はすでに過ぎているので、今から予定を立てる場合の休みはありません。ただし、増水で中止になる可能性は残るため、当日の運航情報の確認が欠かせません。
観覧船(乗合船)の出航時間は、18:15、18:45、19:15の3便です。鵜飼の開始は19:45頃が基本になります。料金の目安は次の表のとおりです。
| 区分 | 大人 | 小人 |
|---|---|---|
| 基本料金 | 4,200円から5,000円 | 2,100円から3,000円 |
| 繁忙期 | 5,100円から6,000円 | 2,600円から3,500円 |
乗合船の料金だけを見ると、大人は4,200円(繁忙日は5,100円)、子供は2,100円(繁忙日は2,600円)です。料金に幅があるため、乗る日の正確な金額は事務所で確認してください。
繁忙期の日付は決まっています。5月11日、7月18日、7月25日、8月1日、8月13日から15日、8月22日、8月29日、9月5日、9月12日、9月19日から22日、9月26日です。10月に入ってからの日は、この繁忙期に入っていません。シーズンの最終盤は、基本料金で乗れる日が続くことになります。
予約や詳しい運航の状況は、岐阜市鵜飼観覧船事務所で確認できます。2027年以降の開催日と料金は、公式の発表を待って確認してください。
観覧船は乗船約45分で途中のトイレは使えない
観覧船の乗船時間は約45分です。この間、途中でトイレに行けません。乗る前に必ず済ませておくよう案内されています。川の上で降りられない以上、これは譲れない注意点です。
飲み物や食べ物の持ち込みは認められています。風情のある雰囲気の中で食事を楽しめるのが、観覧船の良いところです。川原町で買った鮎菓子や、夕食を持って乗る手もあります。
会場は岐阜市湊町周辺です。JR岐阜駅または名鉄岐阜駅から、岐阜バスの長良橋方面行きに約15分乗り、「長良橋南・川原町」で降りて徒歩1分で着きます。
ポタリングは岐阜駅から長良川プロムナードへ
ポタリングは、目的地を急がずに自転車でのんびり走る楽しみ方です。岐阜では、JR岐阜駅でレンタサイクルを借りて、長良川の河畔を走るコースがあります。岐阜駅(高山本線側と東海道本線側)にレンタサイクルの拠点があると案内されています。料金と営業時間については、今回確認できた資料に記載がありません。借りる前に公式の情報で確かめてください。
走る場所として挙げたいのが、長良川プロムナードです。長良橋から岐阜グランドホテルまで、長良川の右岸に整備された約1.3キロの道路で、金華山の岐阜城を眺めながら走れます。清流の景色を楽しむには、この道がいちばん向いています。
プロムナードの沿道には、長良川温泉の旅館、長良川観光ホテル石金があります。無料の足湯が利用できると案内されています。自転車を止めて足を休める場所があるのは、ポタリングにはありがたい条件です。
長良川沿いを楽しんだあとは、サイクリングで岐阜駅の方向へ戻ります。長良橋の上や川原町の鵜飼乗り場では、川岸に停泊している観覧船が見られます。
なお、郡上市を流れる長良川沿いを走るマウンテンバイクのツアーもあります。22キロで、大人も小人も6,800円です。ただしこれは岐阜市中心部ではなく、上流域のツアーで、川原町のポタリングとは別物です。
金華山ロープウェーと岐阜公園は一緒に回れる
川原町や長良川プロムナードの近くには、金華山と岐阜公園があります。ポタリングの途中に足すと、一日の見どころが厚くなります。
ぎふ金華山ロープウェーは、岐阜公園と金華山(標高329m)の山頂を約4分で結びます。山頂からは、金華山の自然林、長良川、岐阜市の街並みが一望できます。山頂駅の付近には、リス村、売店、展望レストランがあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運行間隔 | 通常は毎時15分おき、混雑時は毎時10分おき |
| 営業時間 | 4月1日から3月31日は9:00から18:00(元旦のみ5:00から18:00) |
| 夏期ナイター営業 | 7月10日から9月30日は9:00から22:00 |
2026年10月4日の時点では、夏期ナイター営業はすでに終わっています。10月は通常の9:00から18:00の営業なので、日没後にロープウェーで夜景を見る計画は立てられません。
岐阜公園は、斎藤道三や織田信長など、歴代の城主の館があった場所です。若き日の織田信長像のほか、信長にまつわる建物や見どころがあります。川原町の川湊の歴史を知ったあとに、同じ人物の足跡をたどる形になります。
日没前に川原町、夜に鵜飼という順番がいちばん組みやすい
ここまでの情報を並べて、一日の流れを組んでみます。ポイントは、店の閉店時刻と、観覧船の出航時刻のずれです。
川原町屋は18:30(夏期は19:00)に閉店します。観覧船の最初の便は18:15に出航します。つまり、18:15の便に乗る日は、川原町屋を使える時間が出航前に限られます。町家カフェに寄るなら、夕方の早い時間に済ませておくのが安全です。
観覧船は18:15、18:45、19:15の3便から選びます。鵜飼の開始が19:45頃なので、便によって、鵜飼の開始までの時間が変わります。早い便ほど、観覧船の上で過ごす時間が長くなります。持ち込みの食事をゆっくり食べたい人には、早い便が合っています。
大まかな流れは次のとおりです。午前から昼にかけて、JR岐阜駅でレンタサイクルを借りて長良川プロムナードを走ります。足湯で休み、川原町へ入って町家をめぐり、川原町屋で一息つきます。金華山ロープウェーの営業は18:00までなので、乗るなら夕方より前に済ませます。夕方に観覧船へ乗り、鵜飼を見ます。この順番なら、閉店時刻にも、トイレの注意点にも、無理なく収まります。
観覧船に乗る間、自転車をどうするかは、借りる前に確認しておくべき点です。返却の方法や時間は、今回の資料では確認できていません。
川原町へ行く前によくある疑問
川原町だけを目的に行ってもよいのか、という疑問があります。答えは、行ってよいです。町家や蔵を改装した店が多く、昼のうちに散策とカフェ、食事、土産選びまで完結します。鵜飼を見なくても成り立つ町です。
鵜飼のシーズンを過ぎても楽しめるのか、という疑問もあります。2026年の鵜飼は10月15日で終わりますが、その後も川原町の町並みと町家カフェは使えます。長良川うかいミュージアムでは、鵜飼が行われない期間の週末に、実演と解説があると案内されています。川原町泉屋は、冷凍の鮎を通年で扱っています。鵜飼のない時期に訪れる価値は十分にあります。
鵜飼に子どもを連れて行けるかという点については、観覧船に小人料金があり、基本料金で2,100円から3,000円と案内されています。ただし、乗船約45分の間は途中でトイレに行けません。乗る前に済ませることが、小さな子ども連れではとくに大切です。
ポタリングは鵜飼と同じ日にできるのか、という疑問には、できると答えられます。昼に走って夕方に観覧船に乗る流れが組めます。ただし、日が暮れてからの自転車移動を避けるため、観覧船の乗船前に自転車を返す前提で予定を立てるのが無難です。
車で行く場合の駐車場は、岐阜公園の公式駐車場が1回310円で、1時間以内なら無料と案内されています。川原町そのものの駐車場の情報は、今回の資料に記載がないため、確認が必要です。
川原町の町家散策は昼と夜の二段構えで組む
川原町は、斎藤道三が整えたとされる川湊に始まり、材木と和紙で栄え、今は町家と蔵を改装した店が並ぶ町です。岐阜駅から長良川プロムナードを自転車で走り、川原町屋や緑水庵の川原町店で町家に入り、川原町泉屋で鮎を食べる。夕方からは、観覧船で45分、1300年以上続く鵜飼を見る。この二段構えが、川原町を一日で使い切るいちばん素直な組み方です。
2026年の鵜飼は、10月15日(木)が最終日です。この記事の執筆時点では、残された日は多くありません。今シーズンに間に合わせるなら、増水による中止も考えて、日程に余裕を持たせてください。間に合わなかった場合でも、川原町の町家、鮎料理、うかいミュージアムの実演は、シーズンのあとも楽しめます。来シーズンの開催日と料金は、岐阜市の公式発表で確認してから計画を立ててください。








