高岡の山町筋から金屋町へ、千本格子の町をポタリングで巡る富山旅

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富山県高岡市の中心部にある山町筋と金屋町は、どちらも国が重要伝統的建造物群保存地区として選定した町並みで、自転車でつないでめぐれます。土蔵造りの商家が続く山町筋を出発し、千本格子の町家と石畳の道が約500m続く金屋町へ、街なかを抜けて走るのが基本の道筋です。自転車は高岡駅など市内7か所で1回300円で借りられ(2024年7月時点の料金)、山町筋の真ん中にある高岡御車山会館も貸出拠点の一つです。

ポタリングは、スピードを求めずに自転車でゆったり町を巡る遊び方を指します。高岡では、二つの町並みのほかにも高岡古城公園や高岡大仏が比較的コンパクトに集まっています。歩いて回れない距離ではありません。それでも自転車があれば行ける範囲がぐっと広がり、気になった店や路地にふらりと寄り道しやすくなります。

高岡は、加賀藩2代藩主の前田利長が開いた城下町です。山町筋は利長が置いた商人の町、金屋町は利長が鋳物師を呼んで始めさせた職人の町で、どちらの始まりにも利長が関わっています。

目次

山町筋の土蔵造りは明治33年の大火のあとに建った防火の町並み

山町筋に並ぶ土蔵造りの商家は、明治33年(1900年)の大火のあとに建て直されたものです。この火事で山町筋の家屋はほとんど焼けてしまい、焼け残った土蔵造りの2軒を手本にして、旧北陸街道沿いとその周辺が土蔵造りで再建されたそうです。前の年には富山県令が建築制限の規則を出していて、再建はその規則に沿って進みました。火に強い土蔵造りの主屋が建ち並んだのは、そのためです。

町の歴史そのものはもっと古く、前田利長が高岡の町を開いたときに、旧北陸道に沿って商人町を置いたのが始まりです。江戸から明治にかけて、高岡には各地の物資が集まり、町はにぎわいました。その商売の要にあたるのが山町です。御車山祭とゆかりの深い10の町をまとめて山町筋と呼び、問屋や銀行が軒を連ねる、商都の中心街を成していました。

自転車をゆっくりこいでいると、黒漆喰などで塗り込めた外壁や観音開きの土扉、防火壁といった火事への備えが、今も家々に残っているのが目に入ります。明治期の都市防災計画を、今も町並みの形で伝えている地区です。平成12年(2000年)12月4日、国はこの地区を重要伝統的建造物群保存地区として選定しました。地区の面積は約5.5ヘクタールです。

黒い土蔵の並びのなかで、ひときわ目立つのが赤レンガ造りの旧高岡共立銀行本店です。大正初期に建った銀行建築で、その後は北陸銀行高岡支店となり、続いて富山銀行本店にもなりました。土蔵の商家の間に洋風の建物がアクセントとして入ってくるところも、山町筋の面白さです。

菅野家住宅と土蔵造りのまち資料館で土蔵の暮らしにふれる

山町筋を代表する建物が、主屋と土蔵が国の重要文化財になっている菅野家住宅です。明治の初め、5代目の菅野伝右衛門が北前船による北海道との商いで財を築いた家として知られています。今も一家が暮らす住まいで、ご当主の理解があって、ミセノマやホンザシキ、ブツマなどを見せてもらえます。すぐ近くにある山町筋観光駐車場は無料です。

土蔵造りのまち資料館は、高岡市指定文化財の旧室崎家住宅を活用した施設です。土蔵造りの家でどんなふうに暮らしていたのかを、実際の建物の中で知ることができます。平日に観覧したいときは事前の申し込みが必要で、原則として7日前までに電話か公式サイトで申し込みます。土日祝日なら予約なしで入れます。

ひと休みには、古民家を生かしたカフェ「山町茶屋」があります。季節の和菓子に富山棒茶を合わせたセットは600円(税込)です。和菓子は近所にある大野屋の品だそうです。

高岡御車山祭は毎年5月1日、高岡御車山会館なら一年中見学できる

山町筋の中心となる行事が、毎年5月1日に開かれる高岡御車山祭です。この祭りは、重要有形民俗文化財と重要無形民俗文化財の両方として国から指定を受けています。2016年(平成28年)12月1日には、ユネスコが無形文化遺産に登録しました。前日の4月30日が宵祭りで、5月1日には市内での曳き回しがあります。曳き回しは見物料がかかりません。

祭りの日以外に御車山を見たいなら、守山町の高岡御車山会館に行きます。館内の有料ゾーンに入ると、御車山がどう生まれたのか、また祭りの日を迎えるまでに一年がかりでどんな行事が続くのかがわかります。5月1日の祭り当日は、年によって観覧料が無料になり、閉館も遅くなります。2024年の閉館は、4月30日が21時、5月1日が19時でした。車で来た人は、山町筋観光駐車場か会館の専用駐車場を使えます。

夏の行事もあります。8月に入ると、毎年「高岡山町筋土蔵造りフェスタ」が催されます。散策やいろいろなイベントを通じて、地区の魅力を伝える催しです。

金屋町は1611年に7人の鋳物師を招いて始まった高岡鋳物の発祥地

金屋町は、高岡鋳物が生まれた町です。慶長16年(1611年)、前田利長は砺波郡西部金屋から7人の鋳物師をこの地に呼び寄せ、鋳物を作らせました。これが町の始まりだそうです。高岡銅器の製造は、ここから広がっていきました。

高岡銅器が伝統的工芸品として経済産業大臣の指定を受けたのは、1975年(昭和50年)2月17日です。国内で作られる銅器の約9割を高岡が占めるともいわれ、日本最大の銅器の産地です。明治時代にパリ万国博覧会へ出品したことで、世界にも名前が知られるようになりました。

金屋町は平成24年(2012年)に重要伝統的建造物群保存地区に選ばれています。鋳物師の町が選ばれたのは、全国でここだけです。

千本格子は「さまのこ」と呼ばれ、視線をさえぎりながら光と風を通す

金屋町の景色をつくっているのは、約500mの石畳と、道の両側に並ぶ千本格子の家々です。千本格子とは、細い木の格子を町家の表側にびっしりと並べた造りのことで、「さまのこ」という呼び名もあります。通りからは家の中が見えにくく、それでいて室内には光と風が入ります。

敷地は短冊のように細長く、作業場は奥に置かれています。作業場から火が出ても、主屋まで燃え広がりにくくするための配置です。山町筋の土蔵とは違うやり方で、金屋町の家もまた火事に備えていました。

足元の石畳には銅片が敷き込まれていて、ところどころにハートや星の形をしたものが混じっています。自転車を降りて、銅片を探しながら歩くのも楽しみのひとつです。

鋳物資料館と工房で、高岡鋳物を見て、作ってみる

金屋町1-5の高岡市鋳物資料館では、古文書のほか、初期の鋳物の技術を伝える製品や、いろいろな造型、鋳造に使う道具を展示しています。400年続いてきた鋳物産業の歴史を、こうした品から知ることができます。30分ほどで見学でき、予約はいりません。

町内には、鋳物の製作や錫(すず)のアクセサリーづくりを体験できる工房があちこちにあります。金屋町8-11の鋳物工房 利三郎は100年以上続く工房で、訪れた人はやわらかな音の風鈴づくりを体験できます。万延元年に創業した鋳物の老舗、大寺幸八郎商店にはギャラリーおおてらがあり、そこで錫のアクセサリーを作れます。体験料は2200円です。大寺幸八郎商店は、初代の幸八郎が鋳物工場を始めた由緒ある店で、長く高岡鋳物に携わってきました。

金屋町には、地元のガイドと一緒に町を歩くプランもあります。鋳物資料館の見学と、大寺幸八郎商店の錫クラフト体験がセットになった内容です。

御印祭は毎年6月19日と20日、夏には納涼祭も

金屋町の大きな行事は、前田利長の威徳をしのぶ御印祭です。毎年6月19日と20日に行われ、20日は利長の命日にあたります。前夜祭の「弥栄節街流し」もよく知られています。

「金屋町楽市inさまのこ」は、千本格子が残る金屋町全域を会場にして、人が暮らす空間の中で展示をする催しです。形式は「ゾーンミュージアム」と呼ばれ、ストリートマーケットにイベントを合わせて開かれます。もとは金屋町自治会の「さまのこフェスタ」という別の催しがあり、これと一つにまとまりました。8月には納涼祭もあります。

山町筋から金屋町へは高峰公園と鳳凰橋を経由して街なかを走る

山町筋を出たら、街なかを抜けて金屋町へ向かいます。途中には高峰公園があり、金屋町へ向かう道で渡る鳳凰橋は、真ん中あたりに金色をした鳳凰のオブジェがあるのが目印です。

かかる時間は、町並みを見て回るだけなら30分から45分です。鋳物体験をしたり周辺のお店に寄ったりすると、1時間半から2時間ほどになります。

レンタサイクルは高岡御車山会館で借りると山町筋からすぐ出発できる

レンタサイクルの拠点は、高岡駅や新高岡駅を含めて市内に7か所あります。貸し出しは4月から11月までで、受付時間は10時から16時です。冬のあいだは休みになります。問い合わせは高岡町衆サロン(末広開発)が受けています。

出発点に向いているのは高岡御車山会館です。高岡観光ナビのレンタサイクル案内でも貸出拠点の一つになっていて、4月1日から11月30日まで借りられ、12月から3月は冬の休業期間に入ります。会館が山町筋の中心に建っているため、借りたその場から町並みを走り始められます。

駅から動きたい人は高岡駅観光案内所(高岡市下関町6-1)、公園から動きたい人は高岡古城公園の三の丸茶屋も使えます。三の丸茶屋の営業は10時から16時です。出かける前には、高岡市の観光サイトか各拠点で、最新の料金と受付時間を確認しておきましょう。

高岡市では、シェアサイクルのHELLO CYCLINGも利用できます。高岡観光ナビには、自転車で回るコースが次のように紹介されています。

借りる場所自転車所要時間主な立ち寄り先
高岡御車山会館(借りた場所に返す)HELLO CYCLING約8時間ウイング・ウイング高岡、茶房ギャラリー、高岡市立中央図書館、COMMAコーヒースタンドなど
高岡駅の観光案内所普通自転車約7時間市内を周遊
伏木駅レンタサイクル約4時間勝興寺、伏木神社、途中で昼食

疲れたら路面電車の万葉線に乗り換えられる

こぎ疲れたときに頼れるのが、路面電車の万葉線です。路線は、高岡市にある高岡駅停留場を起点に、射水市の越ノ潟停留場まで延びています。路面を走る高岡軌道線と、鉄道として走る新湊港線、この2路線で構成されています。日中はおよそ15分おきに走っていて、山町筋に近い停留場は片原町です。

車両のひとつ「ドラえもんトラム」は、高岡市出身の漫画家、藤子・F・不二雄さんの代表作をモチーフにしたラッピング電車です。2012年(平成24年)9月8日に走り始め、沿線でこの車両に出会えることもあります。

寄り道先は高岡大仏と国宝の瑞龍寺、桜約1,800本の高岡古城公園

高岡大仏は火事で何度も焼け、昭和8年に青銅で生まれ変わった

高岡大仏は青銅でできた阿弥陀如来坐像で、日本三大仏の一つに数えられています。大佛寺(鳳徳山大仏寺)にあり、高さは約16メートルあります。境内は自由に見学でき、高岡駅から歩いて10分ほどの距離です。

この大仏は、もとは木造でした。文政4年(1821年)の高岡大火で焼け、天保12年(1841年)に再興されたものの、明治33年(1900年)の大火でふたたび焼けています。山町筋が土蔵造りの町に生まれ変わるきっかけになった大火と、同じ年の出来事です。

火に強い大仏を望む市民の思いに応えて、1907年(明治40年)に再建を発願したのが、定塚町の松木宗左衛門です。荻布宗四郎らが力を貸して、工事が動き出しました。当初の計画は木造でしたが、地場産業の銅器を盛り上げたいという考えから、青銅で造ることになったそうです。原型を手がけたのは中野双山で、26年に及ぶ工期を経て、昭和8年(1933年)に開眼供養が行われました。土蔵の町並みを見たあとに大仏を訪ねると、焼けては建て直してきた高岡の歩みを、二か所で続けて確かめられます。

瑞龍寺は富山県で唯一、建造物の国宝を持つ寺

高岡山 瑞龍寺は、3代藩主の前田利常が、前田利長の菩提を弔うために建てた曹洞宗の寺院です。もともとこの地にあった法円寺を改めた寺で、造営は約20年続き、利長の五十回忌にあたる寛文3年(1663年)にようやく終わりました。当時の寺域は3万6千坪あったそうです。

山門、仏殿、法堂の3棟は、平成9年(1997年)12月3日に国宝に指定されました。富山県で国宝の建造物はここだけです。法堂は1655年、仏殿は1659年に建てられたことがわかっています。総門、禅堂、大庫裏、回廊、大茶堂も重要文化財です。

大晦日には22時から2時まで、無料で参拝できます。寺の近くにある前田利長の墓所は、大名個人の墓としては最大級の墓域を持っています。

高岡古城公園は高岡城の跡で、入園は自由

高岡古城公園の場所には、かつて前田利長が築いた高岡城がありました。今はその城跡が公園になっています。広さは約21万平方メートルあり、その約3割を水濠が占めています。入園は自由です。

1615年に一国一城令が出されると、高岡城は廃城となりました。それでも水堀や土塁はそのまま残り、日本100名城の一つにも数えられています。公園の中には動物園と高岡市立博物館があり、利長公の銅像も立っています。本丸の跡には射水神社が鎮座していて、ご神木は樹齢約400年の「八重紅梅」です。

桜と紅葉の名所で、桜は18種類、約1,800本あります。いちばん多いのはソメイヨシノの約1,400本で、コシノヒガンは約100本、残る約300本がほかの品種です。花が見頃を迎えるのは例年4月上旬から中旬にかけてで、高岡桜まつりが開かれている間は、ぼんぼりに明かりがともります。さらに桜馬場から市役所のあたりまで、公園に沿って約230本の桜が続きます。

高岡駅の前にはドラえもんの銅像12体が並ぶ

高岡は、藤子・F・不二雄さんの出身地です。高岡駅前のウイング・ウイング高岡広場(末広町1-7)には、「ドラえもんの散歩道」という名前の広場があります。そこに立つのは、ドラえもんの仲間たちを表した12体の銅像です。駅の交通広場にはドラえもんポストがあり、駅前には大伴家持像も立っています。

高岡市美術館(中川1-1-30)の2階にあるのが、高岡市 藤子・F・不二雄ふるさとギャラリーです。開館は9時30分から17時で、入館は16時30分までです。休館日は月曜日ですが、月曜が祝日や休日のときは開館し、次の平日が休みになります。年末年始の12月29日から1月3日も休館です。

注意点は金屋町の石畳と、火曜日や冬に重なる休み

金屋町の道は石畳です。自転車で走るときは、路面の状態に気をつけてください。千本格子の町並みを守っている地区でもあるので、住む人の暮らしと景観に配慮して、自転車を押して歩くくらいのゆっくりした進み方がこの町には似合います。

静かに町並みを味わいたい人は、人出の多い日を外す手もあります。金屋町は一年中混み合う場所ではありません。ただ、御印祭や金屋町楽市の日、ゴールデンウィークの時期には観光客が集まり、ふだんよりにぎやかになります。

休みの日にも注意が必要です。土蔵造りのまち資料館と高岡市鋳物資料館は、火曜日(祝日なら翌日)と12月29日から1月3日が休みです。高岡御車山会館は火曜日(祝日なら翌平日)と年末年始が休業日になります。菅野家住宅は火曜日のほか、8月中旬、年末年始、1月から2月の厳冬期も休みです。レンタサイクルも12月から3月は休業するので、冬に出かけると、自転車も一部の施設も使えない日が出てきます。

各施設の開館時間と料金は、次の表のとおりです。

施設場所開館時間料金
土蔵造りのまち資料館小馬出町26(JR高岡駅から徒歩12分から15分)9時から16時30分一般300円、シニア(65歳以上)と団体(20名以上)240円、中学生以下無料
菅野家住宅山町筋9時30分から16時大人300円、小中学生無料
高岡御車山会館守山町47-1(JR高岡駅から徒歩12分)9時から17時(入館は16時30分まで)一般(高校生以上)450円、団体(20名以上)360円、中学生以下無料
高岡市鋳物資料館金屋町1-59時から16時30分300円(高校生以上)、240円(65歳以上、団体は20人から)、無料(中学生以下、障害者手帳を持つ人と付き添いの1名)
瑞龍寺高岡市9時から16時30分閉門(入場は閉門30分前まで、12月10日から1月31日は16時閉門)大人500円、中学生と高校生200円、小学生100円

まとめ

富山県高岡市の山町筋と金屋町は、どちらも国の重要伝統的建造物群保存地区で、自転車なら一続きに回れます。山町筋では明治33年の大火のあとに建てられた土蔵造りの商家を、金屋町では約500mの石畳と千本格子の町家を見られます。自転車は高岡駅など市内7か所で1回300円、4月から11月に借りられ、山町筋の高岡御車山会館からも走り出せます。前田利長が開いた二つの町を走ったら、高岡大仏や瑞龍寺、高岡古城公園にも寄り道できます。

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